「パソコン、もっと使いやすく」に込められた創業者の思い
【喜びの原点・3】 1987年3月12日に撮影された一枚の写真に笑顔で写るのは、メルコホールディングスの創業者・牧誠氏。82年に発売したプリンターバッファー「PB-32」が顧客から大きな支持を得て大ヒットし、会社の稼ぎ頭の事業になった頃だ。撮影から1カ月後の4月に、メルコで初めてのコーポレートステートメントとなる「パソコン、もっと使いやすく」が定められた。
撮影当時の牧氏は39歳で、社員数約20人、年商26億円(87年7月期)の小さな会社だったが、ここから売上高は年々急増していく。わずか5年後の92年3月期には売上高約150億円、従業員数131人の規模にまで急成長し、PC周辺機器メーカーとしての確固たる地位を築いた。
87年4月に定めた「パソコン、もっと使いやすく」というコーポレートステートメントは、まさに、その後の快進撃につながるきっかけとなる「喜びの原点」だったといえるだろう。メルコグループ40年の技術を伝承する『技術伝承ブック Vol.2』のなかに、当時の思いがつづられている。
86年にRAM(ランダム・アクセス・メモリー)ディスクを実際に体験した牧氏は「なんて便利で快適なのか!」と驚き、その高速なデータアクセス性能に魅了されたという。RAMとは、OSに対して仮想的なディスクドライブのようにみせるもの。
当時はまだ磁気媒体のフロッピーディスクでデータにアクセスするのが主流だったが、その書き込みや読み出しスピードが遅く、ユーザーのストレスとなっていた。ところが、半導体レーザーによる光の反射でデータを読み書きするRAMディスクは、圧倒的に速いデータアクセスを可能にしたのだ。
このRAMディスクを、増設したメインメモリーの一部領域に利用すると、PCの操作は格段に快適になった。まさにRAMディスクは、PCがこれまで以上に使いやすくなるためのハードウェアだったが、牧氏はここで大きな気づきを得た。
それがハードウェアのみならず、ソフトウェアの使い勝手を良くすることこそが、製品の差別化につながるという発想である。ソフトウェアのよしあし、出来不出来によって、ハードウェアの使いやすさが大きく左右され、ソフトの差別化が、メルコブランドの価値の創出につながると考えたわけだ。「パソコン、もっと使いやすく」というステートメントにある「もっと」の言葉に、牧氏のソフトウェアに対する並々ならぬ執念のようなものを感じる。
牧氏は、こんな言葉を残している。「玄人しか使いこなせないRAMディスクではなく、より多くのお客さまが簡単に使えて、利便性や快適性を手に入れられるようなソフトウェアの開発の必要性を実感した」。
さっそく「メルコオリジナルRAMディスク簡単設定プログラム」というソフトの開発に乗り出し、OSレベルで設定作業が必要だったRAMディスクの初期設定を、だれでも簡単に設定できるようにした。86年5月に製品化した、メルコオリジナルのバンクメモリーの自社ブランド製品「BMシリーズ」に、この設定ソフトを添付して販売したのだ。
メモリーモジュールというハードウェアに、簡単設定プログラムというソフトウェアを加えたことで、牧氏が衝撃を受けたRAMディスクの快適性を、多くのお客さまに体験してもらうというソリューションを提供した。
BMシリーズはプロモーション面でも、「だれでも簡単!RAMディスク」というソリューションを全面に打ち出したキャッチコピーを採用して当てた。「パソコン、もっと使いやすく」は、より多くのユーザーにPCを快適に、便利に使ってもらいたいという牧氏の思いを反映した言葉だったのだ。(BCN・細田 立圭志)
撮影当時の牧氏は39歳で、社員数約20人、年商26億円(87年7月期)の小さな会社だったが、ここから売上高は年々急増していく。わずか5年後の92年3月期には売上高約150億円、従業員数131人の規模にまで急成長し、PC周辺機器メーカーとしての確固たる地位を築いた。
87年4月に定めた「パソコン、もっと使いやすく」というコーポレートステートメントは、まさに、その後の快進撃につながるきっかけとなる「喜びの原点」だったといえるだろう。メルコグループ40年の技術を伝承する『技術伝承ブック Vol.2』のなかに、当時の思いがつづられている。
86年にRAM(ランダム・アクセス・メモリー)ディスクを実際に体験した牧氏は「なんて便利で快適なのか!」と驚き、その高速なデータアクセス性能に魅了されたという。RAMとは、OSに対して仮想的なディスクドライブのようにみせるもの。
当時はまだ磁気媒体のフロッピーディスクでデータにアクセスするのが主流だったが、その書き込みや読み出しスピードが遅く、ユーザーのストレスとなっていた。ところが、半導体レーザーによる光の反射でデータを読み書きするRAMディスクは、圧倒的に速いデータアクセスを可能にしたのだ。
このRAMディスクを、増設したメインメモリーの一部領域に利用すると、PCの操作は格段に快適になった。まさにRAMディスクは、PCがこれまで以上に使いやすくなるためのハードウェアだったが、牧氏はここで大きな気づきを得た。
それがハードウェアのみならず、ソフトウェアの使い勝手を良くすることこそが、製品の差別化につながるという発想である。ソフトウェアのよしあし、出来不出来によって、ハードウェアの使いやすさが大きく左右され、ソフトの差別化が、メルコブランドの価値の創出につながると考えたわけだ。「パソコン、もっと使いやすく」というステートメントにある「もっと」の言葉に、牧氏のソフトウェアに対する並々ならぬ執念のようなものを感じる。
牧氏は、こんな言葉を残している。「玄人しか使いこなせないRAMディスクではなく、より多くのお客さまが簡単に使えて、利便性や快適性を手に入れられるようなソフトウェアの開発の必要性を実感した」。
さっそく「メルコオリジナルRAMディスク簡単設定プログラム」というソフトの開発に乗り出し、OSレベルで設定作業が必要だったRAMディスクの初期設定を、だれでも簡単に設定できるようにした。86年5月に製品化した、メルコオリジナルのバンクメモリーの自社ブランド製品「BMシリーズ」に、この設定ソフトを添付して販売したのだ。
メモリーモジュールというハードウェアに、簡単設定プログラムというソフトウェアを加えたことで、牧氏が衝撃を受けたRAMディスクの快適性を、多くのお客さまに体験してもらうというソリューションを提供した。
BMシリーズはプロモーション面でも、「だれでも簡単!RAMディスク」というソリューションを全面に打ち出したキャッチコピーを採用して当てた。「パソコン、もっと使いやすく」は、より多くのユーザーにPCを快適に、便利に使ってもらいたいという牧氏の思いを反映した言葉だったのだ。(BCN・細田 立圭志)