秋の新米シーズンに入り、今年もご飯のおいしい季節がやってきた。美味しいご飯を炊くために炊飯器は必需品だが、家電量販店の店頭にいざ足を運ぶと、数千円のマイコン式から10万円以上するIH方式まで多くの製品が並び、どれを選べばいいのか迷ってしまう。そこで、タイガー魔法瓶 商品企画チームの辻本篤史氏に炊飯器を選ぶコツを聞いた。
タイガー魔法瓶でも2006年度に業界初の「土鍋炊飯ジャー」を発表して以来、人気商品のひとつとなっているが、家電エコポイントの追い風やインバウンドによる「爆買い」も手伝って、15年度のピーク時には年間130万台、現在でも約100万台の高級炊飯器が出荷されている。
そもそも「ごはんの美味しさ」とは何だろうか。米を炊く際、βでんぷんがαでんぷんに変化する過程を「α化」とか「糊化(こか)」と呼び、この変化がごはんの美味しさのカギである粘りや弾性、甘味につながる。内釜の加熱が大きいほどαでんぷんへの変化が進むため、「炊飯ジャーを選ぶときにもっとも大切なのは温度」と辻本氏は力説する。
マイコン式の炊飯器が安価な理由は、釜底からの加熱のみであるため、底部と上部で温度ムラが生じやすい。一方、IH方式は釜全体が発熱して効率よく加熱できるため、米一粒ひと粒に熱が伝わり、ムラなく均一なご飯を炊くことができる。よって「おいしいご飯を求めるなら、IHはマスト」なのだ。
土鍋釜の特徴は、自然素材がもつ遠赤外線効果によって、米の中までしっかりと熱を伝えてふっくらと炊き上げられる点。加えて、タイガーの最上位機種「グランエックス」の土鍋釜は、二重構造によって最高280℃までなべ底温度を上げることができる。一般的な金属釜のなべ底温度が約110~130℃というから、圧倒的な温度差といえるだろう。
また、沸騰状態で加熱しつづけると当然ながら吹きこぼれるため、多くの炊飯器ではIH電源のオンとオフを繰り返すことで吹きこぼれを制御している。蓄熱性の高い土鍋の場合、電源をオフにしても温度がしばらく沸騰状態が続く。身近な例でいえば、土鍋で鍋料理をしたときや、外食で鍋焼きうどんを食べるときに、火を止めてからもしばらくグツグツと沸騰しつづける状態。この土鍋の蓄熱性によって内部の温度を下げることなく程よい沸騰が持続でき、「糊化」が進んでおいしいご飯が炊けるというわけだ。
いまのところ良いことづくめの土鍋だが、強度はどうだろうか。土鍋が割れる心配について辻本氏に尋ねてみると、「よっぽど強い衝撃が加われば別ですが、通常の使い方で割れることはほぼないと思います」との答え。タイガーの内釜には、「萬古焼(ばんこやき)」が使われており、温度を変えて複数回「焼きしめる」ことで強度を高めている。「萬古焼」は三重県四日市市の伝統工芸品にも指定されており、耐久性や耐衝撃性に優れているのが特徴だ。
なお、金属釜は割れることはないものの、ぶつけて凹みができるとIHの熱が反応せず、ご飯が炊けなくなってしまうことも多いそうだ。となれば、土鍋釜も金属釜も、強い衝撃に対する強度はさほど大きく変わらないと言えるだろう。
逆に、金属釜の方が有利な点はないのだろうか?「金属釜が得意なのは熱伝導性や熱効率の良さ。内釜に熱を素早く伝えられるため、早く効率よく炊くことができる」と辻本氏は解説する。金属釜は内釜に熱を素早く伝えられる反面、先述したように電源をオフにすると瞬時に温度が下がるため、IHの制御がおいしさのポイントになるだろう。
タイガーでも3~5万円程度の普及価格帯の製品では金属釜を採用しているが、土鍋と同じ素材の粉末を吹き付ける「土鍋コーティング」を施すことで、土鍋の蓄熱性や遠赤効果に近づけている。
また、金属釜に比べて熱の伝わり方が遅く、沸とうまでに時間がかかる土鍋釜の弱点を解消するため、プレミアムモデルの土鍋圧力IH炊飯ジャー「JPH-A101」「JPG-X100」から、さらに土鍋を進化させている。熱効率を上げるために「炭化ケイ素」という素材を加え、蓄えた熱が素早く釜全体に、そして米に届くよう改良した。
タイガーでは、炊飯時には1.25気圧、蒸らしのときは1.05気圧と二つの圧力を使い分けている。圧力を変えることで、しゃっきり~もっちりの食感を炊き分け、味や好みを楽しめるようになっている。また、食物繊維が豊富でプチプチした食感が楽しめることから女性を中心に流行している「もち麦」をおいしく炊くためにも、圧力方式が効果的だという。
「タイガーでは、米と麦を7:3で炊くメニューを推奨していますが、米と麦では吸水時間が異なるため、それぞれに適した吸水となるような専用コースを設定しました。また、圧力をかけて高温で炊飯することで、麦のニオイ成分を気体に変え、炊飯から蒸らしに切り替わる際に蒸気として排出することで、炊きあがりのニオイを抑えています」(辻本氏)
この専用コースは、多種多様な穀物を取り扱い、もち麦ごはんブームの第一人者とも言われている「株式会社はくばく」と共同開発したという。
辻本氏は「3合炊き炊飯ジャーなら1合、5.5合炊きなら2~3合、一升炊きでは4~5合を炊いた場合が一番おいしく炊ける」と語る。ご飯と内蓋の間に空間を持たせることでお米が対流しやすくなり、炊きムラのないおいしいご飯になるそうだ。
そこで「3合炊きは1~2人世帯の方に、3~5人なら5.5合、三世代同居など家族が多いご家庭には8合~一升炊きをおすすめしています。また、お子さんが独立したタイミングで5.5合から3~3.5合炊きに買い替えるケースが増えているようです」と、辻本氏。毎日の食生活を支える家電だけに、進学、就職、結婚、転勤、独立など、ライフスタイルや家族構成の変化によって、炊飯器も上手く使い分けていきたい。
実際に市場動向をみても小容量タイプが増えており、4合以下の炊飯器の構成比は14年の20.4%から17年に26.1%まで伸びている。4台に1台が小容量タイプというわけだ。タイガーでも、18年の新モデルとして、3.5合炊きの土鍋圧力IH炊飯ジャー JPJ-A060、圧力IHタイプのJPD-A060、ならびに3合炊きのIH炊飯ジャー JPF-A550の3機種を一気に投入した。
タイガーが3合と3.5合の両方を採用しているのはなぜだろうか?「従来、小容量モデルではコンパクトさを重視して3合炊きを主流にしてきたのですが、具材の多い炊き込みご飯のときに1合までしか炊けないという課題がありました。そこで、容量を3.5合炊きにし、2合までの炊き込みご飯をつくれるモデルを増やしてきました」と、辻本氏はその理由を明かす。
毎日のように使う炊飯器だからこそ、納得した上で購入を決めたい。とはいえタイガー魔法瓶の総合カタログに掲載されている炊飯ジャーだけでも15機種、ネット上にはさらに膨大な情報があり、「結局、何を選べばいいの?」と戸惑ったことのあるユーザーも少なくないだろう。そんなユーザーのためにタイガーの公式Webサイトには「炊飯ジャーの選び方ガイド」ページが用意されている。サイトURLは:https://www.tiger.jp/feature/ricecooker/guide/である。
容量、土鍋釜か金属釜か、予算、など簡単な質問に答えるだけで、おすすめの炊飯器を提案してくれる。最後に辻本氏から「まず基準とする一台を決めておくと、選ぶのがぐっと楽になりますよ」とのアドバイス。お店に行く前にチェックしてみるといいだろう。
おいしさを求めるならIHはマスト
まずは炊飯器の市場を見てみよう。ここ数年のトレンドで顕著なのは、5万円以上のプレミアムゾーンが増えていること。「おいしいご飯を食べたい」というニーズがより高まっており、辻本氏によると「使っている炊飯ジャーが故障していなくても買い替えるお客さまが増えている」という。タイガー魔法瓶でも2006年度に業界初の「土鍋炊飯ジャー」を発表して以来、人気商品のひとつとなっているが、家電エコポイントの追い風やインバウンドによる「爆買い」も手伝って、15年度のピーク時には年間130万台、現在でも約100万台の高級炊飯器が出荷されている。
そもそも「ごはんの美味しさ」とは何だろうか。米を炊く際、βでんぷんがαでんぷんに変化する過程を「α化」とか「糊化(こか)」と呼び、この変化がごはんの美味しさのカギである粘りや弾性、甘味につながる。内釜の加熱が大きいほどαでんぷんへの変化が進むため、「炊飯ジャーを選ぶときにもっとも大切なのは温度」と辻本氏は力説する。
マイコン式の炊飯器が安価な理由は、釜底からの加熱のみであるため、底部と上部で温度ムラが生じやすい。一方、IH方式は釜全体が発熱して効率よく加熱できるため、米一粒ひと粒に熱が伝わり、ムラなく均一なご飯を炊くことができる。よって「おいしいご飯を求めるなら、IHはマスト」なのだ。
土鍋?金属?内釜の材質による違い
加熱温度を高めるために各社が競っている技術のひとつが内釜の素材である。「内釜の素材は、金属以外の釜と金属の釜の大きく二種類に分かれる」と辻本氏は語る。金属以外の釜には、タイガーの土鍋釜や炭を採用した釜などがある。その他のメーカーは、鉄、ステンレス、アルミなどの金属釜を採用している。土鍋釜の特徴は、自然素材がもつ遠赤外線効果によって、米の中までしっかりと熱を伝えてふっくらと炊き上げられる点。加えて、タイガーの最上位機種「グランエックス」の土鍋釜は、二重構造によって最高280℃までなべ底温度を上げることができる。一般的な金属釜のなべ底温度が約110~130℃というから、圧倒的な温度差といえるだろう。
また、沸騰状態で加熱しつづけると当然ながら吹きこぼれるため、多くの炊飯器ではIH電源のオンとオフを繰り返すことで吹きこぼれを制御している。蓄熱性の高い土鍋の場合、電源をオフにしても温度がしばらく沸騰状態が続く。身近な例でいえば、土鍋で鍋料理をしたときや、外食で鍋焼きうどんを食べるときに、火を止めてからもしばらくグツグツと沸騰しつづける状態。この土鍋の蓄熱性によって内部の温度を下げることなく程よい沸騰が持続でき、「糊化」が進んでおいしいご飯が炊けるというわけだ。
いまのところ良いことづくめの土鍋だが、強度はどうだろうか。土鍋が割れる心配について辻本氏に尋ねてみると、「よっぽど強い衝撃が加われば別ですが、通常の使い方で割れることはほぼないと思います」との答え。タイガーの内釜には、「萬古焼(ばんこやき)」が使われており、温度を変えて複数回「焼きしめる」ことで強度を高めている。「萬古焼」は三重県四日市市の伝統工芸品にも指定されており、耐久性や耐衝撃性に優れているのが特徴だ。
なお、金属釜は割れることはないものの、ぶつけて凹みができるとIHの熱が反応せず、ご飯が炊けなくなってしまうことも多いそうだ。となれば、土鍋釜も金属釜も、強い衝撃に対する強度はさほど大きく変わらないと言えるだろう。
逆に、金属釜の方が有利な点はないのだろうか?「金属釜が得意なのは熱伝導性や熱効率の良さ。内釜に熱を素早く伝えられるため、早く効率よく炊くことができる」と辻本氏は解説する。金属釜は内釜に熱を素早く伝えられる反面、先述したように電源をオフにすると瞬時に温度が下がるため、IHの制御がおいしさのポイントになるだろう。
タイガーでも3~5万円程度の普及価格帯の製品では金属釜を採用しているが、土鍋と同じ素材の粉末を吹き付ける「土鍋コーティング」を施すことで、土鍋の蓄熱性や遠赤効果に近づけている。
また、金属釜に比べて熱の伝わり方が遅く、沸とうまでに時間がかかる土鍋釜の弱点を解消するため、プレミアムモデルの土鍋圧力IH炊飯ジャー「JPH-A101」「JPG-X100」から、さらに土鍋を進化させている。熱効率を上げるために「炭化ケイ素」という素材を加え、蓄えた熱が素早く釜全体に、そして米に届くよう改良した。
圧力と非圧力の違いは?
IH、内釜と来て、今度は圧力である。米に圧力を加えるとなぜ良いのだろうか?「炊飯中に1.25気圧をかけると、内釜の中の沸騰温度が約107℃まで上がり、高温で炊くことができる」そうだ。冒頭のキーワード「高温で炊く」を実現するために、圧力を利用しているのだ。タイガーでは、炊飯時には1.25気圧、蒸らしのときは1.05気圧と二つの圧力を使い分けている。圧力を変えることで、しゃっきり~もっちりの食感を炊き分け、味や好みを楽しめるようになっている。また、食物繊維が豊富でプチプチした食感が楽しめることから女性を中心に流行している「もち麦」をおいしく炊くためにも、圧力方式が効果的だという。
「タイガーでは、米と麦を7:3で炊くメニューを推奨していますが、米と麦では吸水時間が異なるため、それぞれに適した吸水となるような専用コースを設定しました。また、圧力をかけて高温で炊飯することで、麦のニオイ成分を気体に変え、炊飯から蒸らしに切り替わる際に蒸気として排出することで、炊きあがりのニオイを抑えています」(辻本氏)
この専用コースは、多種多様な穀物を取り扱い、もち麦ごはんブームの第一人者とも言われている「株式会社はくばく」と共同開発したという。
我が家には何合炊きがいい?
家庭用の炊飯器で一般的なのは3合から5.5合炊き、食堂やホテルなどでは一升炊き以上の大きなものが使われている。最近では1合だけ炊ける商品が登場してきたり、調理メニューが充実した商品があったりと多様になってきている。改めて選び方を確認しておきたい。辻本氏は「3合炊き炊飯ジャーなら1合、5.5合炊きなら2~3合、一升炊きでは4~5合を炊いた場合が一番おいしく炊ける」と語る。ご飯と内蓋の間に空間を持たせることでお米が対流しやすくなり、炊きムラのないおいしいご飯になるそうだ。
そこで「3合炊きは1~2人世帯の方に、3~5人なら5.5合、三世代同居など家族が多いご家庭には8合~一升炊きをおすすめしています。また、お子さんが独立したタイミングで5.5合から3~3.5合炊きに買い替えるケースが増えているようです」と、辻本氏。毎日の食生活を支える家電だけに、進学、就職、結婚、転勤、独立など、ライフスタイルや家族構成の変化によって、炊飯器も上手く使い分けていきたい。
実際に市場動向をみても小容量タイプが増えており、4合以下の炊飯器の構成比は14年の20.4%から17年に26.1%まで伸びている。4台に1台が小容量タイプというわけだ。タイガーでも、18年の新モデルとして、3.5合炊きの土鍋圧力IH炊飯ジャー JPJ-A060、圧力IHタイプのJPD-A060、ならびに3合炊きのIH炊飯ジャー JPF-A550の3機種を一気に投入した。
タイガーが3合と3.5合の両方を採用しているのはなぜだろうか?「従来、小容量モデルではコンパクトさを重視して3合炊きを主流にしてきたのですが、具材の多い炊き込みご飯のときに1合までしか炊けないという課題がありました。そこで、容量を3.5合炊きにし、2合までの炊き込みご飯をつくれるモデルを増やしてきました」と、辻本氏はその理由を明かす。
誰もが納得できる買い物がしたい
辻本氏は「日常的に長く使うものなので、お手入れのしやすさも重要なポイント」とつけ加える。以前は、圧力を微調整するために部品点数が多くなってしまった時期もあったというが、今では内釜と内ぶた、スチームキャップの3点だけを洗えばいいシンプルなつくりとなっている。毎日のように使う炊飯器だからこそ、納得した上で購入を決めたい。とはいえタイガー魔法瓶の総合カタログに掲載されている炊飯ジャーだけでも15機種、ネット上にはさらに膨大な情報があり、「結局、何を選べばいいの?」と戸惑ったことのあるユーザーも少なくないだろう。そんなユーザーのためにタイガーの公式Webサイトには「炊飯ジャーの選び方ガイド」ページが用意されている。サイトURLは:https://www.tiger.jp/feature/ricecooker/guide/である。
容量、土鍋釜か金属釜か、予算、など簡単な質問に答えるだけで、おすすめの炊飯器を提案してくれる。最後に辻本氏から「まず基準とする一台を決めておくと、選ぶのがぐっと楽になりますよ」とのアドバイス。お店に行く前にチェックしてみるといいだろう。