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「eスポーツはリアルスポーツを超えるのか?」、うんざりな煽り文句に負けない討議

 8月30日に大阪で開催されたスポーツ産業関係者や専門家、研究者が集う展示会「スポーツビジネスジャパン2018」で、「eスポーツはリアルスポーツを超えるのか?」という題のパネルディスカッションが実施された。結論は、「eスポーツとリアルスポーツは、お互いに高め合って成長できる存在」だった。なお、タイトルを考案したのは主催者側で、反発するパネリストもいたという。

スポーツ関係者に向けた初めてのeスポーツに関するパネルディスカッション

 登壇したパネリストは、日本eスポーツ連合(JeSU)専務理事の平方彰氏、eスポーツコネクト社長の伊草雅幸氏、サードウェーブ副社長の榎本一郎氏、スポーツブランディングジャパン取締役の醍醐辰彦氏。司会は、日本政策投資銀行の坂本広顕氏が務めた。リアルスポーツ向けの展示会でありながらも、会場は立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。
 
日本政策投資銀行の坂本広顕氏

 eスポーツとは、コンピュータゲームやビデオゲームを競技として捉えた際の名称。「ゲームがスポーツになるのか」といった疑問は世間に根強くあるが、パネリストの中で唯一リアルスポーツ側に属するスポーツブランディングジャパンの醍醐氏は、「以前、eスポーツイベントの運営をした際に感じたのは、ただゲームをやっているのではなく、アスリートだと肌で実感した」と答える。
 
スポーツブランディングジャパン取締役の醍醐辰彦氏

 「もともと、リサーチを進めている段階から、eスポーツはスポーツに似ているという感覚を持っていた」(醍醐氏)。具体的には、選手がいて、リーグがあって、チームの運営があって、スポンサーがいて、ファンがいて、メディアがいて、放映権の売買があって、といった周辺環境から、「これはまさにスポーツ」と感じたという。

 そもそも、「ゲームがスポーツになるのか」といった疑問の背景には、ゲームに対する社会的にネガティブなイメージがある。この課題をどうするのかについて、サードウェーブでeスポーツ事業を担当する榎本氏は、「整えていかなければならないことはたくさんある」と前置きしつつ、「いろいろな部分をポジティブに捉えて解決していけばいい」と述べた。
 
サードウェーブ副社長の榎本一郎氏

 eスポーツのポジティブな捉え方の一つとして、榎本氏は「自分が野球をやっていた頃は、女性やシニア、障がいのある人とは試合をしたことがない。でも、eスポーツなら、そういった方々と同じ土俵に立てて、同じスポーツができる。一緒になって試合できる面白さがある」と紹介。「そういう場をどんどん広げようと努力している」と話した。

 ネガティブなイメージを払拭するための施策について、プロゲーミングチーム「CYCLOPS athlete gaming」やeスポーツメディア「SHIBUYA GAME」などの運営に携わる伊草氏は、「“所詮ゲームだよね”などの固定観念をすぐに払拭することは難しい」としつつ、「プロ選手が社会に認められる存在になれるよう、立ち居振る舞いやしゃべり方、インタビューの受け方など、教育していく」と話す。
 
eスポーツコネクト社長の伊草雅幸氏

 また、「ゲームをプレイしている人は多いので、eスポーツへの入り口は広い。一方、出口の部分、キャリアパスに課題がある。eスポーツのプロになってゲームばかりやっていたら、社会に出て苦労する、というイメージが定着している。当社では、プロ選手のセカンドキャリアを用意している。こういったことを積み重ねる必要があるが、一社でやっていてもなかなか変わらない」と訴えた。

 選手が社会に認められるよう、活躍できる場を整えることも、ゲームのイメージ向上にとって大切だ。JeSUの平方氏は、「アジア競技大会の公開競技に採用されたeスポーツの大会に、初めて日本選手を送り出すことができた。来年の茨城国体では、47都道府県で初めて予選を実施し、国体の文化プログラムで大会を開催する。このように、選手が輝ける場をつくって、文化としてeスポーツを盛り上げていきたい」と語った。
 
JeSU専務理事の平方彰氏

 今回のパネルディスカッションは、「eスポーツはリアルスポーツを超えるのか?」といった題だったものの、各パネリストは「eスポーツとリアルスポーツは、お互い高め合える存在」と結論付ける。

 例えば醍醐氏は、「リアルスポーツはファンの高齢化に苦しんでいる。その解決策として、若い世代に人気のeスポーツと連携できる」と提案する。逆に、「リアルスポーツの知見を使ってeスポーツを盛り上げることもできる」という。

 伊草氏は、「リアルのフットサルだけのイベントだと来ない親子も、ゲームを交えれば来てくれるかもしれない。ゲームをきっかけにリアルスポーツに興味を持ってもらうことも考えられる」と可能性を示した。