2018年の家電市場がエアコン需要で沸いた中、業界関係者を驚かせたのがヤマダ電機の「独り負け」ともいえる業績の急激な悪化だ。なぜ、ヤマダ電機だけが業績悪化に陥ったのか。家電流通関係者を周辺取材すると、従来の家電専門店の郊外型店舗テックランドから、新しい「家電住まいる館」への業態転換が、まだ成長軌道に乗っていない様子が浮かび上がる。
結果的に19年3月期の上期実績は、売上高が前回予想より約300億円下回る7936億7000万円(前年同期比0.8%増)、営業利益が約261億円下回る50億9400万円(同74.8%減)、経常利益が約250億円下回る102億2200万円(59.7%減)、純利益が約156億円下回る16億8600万円(90.0%減)となり、本業の儲けを示す売上高営業利益率がわずか0.6%という惨憺たる結果だった。
通期連結予想も、売上高が1兆6440億円(前年度比4.5%増)と増収ながらも、営業利益が294億円(24.2%減)、経常利益が375億円(20.8%減)、純利益が153億円(48.6%減)と、利益面の大幅なダウンを見込む。
ある競合量販トップは、「住宅やリフォーム事業に力を入れるあまり、従来の家電製品に割く売り場面積が縮小されている」と語る。「今夏のようなエアコン需要で売り逃しが生じているのではないか」というのだ。
また別の家電流通トップは、「これまでは必要以上に商品を納めていたが、今はだいぶ絞り込んで売れる分だけの適正量を納めている。おかげでリベートもだいぶ減った」と、商品供給を絞り込んでいる実情を語る。大量仕入れによるスケールメリットでメーカーや卸からリベートを引き出し、それを安売りの原資としてきたヤマダ電機にとって、リベートが減るのは利益面での打撃となりそうだ。
ヤマダ電機は、17年6月に創業の地の群馬県前橋市で「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」をオープンしたのを皮切りに、同年9月から、その住宅やリフォームなどの要素に家具や雑貨、家電製品を融合した「家電住まいる館」を急ピッチで順次オープンしている。中長期の経営戦略では、年間100店舗のハイペースでテックランドからの業態変更(改装)を行うという。
確かに、家庭で使うエネルギーを太陽光発電や蓄電池などを組み合わて自宅で賄うというZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)時代の布石を打っているという中長期の狙いは正しいのかもしれない。
しかし、それが収益を伴う形で回収できるのはいつになるのかという課題が突き付けられている。18年3月期通期のセグメント別の売り上げで「非家電」の構成比は16%だった。前年度比12.6%増と伸長しているものの、このうちの何%が住宅やリフォームで占められて、伸び率がどうなのかを、うかがい知ることはできない。
三嶋氏は、北陸の「100満ボルト」を運営するサンキュー(現エディオングループ)の出身で、サンキューのリフォーム事業の立ち上げやエディオン傘下入り後もリフォーム事業の拡大を担ってきた。
17年1月にヤマダ電機に電撃移籍した後は、副社長として家電とインテリア雑貨を融合させた新業態店舗を担当。まさに「家電住まいる館」の売り場では、システムキッチンのビフォアアフターの展示でリフォーム効果を分かりやすく訴求するなど、三嶋氏らしさが随所に反映されている。早く成果を出したいところだが、前述のように業績を大幅に下方修正するどん底からのスタートという重責を担う。
そもそも住宅事業の要となるヤマダ・エスバイエルホームが、営業損益、経常損益、当期純損益で黒字だったのは過去6年間で16年2月期のみで、その期以外は13年2月期から赤字体質が続く。
11年にヤマダ電機と中堅住宅メーカーのエス・バイ・エルが資本業務提携し、15年に社名変更して誕生したのがヤマダ・エスバイエルホームだったが、さすがにしびれを切らしたのか、18年10月1日にはヤマダ・エスバイエルホーム、ヤマダ・ウッドハウス、ハウジングワークス、エス・バイ・エル住工の連結子会社4社を合併し、商号をヤマダホームズに変更。社名から「エスバイエル」の文字が消えた。
ここ数年かけて住宅事業で買収や子会社化を繰り返してきたヤマダ電機だが、いまだにその成果が数字に表れていない。住宅事業が収益に貢献するのは、消費増税後なのか、東京五輪後なのか、いつになるのか。まずは、新生ヤマダホームズの19年2月期決算が注目される。昨年のような業績の下方修正などという、出鼻をくじくような失態は許されないだろう。(BCN・細田 立圭志)
営業利益率0.6%の衝撃
ヤマダ電機は18年10月18日、上期と通期の業績予想の下方修正を発表。猛暑のエアコン需要で各家電量販の上期決算が好調だっただけに、明暗のコントラストがより鮮明になってしまった。結果的に19年3月期の上期実績は、売上高が前回予想より約300億円下回る7936億7000万円(前年同期比0.8%増)、営業利益が約261億円下回る50億9400万円(同74.8%減)、経常利益が約250億円下回る102億2200万円(59.7%減)、純利益が約156億円下回る16億8600万円(90.0%減)となり、本業の儲けを示す売上高営業利益率がわずか0.6%という惨憺たる結果だった。
通期連結予想も、売上高が1兆6440億円(前年度比4.5%増)と増収ながらも、営業利益が294億円(24.2%減)、経常利益が375億円(20.8%減)、純利益が153億円(48.6%減)と、利益面の大幅なダウンを見込む。
ある競合量販トップは、「住宅やリフォーム事業に力を入れるあまり、従来の家電製品に割く売り場面積が縮小されている」と語る。「今夏のようなエアコン需要で売り逃しが生じているのではないか」というのだ。
また別の家電流通トップは、「これまでは必要以上に商品を納めていたが、今はだいぶ絞り込んで売れる分だけの適正量を納めている。おかげでリベートもだいぶ減った」と、商品供給を絞り込んでいる実情を語る。大量仕入れによるスケールメリットでメーカーや卸からリベートを引き出し、それを安売りの原資としてきたヤマダ電機にとって、リベートが減るのは利益面での打撃となりそうだ。
ヤマダ電機は、17年6月に創業の地の群馬県前橋市で「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」をオープンしたのを皮切りに、同年9月から、その住宅やリフォームなどの要素に家具や雑貨、家電製品を融合した「家電住まいる館」を急ピッチで順次オープンしている。中長期の経営戦略では、年間100店舗のハイペースでテックランドからの業態変更(改装)を行うという。
確かに、家庭で使うエネルギーを太陽光発電や蓄電池などを組み合わて自宅で賄うというZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)時代の布石を打っているという中長期の狙いは正しいのかもしれない。
しかし、それが収益を伴う形で回収できるのはいつになるのかという課題が突き付けられている。18年3月期通期のセグメント別の売り上げで「非家電」の構成比は16%だった。前年度比12.6%増と伸長しているものの、このうちの何%が住宅やリフォームで占められて、伸び率がどうなのかを、うかがい知ることはできない。
社長交代の昇格人事
18年5月10日、ヤマダ電機は社長交代の人事を発表。執行役員副社長の三嶋恒夫氏が社長に、社長だった桑野光正氏が執行役員副会長に昇格した。16年4月に桑野氏が社長に就任して以来、山田昇会長と一宮忠男副会長の代表権を持つ3トップがトロイカ体制で役割分担しながら事業の創出・拡大を進めてきたが、三嶋氏に現場の再建を託した形だ。三嶋氏は、北陸の「100満ボルト」を運営するサンキュー(現エディオングループ)の出身で、サンキューのリフォーム事業の立ち上げやエディオン傘下入り後もリフォーム事業の拡大を担ってきた。
17年1月にヤマダ電機に電撃移籍した後は、副社長として家電とインテリア雑貨を融合させた新業態店舗を担当。まさに「家電住まいる館」の売り場では、システムキッチンのビフォアアフターの展示でリフォーム効果を分かりやすく訴求するなど、三嶋氏らしさが随所に反映されている。早く成果を出したいところだが、前述のように業績を大幅に下方修正するどん底からのスタートという重責を担う。
そもそも住宅事業の要となるヤマダ・エスバイエルホームが、営業損益、経常損益、当期純損益で黒字だったのは過去6年間で16年2月期のみで、その期以外は13年2月期から赤字体質が続く。
11年にヤマダ電機と中堅住宅メーカーのエス・バイ・エルが資本業務提携し、15年に社名変更して誕生したのがヤマダ・エスバイエルホームだったが、さすがにしびれを切らしたのか、18年10月1日にはヤマダ・エスバイエルホーム、ヤマダ・ウッドハウス、ハウジングワークス、エス・バイ・エル住工の連結子会社4社を合併し、商号をヤマダホームズに変更。社名から「エスバイエル」の文字が消えた。
ここ数年かけて住宅事業で買収や子会社化を繰り返してきたヤマダ電機だが、いまだにその成果が数字に表れていない。住宅事業が収益に貢献するのは、消費増税後なのか、東京五輪後なのか、いつになるのか。まずは、新生ヤマダホームズの19年2月期決算が注目される。昨年のような業績の下方修正などという、出鼻をくじくような失態は許されないだろう。(BCN・細田 立圭志)