2019年は小売デジタル化の1年に 消費者に歓迎される空気づくりがカギに
小売業のデジタル化はずいぶん前から生き残りのために欠かせないキーワードとしてあげられてきた。Amazonのような大規模ECに対抗するため、あるいは深刻化する人手不足を解消するための手段としてだ。しかし、実際に店舗に導入される段階には至っていなかった。この状況にようやく変化の兆しが見え始めたのが昨年末。急速に売り場でデジタルを活用したソリューションが広がってきている。
一時のお祭り騒ぎに終わるのではないか、との見方もあるが、盛況を横目に見ていた小売企業では新たに導入を進める動きもある。ファミリーマートが独自に導入すると発表している「ファミペイ」をはじめ、QR決済サービスの新規参入もまだまだ続く。19年は普及に向けて、さらに多様な施策が展開されそうだ。
こうしたテクノロジーには客寄せパンダとしての魅力もある。例えば、ドン・キホーテ(ドンキ)が11月にオープンした「MEGAドン・キホーテ港山下総本店」ではセルフレジシステム「デジタルレーン」を導入。2m程度のレーンに商品を流すと、画像認識で商品を識別して会計ができるというシステムだ。同社の大原孝治社長は「最終的には、お客様がカスタマイズしたアバターがレジで接客するようなものを開発したい」と今後の構想を語る。
また、ローソンでは東京都品川区の「ローソンTOC大崎店」に12月11日から12月28日までの期間限定で、人気商品の「からあげクン」を出来たてで提供する「できたてからあげクンロボ」を設置した。“揚げたて”というニーズに応えるのが目的だが、省力化にも寄与する。消費者がパッケージの組み立て、ロボットが自動で調理するため、スタッフの労力を大幅に減らすことができるからだ。「消費者が楽しい」という要素を重視しているので、やらされ感が薄いのもポイントだ。
昨年にブレイクしたAI翻訳機も店頭での活躍が期待できる。ビックカメラの「Air Bic Cameraダイバーシティ東京 プラザ店」では、インバウンドの接客対応のためにソースネクストの「POCKTALK(ポケトーク)」を試験導入。スタッフの語学スキルなどに左右されないため、導入のハードルは低い。今後、幅広い業種で活用されるかもしれない。
これらのテクノロジーは、便利な一方で失敗もつきもの。12月にQRコード決済サービス「PayPay」でクレジットカードの不正利用が頻発した問題は記憶に新しいが、トライ&エラーで根気強くサービスの精度を高めていくことが重要になってくるだろう。
ドンキのデジタルレーンやローソンのできたてからあげクンロボのように、エンターテインメント性を出すことで、消費者を「面白いから多少は失敗してもいいか」くらいの気持ちにさせるのも手段として賢いといえる。もちろん、その裏では密な検証・改善が行われることになるはずだが、デジタル化を促進したい小売企業は、消費者がデジタル化を歓迎する“空気づくり”にも取り組む必要がありそうだ。(BCN・大蔵 大輔)
キャッシュレス決済は19年に新たなステージに
まず、注目度の高いところでは、キャッシュレス決済があげられるだろう。12月に実施の各QRコード決済サービスのキャンペーンに乗る形で、コンビニエンスストアや家電量販店では急速に導入が進んだ。すでに、インバウンド需要を考慮してALIPAYなどのサービスには対応する店舗は多かったが、国内の消費者がこれだけ一斉にスマートフォン(スマホ)決済を利用したのは、おそらく今回が初めての出来事だっただろう。一時のお祭り騒ぎに終わるのではないか、との見方もあるが、盛況を横目に見ていた小売企業では新たに導入を進める動きもある。ファミリーマートが独自に導入すると発表している「ファミペイ」をはじめ、QR決済サービスの新規参入もまだまだ続く。19年は普及に向けて、さらに多様な施策が展開されそうだ。
省力化店舗が増加 エンタメ性の追求も
省力化のためのデジタル活用を店舗でみかけることも増えた。セブン-イレブンが東京都・港区で、JR東日本が赤羽駅構内で実証実験している無人レジ店舗など、構想としてはかねてからあったものがようやく形になりつつある。米国や中国ではもっと早い段階から実証実験が始まっており、日本はやや出遅れているが、19年はキャッチアップの1年になるかもしれない。こうしたテクノロジーには客寄せパンダとしての魅力もある。例えば、ドン・キホーテ(ドンキ)が11月にオープンした「MEGAドン・キホーテ港山下総本店」ではセルフレジシステム「デジタルレーン」を導入。2m程度のレーンに商品を流すと、画像認識で商品を識別して会計ができるというシステムだ。同社の大原孝治社長は「最終的には、お客様がカスタマイズしたアバターがレジで接客するようなものを開発したい」と今後の構想を語る。
また、ローソンでは東京都品川区の「ローソンTOC大崎店」に12月11日から12月28日までの期間限定で、人気商品の「からあげクン」を出来たてで提供する「できたてからあげクンロボ」を設置した。“揚げたて”というニーズに応えるのが目的だが、省力化にも寄与する。消費者がパッケージの組み立て、ロボットが自動で調理するため、スタッフの労力を大幅に減らすことができるからだ。「消費者が楽しい」という要素を重視しているので、やらされ感が薄いのもポイントだ。
デジタル化のメスは至るところで
何気ないところにもデジタル化の工夫はある。例えば、商品の価格を液晶モニターに表示する「電子プライスカード」。上新電機が2019年3月期中に全店舗の導入を表明、ビックカメラも12月にオープンした「ビックカメラ セレクト京都四条河原町店」で試験導入するなど、今後の拡大が見込まれるソリューションだ。昨年にブレイクしたAI翻訳機も店頭での活躍が期待できる。ビックカメラの「Air Bic Cameraダイバーシティ東京 プラザ店」では、インバウンドの接客対応のためにソースネクストの「POCKTALK(ポケトーク)」を試験導入。スタッフの語学スキルなどに左右されないため、導入のハードルは低い。今後、幅広い業種で活用されるかもしれない。
これらのテクノロジーは、便利な一方で失敗もつきもの。12月にQRコード決済サービス「PayPay」でクレジットカードの不正利用が頻発した問題は記憶に新しいが、トライ&エラーで根気強くサービスの精度を高めていくことが重要になってくるだろう。
ドンキのデジタルレーンやローソンのできたてからあげクンロボのように、エンターテインメント性を出すことで、消費者を「面白いから多少は失敗してもいいか」くらいの気持ちにさせるのも手段として賢いといえる。もちろん、その裏では密な検証・改善が行われることになるはずだが、デジタル化を促進したい小売企業は、消費者がデジタル化を歓迎する“空気づくり”にも取り組む必要がありそうだ。(BCN・大蔵 大輔)