ソフトバンクグループの子会社で国内通信企業のソフトバンクは、12月19日に開催した東証一部の上場記者会見の中で、12月6日に全国規模で発生した通信障害の原因を特定するのに2時間15分を要したことを明らかにした。完全復旧までに4時間25分かかり、障害の発生から約5日間で解約件数は1万~2万件に上ったという。
会見の冒頭で、ソフトバンクの宮内謙社長兼CEOは「お客さまに多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたします。事象の発生を深く受け止めて再発防止策の徹底を図り、サービスの安定的な運用に向けて全力を上げて取り組みます」と謝罪した。具体的な詳細は宮川潤一副社長兼CTOが説明した。
通信障害は12月6日の13時39分から18時04分までの4時間25分にわたって発生。ソフトバンクとワイモバイルのLTE(4G)携帯電話サービスと「おうちのでんわ」「SoftBank Airの一部」のサービスで、全国約3060万回線で通信できなかったり、つながりにくかったりという状況が続いた。
原因は通信インフラの中核設備であるエリクソン製LTE交換機で、ユーザーの位置情報把握やデータを監視する暗号化技術の証明書(TLS証明書)の有効期限が切れたことによる。
一般的には、利用者がTLS証明書の有効期限を確認できる仕組みだが、エリクソン製のLTE交換機では出荷時にソフトウエアに埋め込まれていて、ソフトバンク側で確認できない状態にあったという。エリクソン製品のこの仕様は、全世界共通で、同日に世界11カ国でも同じ通信障害が発生した。
また、通常、ソフトウエアのバージョンを切り替える際の更新期間は新旧バージョンを並行運用して動作確認をするが、12月6日の障害でバージョンダウンする際は並行運用できなかったという。原因が分かったのは、障害発生から2時間15分後の15時54分だった。同社の社員が自社製の通信機器を多く使っていたのも、原因の特定が遅れた要因の1つでもあったようだ。
ソフトバンクは東西2カ所に18台のLTE交換機を設置しているという。「1台で障害が発生しても、残りの17台でバックアップするテクノロジーを使っているので、本来なら障害が起きることは想定されていなかった。しかし、すべての設備から一斉にアラームが発生したため原因を絞り込むまでに時間を要した」と宮川副社長兼CTOは、一斉ダウンした際の原因を特定する難しさを語った。
また、通常であればLTE(4G)ネットワークの一部に障害が起きても、通信速度は遅くなるが3Gネットワークがバックアップとして機能して通信できるはずだが、LTEが一斉にダウンしたことで、3Gにアクセスが集中して、3Gもつながりにくい状況が続いたという。
ソフトバンクは、今後の対策として短期の「暫定対策」と長期の「恒久対策」を発表。「暫定対策」では、証明書の有効期限の総点検を最重要設備では12月11日に完了済み、全設備では12月31日までに完了する予定だ。
また、新規設備や新規ソフトウエアでは未来の更新日を手打ち入力して動作確認の試験を実施した。さらに、古いソフトの緊急立ち上げ手順の時間短縮化も、12月31日までに完了する予定だ。
一方の「恒久対策」では、19年1月31日までに全台数でソフトバンク側でLTE交換機の証明書の有効期限確認や更新作業をできるようにする。ほかにもシステムが停止にならない構造に設計を見直したり、LTE交換機のマルチベンダー化を19年6月30日までに完了するなどの対策が発表された。
ソフトバンクは、2月にも同社の携帯電話から固定回線につながりにくい通信障害を起こしており、今回の通信障害では石田真敏総務大臣が「電気通信事業法上の重大な事故と考えられる」とし、行政指導を含む対応を検討する考えを示している。
ソフトウエアの一部機能の初歩的なミスで通信インフラの中核設備が機能しなくなり、バックアップするばずのネットワークも「ところてん式」にダウンした。4Gよりも通信速度が100倍で大容量、低遅延を実現する5Gなら、同じような障害が発生しないと言い切れるのだろうか。あらためて通信ネットワークインフラの脆弱性や課題が露呈される形となった。(BCN・細田 立圭志)
会見の冒頭で、ソフトバンクの宮内謙社長兼CEOは「お客さまに多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたします。事象の発生を深く受け止めて再発防止策の徹底を図り、サービスの安定的な運用に向けて全力を上げて取り組みます」と謝罪した。具体的な詳細は宮川潤一副社長兼CTOが説明した。
通信障害は12月6日の13時39分から18時04分までの4時間25分にわたって発生。ソフトバンクとワイモバイルのLTE(4G)携帯電話サービスと「おうちのでんわ」「SoftBank Airの一部」のサービスで、全国約3060万回線で通信できなかったり、つながりにくかったりという状況が続いた。
原因は通信インフラの中核設備であるエリクソン製LTE交換機で、ユーザーの位置情報把握やデータを監視する暗号化技術の証明書(TLS証明書)の有効期限が切れたことによる。
一般的には、利用者がTLS証明書の有効期限を確認できる仕組みだが、エリクソン製のLTE交換機では出荷時にソフトウエアに埋め込まれていて、ソフトバンク側で確認できない状態にあったという。エリクソン製品のこの仕様は、全世界共通で、同日に世界11カ国でも同じ通信障害が発生した。
また、通常、ソフトウエアのバージョンを切り替える際の更新期間は新旧バージョンを並行運用して動作確認をするが、12月6日の障害でバージョンダウンする際は並行運用できなかったという。原因が分かったのは、障害発生から2時間15分後の15時54分だった。同社の社員が自社製の通信機器を多く使っていたのも、原因の特定が遅れた要因の1つでもあったようだ。
ソフトバンクは東西2カ所に18台のLTE交換機を設置しているという。「1台で障害が発生しても、残りの17台でバックアップするテクノロジーを使っているので、本来なら障害が起きることは想定されていなかった。しかし、すべての設備から一斉にアラームが発生したため原因を絞り込むまでに時間を要した」と宮川副社長兼CTOは、一斉ダウンした際の原因を特定する難しさを語った。
また、通常であればLTE(4G)ネットワークの一部に障害が起きても、通信速度は遅くなるが3Gネットワークがバックアップとして機能して通信できるはずだが、LTEが一斉にダウンしたことで、3Gにアクセスが集中して、3Gもつながりにくい状況が続いたという。
ソフトバンクは、今後の対策として短期の「暫定対策」と長期の「恒久対策」を発表。「暫定対策」では、証明書の有効期限の総点検を最重要設備では12月11日に完了済み、全設備では12月31日までに完了する予定だ。
また、新規設備や新規ソフトウエアでは未来の更新日を手打ち入力して動作確認の試験を実施した。さらに、古いソフトの緊急立ち上げ手順の時間短縮化も、12月31日までに完了する予定だ。
一方の「恒久対策」では、19年1月31日までに全台数でソフトバンク側でLTE交換機の証明書の有効期限確認や更新作業をできるようにする。ほかにもシステムが停止にならない構造に設計を見直したり、LTE交換機のマルチベンダー化を19年6月30日までに完了するなどの対策が発表された。
ソフトバンクは、2月にも同社の携帯電話から固定回線につながりにくい通信障害を起こしており、今回の通信障害では石田真敏総務大臣が「電気通信事業法上の重大な事故と考えられる」とし、行政指導を含む対応を検討する考えを示している。
ソフトウエアの一部機能の初歩的なミスで通信インフラの中核設備が機能しなくなり、バックアップするばずのネットワークも「ところてん式」にダウンした。4Gよりも通信速度が100倍で大容量、低遅延を実現する5Gなら、同じような障害が発生しないと言い切れるのだろうか。あらためて通信ネットワークインフラの脆弱性や課題が露呈される形となった。(BCN・細田 立圭志)