平成のヒット商品・デジカメ 市場規模は大幅縮小
【連載・平成振り返り 第1回】 NHK Eテレで新年1月2日・3日に放映された特別番組「平成ネット史(仮)」は、なかなか文字化されないネットの歴史を映像で迫る希有な番組だった。そこで、「平成最後の年に振り返るデジタル製品史」として、過去の記事とデータを引きつつ、ざっくりと振り返りたい。第1回は、スマートフォンに置き換えられ、一般向けから愛好家向けに逆戻りしつつある「デジタルカメラ」を取り上げる。
若い世代が憧れる家電は、デジタル製品から実用性の高い生活家電に移った。とはいえ、折りたたみ型携帯電話と並びデジタルカメラは紛れもなく「平成」、特にゼロ年代を代表するヒット商品といえるだろう。
当時の記事から要点を抜粋すると、カシオ計算機が95年に「QV-10」を発売し、PC周辺機器として、何とか実用レベルに至ったデジカメは、高画素化、顔認識機能、タッチパネルとさまざまな進化を遂げ、ファッションアイテムとして若い女性がもつほど、身近な製品になった。家庭用インクジェットプリンターで写真入り年賀状を作りたい、ブログに画像を載せたいといったニーズも後押しした。
しかし当時、市場はすでに伸び悩んでおり、カシオの担当者は「10年のコンパクトデジタルカメラ市場は、数量・金額ともに、緩やかに下降線を辿るだろう」と予測していた。
家電量販店・オンラインショップの実売データを集計する「BCNランキング」によると、一眼レフやミラーレスなどの「レンズ交換型」と「レンズ一体型(コンパクト)」をあわせた、デジカメ全体の年間販売台数は10年が最多だった。
ブログが下火になり、代わってSNSがはやり始めると、デジカメより、撮ったその場で投稿できるスマートフォンのほうが使いやすいため、新規・買い替えニーズが減退。スマホとSNSのおかげで「写真」や「動画」はますます身近になったが、専用機のカメラは売れなくなった。特に、ライトユースでスマホと競合するコンパクトデジカメは、12年から13年にかけて大きく落ち込み、レンズ交換型も14年をピークに前年割れが続く。
前回の64年東京大会の資産を引き継ぐ「ヘリテッジゾーン」、都市の未来を象徴する「東京ベイゾーン」の2つのゾーンで、7月24日から東京五輪・パラリンピックが開催される20年に、デジカメは誕生25周年を迎える。国内外から会場を訪れる人々の大半は、デジカメではなく、スマホで写真を撮るだろう。いまは一部機種に限られる、ズーム専用を含め、3つのレンズ・カメラユニットを搭載したトリプルカメラ搭載スマホも身近になりそうだ。専用機のデジカメ、特にコンパクトデジカメは、平成とともに終わりを告げるかもしれない。(BCN・嵯峨野 芙美)
■コンパクトデジタルカメラの歩み
1981年:ソニー「マピカ」発売
1986年:キヤノン「RC-701」発売(一式で500万円)
1995年(平成7年):カシオ「QV-10」発売(6万5000円)
2002年(平成14年):カシオ「EXILIM」ブランド開始
2005年(平成17年):ニコンが世界初の顔認識AFを発表、富士フイルム・キヤノンが追随
2006年(平成18年):カシオ、初の1010万画素の「EX-Z1000」発売……画素数競争始まる、2008年から11年にかけて1年に200万画素ずつアップ。以降も1600万画素、2000万画素と小刻みにアップ。
2011年~12年(平成23~24年):スマートフォンが普及し始める
2014年(平成26年):一眼レフ並みの大型センサーを搭載したソニーなどの高級コンパクトが注目を集める
2018年(平成30年):カシオが撤退、ニコンが初めてコンパクトデジカメ年間1位(2017年まではキヤノンが連続1位)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
移り変わる新・三種の神器 今は「時短」が憧れに
かつて一般家庭に広く普及した「三種の神器」(白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫)にちなみ、2000年代(ゼロ年代)に登場した、薄型テレビ、DVDレコーダー、デジタルカメラは「デジタル家電の新・三種の神器」と呼ばれ、注目を集めた。しかし、現在、「新・三種の神器」というワードで検索すると、これらではなく、家事負担を軽減する、「ロボット掃除機・全自動乾燥洗濯機・食器洗い乾燥機」を紹介しているケースが大半だ。若い世代が憧れる家電は、デジタル製品から実用性の高い生活家電に移った。とはいえ、折りたたみ型携帯電話と並びデジタルカメラは紛れもなく「平成」、特にゼロ年代を代表するヒット商品といえるだろう。
カシオ担当者は9年前の時点で「下降線を辿る」と危惧していた
今から9年前の10年、カメラ映像機器工業会(CIPA)が主催する、カメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+」にあわせ、BCNは「デジカメ登場15年」と位置付け、各媒体でデジカメの歴史を振り返る特集記事を企画した。当時の記事から要点を抜粋すると、カシオ計算機が95年に「QV-10」を発売し、PC周辺機器として、何とか実用レベルに至ったデジカメは、高画素化、顔認識機能、タッチパネルとさまざまな進化を遂げ、ファッションアイテムとして若い女性がもつほど、身近な製品になった。家庭用インクジェットプリンターで写真入り年賀状を作りたい、ブログに画像を載せたいといったニーズも後押しした。
しかし当時、市場はすでに伸び悩んでおり、カシオの担当者は「10年のコンパクトデジタルカメラ市場は、数量・金額ともに、緩やかに下降線を辿るだろう」と予測していた。
家電量販店・オンラインショップの実売データを集計する「BCNランキング」によると、一眼レフやミラーレスなどの「レンズ交換型」と「レンズ一体型(コンパクト)」をあわせた、デジカメ全体の年間販売台数は10年が最多だった。
ブログが下火になり、代わってSNSがはやり始めると、デジカメより、撮ったその場で投稿できるスマートフォンのほうが使いやすいため、新規・買い替えニーズが減退。スマホとSNSのおかげで「写真」や「動画」はますます身近になったが、専用機のカメラは売れなくなった。特に、ライトユースでスマホと競合するコンパクトデジカメは、12年から13年にかけて大きく落ち込み、レンズ交換型も14年をピークに前年割れが続く。
コンパクト専業のカシオ撤退が意味する「コンパクトデジカメ」の終わり
18年5月、コンパクト専業だったカシオは、デジカメ市場からの撤退を発表した。ピークの10年からわずか8年で、カメラ全体の市場規模は10分の3まで縮小。原因はスマホの普及だけではない。各メーカーとも、マイナス成長がはっきりすると、ラインアップを絞り、おおむね2万円以上の高付加価値モデルにシフトしたことが影響した。16年の年間販売台数を「1」として、直近3年の動きを指数化してみると、17年は0.86、18年は0.73と、大きく落ち込んでいる。前回の64年東京大会の資産を引き継ぐ「ヘリテッジゾーン」、都市の未来を象徴する「東京ベイゾーン」の2つのゾーンで、7月24日から東京五輪・パラリンピックが開催される20年に、デジカメは誕生25周年を迎える。国内外から会場を訪れる人々の大半は、デジカメではなく、スマホで写真を撮るだろう。いまは一部機種に限られる、ズーム専用を含め、3つのレンズ・カメラユニットを搭載したトリプルカメラ搭載スマホも身近になりそうだ。専用機のデジカメ、特にコンパクトデジカメは、平成とともに終わりを告げるかもしれない。(BCN・嵯峨野 芙美)
■コンパクトデジタルカメラの歩み
1981年:ソニー「マピカ」発売
1986年:キヤノン「RC-701」発売(一式で500万円)
1995年(平成7年):カシオ「QV-10」発売(6万5000円)
2002年(平成14年):カシオ「EXILIM」ブランド開始
2005年(平成17年):ニコンが世界初の顔認識AFを発表、富士フイルム・キヤノンが追随
2006年(平成18年):カシオ、初の1010万画素の「EX-Z1000」発売……画素数競争始まる、2008年から11年にかけて1年に200万画素ずつアップ。以降も1600万画素、2000万画素と小刻みにアップ。
2011年~12年(平成23~24年):スマートフォンが普及し始める
2014年(平成26年):一眼レフ並みの大型センサーを搭載したソニーなどの高級コンパクトが注目を集める
2018年(平成30年):カシオが撤退、ニコンが初めてコンパクトデジカメ年間1位(2017年まではキヤノンが連続1位)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。