ユニーの再生、なぜドン・キホーテならできるのか
ユニーの完全子会社化を発表したドンキホーテホールディングス(ドン・キホーテ)は、5年以内にユニーの100店舗をドンキ流に業態転換することを10月11日の会見で明らかにした。「決算期ではない19年中(1月~12月)に20店舗を業態転換したい」と、1年以内をあえて強調するほど、大原孝治社長兼CEOのユニー再生にかける自信は強い。
ユニーの商品別売上高(18年2月期)で食品事業は72%を占める。内訳は、生鮮食品が42.7%、加工食品が29.2%。08年2月期は58.6%だったことからも、この10年間で食品事業の構成比が高まっていたことが分かる。GMSにとって食料品は、集客するための必要不可欠な事業だったのだ。
だが、食料品を扱う業態はGMSやスーパーだけでなく、ディスカウントストアやドラッグストアでも扱うようになった。加工食品や菓子、酒類などについていえば、家電量販店でもヤマダ電機やビックカメラなどが力を入れている。今や食料品は、さまざまな業態にとって魅力的というわけだ。
特に家電量販店が食料品を扱うのは、食品や衣料に比べて単価の高い家電製品を購入した時に発行するポイントを、顧客に使ってもらって還元するためだ。耐久消費財として買い替えサイクルが長い家電製品に対し、単価は低くても購入頻度が多い食料品は、集客効果が絶大ということだろう。
17年4月にEC最大手のアマゾンも、東京の一部地域で野菜や果物、鮮魚、精肉などの生鮮食品を扱う「Amazonフレッシュ」を開始。ネット通販も虎視眈々と食料品の扱いを狙う。少子高齢化で規模は縮小する一方で、あらゆる業態で食料品市場の奪い合いをしているのだから、食料品への依存度が高いユニーが苦しくなっていくのも無理はない。
ではなぜ、ドン・キホーテはユニーの再生に自信を示すのか。18年2月にオープンした、ドン・キホーテとユニーが共同開発して旧ピアゴ大口店から業態転換した第1号店「MEGAドン・キホーテUNY大口店」に、そのヒントは隠されている。旧店舗がターゲットにしていたシニア層を、新店では若いニューファミリー層に徹底して絞ったことが大きい。
例えば、精肉コーナーはピアゴ時代の1.5倍に拡張し、若い人が好きなモツなどの希少部位の品揃えを増やすなどした。アメリカ産牛肉ステーキ用肩ロースの手書きPOPにも顕著だ。「やわらかく脂肪も豊富で濃い味が特徴!」。健康に気にするシニア層がおおよそ手を出さないであろう表現が躍っている。豚肉コーナーも、「メガミート」の文字で埋め尽くされるほど、肉のボリューム感を演出している。
他にも、お菓子コーナーではスティック状に成形したじゃがいもを揚げたカルビーの「じゃがりこ」を山積みで展示し、安さとカロリーの高さで若者に訴えている様子が伝わる。
GMSの経営が厳しい原因について、17年11月のBCNの単独インタビューで大原社長兼CEOは次のように語っている。「お客さまのライフスタイルがものすごいスピードで変化しているのに、小売業の悪い癖で、今日来たお客さまに、どのようにして明日も来ていただくかという近視眼的な視点で経営をしている。これを毎日繰り返していると、5年後と今はあまり変わっていない。(30~40代の)お客さまのライフスタイルと店舗に大きなズレが生じているのが、GMSの不振の大きな要因だ」。
またGMSの店舗が若い客層に受け入れられない理由を、わかりやすく説明する。「流通企業が大きく伸びたのは30~40年前の高度経済成長期。その時に30代だったニューファミリー層を一生懸命になって囲い込みながら一緒に成長してきた。気が付いたらお客さまは60~70代になっている。サービスも60~70代向けにどんどんと強化してきたので、今の若いファミリー層と乖離が生じしてしまう」。
お世辞にも「健康的」とはいいがたい前述のPOPの表現方法についても、例え話を交えながらドン・キホーテならではのこだわりを説明する。「表現方法一つとっても、今の若者は、『ありがとうございます』を『アザマス』と言う。『こんにちは』は、『チャース』。我々のコアターゲットは30~40代で、そこから動いたらいけない。一緒に年を取っていったら、企業も高齢化するから。私は年を取っていくが、企業はステイして動かないことが大切だ」と、ターゲット層は変えずに、刻々と変化する若者の感性や流行をOSを書き換えるようにバージョンアップさせていく、大原社長兼CEOならではの経営哲学をのぞかせた。
最大ボリュームのシニア層を狙ったマーケティングは、多くの企業が採用する一方で、可処分所得が低く、ボリュームも小さい若者は敬遠されがち。だが「親もいて、子どももいるニューファミリー層の方が消費をする。iPhoneだって、最新機種が発売されるたびに、どうしようかと悩むのは若いお客さまでしょう」と大原社長が語るように、29期連続の増収増益をひた走る異端の流通企業ドン・キホーテの手腕は、ユニーの再生でもいかんなく発揮されるのだろう。(BCN・細田 立圭志)
食料品の依存度が高かったユニー
コンビニの「サークルK」や「サンクス」を擁したGMSのユニーを経営統合して16年9月に誕生したユニー・ファミリーマートホールディングスは、わずか2年でユニーの自力再生を断念した。高柳浩二社長は原因について、「GMSは、他のチェーンも含めてどこも苦労している。GMSは食品事業で稼ぐ業態だが、ドン・キホーテを含めたディスカウントストアやドラッグストアが食品を安く売るケースが増えてきた。とりわけユニーは食品事業への依存度が高く、想定以上に厳しかった」と率直に述べた。ユニーの商品別売上高(18年2月期)で食品事業は72%を占める。内訳は、生鮮食品が42.7%、加工食品が29.2%。08年2月期は58.6%だったことからも、この10年間で食品事業の構成比が高まっていたことが分かる。GMSにとって食料品は、集客するための必要不可欠な事業だったのだ。
だが、食料品を扱う業態はGMSやスーパーだけでなく、ディスカウントストアやドラッグストアでも扱うようになった。加工食品や菓子、酒類などについていえば、家電量販店でもヤマダ電機やビックカメラなどが力を入れている。今や食料品は、さまざまな業態にとって魅力的というわけだ。
特に家電量販店が食料品を扱うのは、食品や衣料に比べて単価の高い家電製品を購入した時に発行するポイントを、顧客に使ってもらって還元するためだ。耐久消費財として買い替えサイクルが長い家電製品に対し、単価は低くても購入頻度が多い食料品は、集客効果が絶大ということだろう。
17年4月にEC最大手のアマゾンも、東京の一部地域で野菜や果物、鮮魚、精肉などの生鮮食品を扱う「Amazonフレッシュ」を開始。ネット通販も虎視眈々と食料品の扱いを狙う。少子高齢化で規模は縮小する一方で、あらゆる業態で食料品市場の奪い合いをしているのだから、食料品への依存度が高いユニーが苦しくなっていくのも無理はない。
シニアをターゲットにするのは間違い
ではなぜ、ドン・キホーテはユニーの再生に自信を示すのか。18年2月にオープンした、ドン・キホーテとユニーが共同開発して旧ピアゴ大口店から業態転換した第1号店「MEGAドン・キホーテUNY大口店」に、そのヒントは隠されている。旧店舗がターゲットにしていたシニア層を、新店では若いニューファミリー層に徹底して絞ったことが大きい。
例えば、精肉コーナーはピアゴ時代の1.5倍に拡張し、若い人が好きなモツなどの希少部位の品揃えを増やすなどした。アメリカ産牛肉ステーキ用肩ロースの手書きPOPにも顕著だ。「やわらかく脂肪も豊富で濃い味が特徴!」。健康に気にするシニア層がおおよそ手を出さないであろう表現が躍っている。豚肉コーナーも、「メガミート」の文字で埋め尽くされるほど、肉のボリューム感を演出している。
他にも、お菓子コーナーではスティック状に成形したじゃがいもを揚げたカルビーの「じゃがりこ」を山積みで展示し、安さとカロリーの高さで若者に訴えている様子が伝わる。
GMSの経営が厳しい原因について、17年11月のBCNの単独インタビューで大原社長兼CEOは次のように語っている。「お客さまのライフスタイルがものすごいスピードで変化しているのに、小売業の悪い癖で、今日来たお客さまに、どのようにして明日も来ていただくかという近視眼的な視点で経営をしている。これを毎日繰り返していると、5年後と今はあまり変わっていない。(30~40代の)お客さまのライフスタイルと店舗に大きなズレが生じているのが、GMSの不振の大きな要因だ」。
またGMSの店舗が若い客層に受け入れられない理由を、わかりやすく説明する。「流通企業が大きく伸びたのは30~40年前の高度経済成長期。その時に30代だったニューファミリー層を一生懸命になって囲い込みながら一緒に成長してきた。気が付いたらお客さまは60~70代になっている。サービスも60~70代向けにどんどんと強化してきたので、今の若いファミリー層と乖離が生じしてしまう」。
お世辞にも「健康的」とはいいがたい前述のPOPの表現方法についても、例え話を交えながらドン・キホーテならではのこだわりを説明する。「表現方法一つとっても、今の若者は、『ありがとうございます』を『アザマス』と言う。『こんにちは』は、『チャース』。我々のコアターゲットは30~40代で、そこから動いたらいけない。一緒に年を取っていったら、企業も高齢化するから。私は年を取っていくが、企業はステイして動かないことが大切だ」と、ターゲット層は変えずに、刻々と変化する若者の感性や流行をOSを書き換えるようにバージョンアップさせていく、大原社長兼CEOならではの経営哲学をのぞかせた。
最大ボリュームのシニア層を狙ったマーケティングは、多くの企業が採用する一方で、可処分所得が低く、ボリュームも小さい若者は敬遠されがち。だが「親もいて、子どももいるニューファミリー層の方が消費をする。iPhoneだって、最新機種が発売されるたびに、どうしようかと悩むのは若いお客さまでしょう」と大原社長が語るように、29期連続の増収増益をひた走る異端の流通企業ドン・キホーテの手腕は、ユニーの再生でもいかんなく発揮されるのだろう。(BCN・細田 立圭志)