ようやく底打ち感が出てきた国内コンシューマーPC市場だが、大手国内PCベンダーが中国ベンダーの傘下に入るなど再編の動きもあった。そんな中、デルはグローバルで販売エリアを拡大し、2年前から日本市場にも力を入れており、PCの販売が好調だという。デルのコンシューマーとスモールビジネスを統括するフィル・ブライアント プレジデントに事業戦略を聞いた。
取材・文/細田 立圭志
写真/松嶋 優子
フィル・ブライアント 日本は北米、中国に次ぐ3番目に大きな市場で、デルとして重要視しています。PCのグローバルでの年間市場規模は3000億ドル(約34兆円)で、そのうち約6割がコンシューマー市場です。世界には購入から4年以上経っているPCが8億台あるといわれています。
この5年間でノートPCは薄型、軽量化、高速化が進み、タッチスクリーン機能の搭載や折り畳み式、ディスプレイが取り外せる2 in 1のほかクラムシェルなど、タイプも多彩になりました。ベゼルが細くなり、スクリーンの解像度もHDや4K、あるいは8Kも登場しています。こうしたことから、私は日本の状況を楽観視しています。
デルはグローバルの販売地域を拡大することで、売り上げを23四半期連続で伸ばしています。5年前までは、コンシューマーPC市場は北米が中心でしたが、カナダや中国、インド、ブラジル、南米と、5カ国・エリアに広げました。それまでシェアは7位や8位でしたが、1位や2位に食い込める地域も出てきました。2年前からは、さらに日本、英国、オーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、フランス、スウェーデンの7カ国の販売に力を入れ、エリアを拡大しました。
――日本のPC市場は成熟し、少子高齢化などで市場は縮小傾向にあります。また、国内大手PCベンダーが中国ベンダーの傘下に入るなど厳しい状況が続いていますが。
フィル・ブライアント デルの直近2年間では、ダイレクト販売や家電量販店のリテールなど、全ての販売チャネルで伸びています。家電量販店ではショップインショップのスタイルで、お客様が実際に製品を見て、触ってから購入していただけるようにし、取り扱っている全店舗でデルバッジをつけた社員が常駐して説明しています。お客様の声がリアルタイムに製品の開発などに反映させるためにも、社員が販売現場に常駐することは重要です。
日本市場は成熟しているかもしれませんが、われわれはシェアを伸ばしています。家電量販店ではこの半年で、新たに数社と取引を開始しました。2年前は日本でもシェアが7位や8位に甘んじていましたが、今では成長しているのです。
国内PCベンダーの再編については、PC事業で大切なことはスケールということです。われわれはグローバルプレイヤーとして規模を生かせます。国内市場だけで事業を継続することは難しかった、ということではないでしょうか。
フィル・ブライアント デルはグローバルで「プレミアムPCベンダー」を打ち出しているので、プレミアム戦略を大切にしています。上位モデルのXPSはもちろん、普及モデルのInspiron、Vostroでも7000シリーズは、プレミアムモデルという位置付けです。
また、川崎と宮崎のコールセンターでは、単純に技術的なアドバイスやサポートをするだけではなく、実際に購入を検討しているけど、どの機種にすればいいのか分からないというユーザーへのサポートも実施しています。特にハイエンドのXPSやゲーミングPCのALIENWAREでは、スクリーンの解像度やグラフィックスをどれにすればいいのか、などの問い合わせに応えながら、購入までサポートしています。
サポートメニューも、スタンダードとプレミアム、最上位のプレミアムサポートプラスの三つを用意し、プレミアムサポートプラスではリモート診断を導入しています。これは、トラブルが起きる前に、その兆候を事前に把握しながらリモートで診断して解決するサービスです。問題が起きてしまった後に、いくらすばらしいサポートをしてもお客様は満足しません。お客様にとっては、問題が起きないことがベストなので、未然に防ぐためにわれわれが介入するのです。
――国内では、どれくらいの顧客がプレミアムサポートプラスに加入しているのですか。
フィル・ブライアント 具体的な数字は開示していませんが、日本で特徴的なのは、上位のサービスを利用するお客様の割合が多いということです。サービスやサポートを非常に重要視する市場で、世界的に見ても、サポートにここまで高い品質を求めるエリアはないでしょう。ですので、日本のお客様の期待に応えるために開始した日本発のサービスが、グローバルで展開している事例も多くあります。
――ベンダーにとっては、製品の売り切りではなく、サポート面でコストや手間のかかる市場という見方もできます。
フィル・ブライアント そうは考えていません。テクノロジーを駆使することで、サポートコストを下げることが可能だからです。リモート診断のようにトラブルを未然に防ぐためのコストは、何か問題が起きてしまってから事後対応したときのコストよりも低く抑えられます。また、製品の開発や設計段階でも、後で問題が起きないようないろいろな工夫を施しています。
XPSを例にとれば、素材にカーボンファイバーを使用することで、軽くできる上に堅牢性も担保しています。放熱については、ゴア社のゴアテックス素材を使っているので、きょう体に熱がこもらず効率的に放熱することができます。放熱で製品に負荷がかからないようにすることは、快適なパフォーマンスと製品寿命の延長につながります。軽量ながらも、求められる機能やデザイン、信頼性のバランスをとっています。
――PCがスマートフォンに浸食されているという見方についてはどうですか。
フィル・ブライアント どっちが食われるという話ではなく、用途によって使い分けがされていると考えています。実際に私もPCとモバイル端末を持って使い分けているわけですし。デルの最新PCには、デルモバイルコネクトという機能を順次搭載しています。iOSやAndroidスマートフォンとノートPCをペアリングすることで、意識することなく複数のデバイスにアクセスできます。オプションで着信やSMS、IMなどモバイルアプリの通知をノートPCに転送することも可能で、PCの作業を中断せずモバイルからの内容をPC上で確認できるので、作業に集中できます。いずれにしても、自宅にしろオフィスにしろ、仕事をする際の生産性を上げるツールとしてPCは最適です。
取材・文/細田 立圭志
写真/松嶋 優子
23四半期連続でグローバルシェアを拡大
――デルのグローバル戦略から、日本のコンシューマーPC市場をどのようにみていますか。フィル・ブライアント 日本は北米、中国に次ぐ3番目に大きな市場で、デルとして重要視しています。PCのグローバルでの年間市場規模は3000億ドル(約34兆円)で、そのうち約6割がコンシューマー市場です。世界には購入から4年以上経っているPCが8億台あるといわれています。
この5年間でノートPCは薄型、軽量化、高速化が進み、タッチスクリーン機能の搭載や折り畳み式、ディスプレイが取り外せる2 in 1のほかクラムシェルなど、タイプも多彩になりました。ベゼルが細くなり、スクリーンの解像度もHDや4K、あるいは8Kも登場しています。こうしたことから、私は日本の状況を楽観視しています。
デルはグローバルの販売地域を拡大することで、売り上げを23四半期連続で伸ばしています。5年前までは、コンシューマーPC市場は北米が中心でしたが、カナダや中国、インド、ブラジル、南米と、5カ国・エリアに広げました。それまでシェアは7位や8位でしたが、1位や2位に食い込める地域も出てきました。2年前からは、さらに日本、英国、オーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、フランス、スウェーデンの7カ国の販売に力を入れ、エリアを拡大しました。
――日本のPC市場は成熟し、少子高齢化などで市場は縮小傾向にあります。また、国内大手PCベンダーが中国ベンダーの傘下に入るなど厳しい状況が続いていますが。
フィル・ブライアント デルの直近2年間では、ダイレクト販売や家電量販店のリテールなど、全ての販売チャネルで伸びています。家電量販店ではショップインショップのスタイルで、お客様が実際に製品を見て、触ってから購入していただけるようにし、取り扱っている全店舗でデルバッジをつけた社員が常駐して説明しています。お客様の声がリアルタイムに製品の開発などに反映させるためにも、社員が販売現場に常駐することは重要です。
日本市場は成熟しているかもしれませんが、われわれはシェアを伸ばしています。家電量販店ではこの半年で、新たに数社と取引を開始しました。2年前は日本でもシェアが7位や8位に甘んじていましたが、今では成長しているのです。
国内PCベンダーの再編については、PC事業で大切なことはスケールということです。われわれはグローバルプレイヤーとして規模を生かせます。国内市場だけで事業を継続することは難しかった、ということではないでしょうか。
「プレミアムPCベンダー」を推進
――もう一つ、日本のPC市場で特徴的なのは、NECや富士通、東芝など国内メーカーの人気が根強く、高価格帯は国内メーカー、低価格帯は海外メーカーという二極化の構造が続いています。フィル・ブライアント デルはグローバルで「プレミアムPCベンダー」を打ち出しているので、プレミアム戦略を大切にしています。上位モデルのXPSはもちろん、普及モデルのInspiron、Vostroでも7000シリーズは、プレミアムモデルという位置付けです。
また、川崎と宮崎のコールセンターでは、単純に技術的なアドバイスやサポートをするだけではなく、実際に購入を検討しているけど、どの機種にすればいいのか分からないというユーザーへのサポートも実施しています。特にハイエンドのXPSやゲーミングPCのALIENWAREでは、スクリーンの解像度やグラフィックスをどれにすればいいのか、などの問い合わせに応えながら、購入までサポートしています。
サポートメニューも、スタンダードとプレミアム、最上位のプレミアムサポートプラスの三つを用意し、プレミアムサポートプラスではリモート診断を導入しています。これは、トラブルが起きる前に、その兆候を事前に把握しながらリモートで診断して解決するサービスです。問題が起きてしまった後に、いくらすばらしいサポートをしてもお客様は満足しません。お客様にとっては、問題が起きないことがベストなので、未然に防ぐためにわれわれが介入するのです。
――国内では、どれくらいの顧客がプレミアムサポートプラスに加入しているのですか。
フィル・ブライアント 具体的な数字は開示していませんが、日本で特徴的なのは、上位のサービスを利用するお客様の割合が多いということです。サービスやサポートを非常に重要視する市場で、世界的に見ても、サポートにここまで高い品質を求めるエリアはないでしょう。ですので、日本のお客様の期待に応えるために開始した日本発のサービスが、グローバルで展開している事例も多くあります。
――ベンダーにとっては、製品の売り切りではなく、サポート面でコストや手間のかかる市場という見方もできます。
フィル・ブライアント そうは考えていません。テクノロジーを駆使することで、サポートコストを下げることが可能だからです。リモート診断のようにトラブルを未然に防ぐためのコストは、何か問題が起きてしまってから事後対応したときのコストよりも低く抑えられます。また、製品の開発や設計段階でも、後で問題が起きないようないろいろな工夫を施しています。
XPSを例にとれば、素材にカーボンファイバーを使用することで、軽くできる上に堅牢性も担保しています。放熱については、ゴア社のゴアテックス素材を使っているので、きょう体に熱がこもらず効率的に放熱することができます。放熱で製品に負荷がかからないようにすることは、快適なパフォーマンスと製品寿命の延長につながります。軽量ながらも、求められる機能やデザイン、信頼性のバランスをとっています。
――PCがスマートフォンに浸食されているという見方についてはどうですか。
フィル・ブライアント どっちが食われるという話ではなく、用途によって使い分けがされていると考えています。実際に私もPCとモバイル端末を持って使い分けているわけですし。デルの最新PCには、デルモバイルコネクトという機能を順次搭載しています。iOSやAndroidスマートフォンとノートPCをペアリングすることで、意識することなく複数のデバイスにアクセスできます。オプションで着信やSMS、IMなどモバイルアプリの通知をノートPCに転送することも可能で、PCの作業を中断せずモバイルからの内容をPC上で確認できるので、作業に集中できます。いずれにしても、自宅にしろオフィスにしろ、仕事をする際の生産性を上げるツールとしてPCは最適です。