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「値引き」と「特典品」、消費者がお得に感じるのはどっち?

売るヒント

2018/10/29 18:30

【家電コンサルのリテールマーケティング Vol.13】 今回から家電量販店などで使われているインストア・プロモーションの非価格主導型に入ろう。まずは、代表的な手法の「特典品」について説明しよう。


 例えば、シェーバーの売り場で、シェービングクリームを「値引き」で扱うか、「特典品」として扱うかによって消費者が感じる印象は大きく異なる。

 シェービングクリームの価格相当である300円を「値引き」としてアピールすると、値引き額の基準がシェーバー本体価格の1万円との比較になるので、わずか3%の値引きという印象を与えてしまう。比較対象が本体価格に引っ張られるため、非常に少ない値引き額として、顧客は「ショボい」と感じてしまうのだ。

 これに対して、シェーバーを購入するとシェービングクリームが「特典品」として付いてくることを訴求すると、お得感は高まる。なぜかといえば、顧客は300円のシェービングクリームがタダでついてくる、つまり割引率100%という印象を抱くため、お得と感じるからだ。

 このように店舗運営では、特典品を上手く訴求することで、値引き幅を抑制する策が大切になってくる。仮に値引き訴求をする場合は、お得感を演出するために例えば消費税8%分など、相当のパーセンテージをつけるといいだろう。いずれにしても3%程度の値引きを強調したところで、パンチが弱いということだ。

 なお、特典品を使った訴求方法には大きく分けて、(1)成約率UPを狙った訴求、(2)顧客満足(CS)向上を狙った訴求の2つがある。

 (1)の成約率UPでは、特典品自体を別途単独で大きく訴求し、特典品の魅力を引き出すことが重要だ。

 以前、ある家電量販店のビデオカメラ売り場で、メーカーから提供された特典品のソフトケースが、ゴンドラの下に突っ込まれていたのを目撃した。このような放置は、特典品を使った成約率UPに何も貢献しない。ソフトケースを箱から出して展示するとともに、POPで目立たせる必要がある。

 POPの記載例としては、「先着〇〇名様」「〇月〇日~〇月〇日まで」といった「限定訴求」を組み入れて「今だけ感」を演出すると効果が出る。

 一方、(2)のCS向上は特典品の訴求を店頭ではせずに、会計時に「後出しでプレゼントする」という手法である。これは、「予期しない、期待値を超えたサービスを受けたとき、満足度は高まり、良い印象を持つという顧客の心理効果」を狙ったものだ。また、万が一渡し忘れたとしても、顧客は特典品の存在を知らないため、購入後のクレームが発生しないというリスク回避もある。

 2つの方法のうち、どちらを選択するかは商品や特典品によって異なってくるが、いずれにせよ特典品を上手く活用すれば、不要な値引きを減らすことができる。特典品の放置だけは絶対に避けて、策を練って十分に活用していただければと思う。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)


■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。