2025年までにキャッシュレス決済比率を40%に高めて将来的に80%まで引き上げると政府が掲げるなど、日本でキャッシュレス化の波が押し寄せようとしている。18年は「キャッシュレス元年」と、次々に新しいモバイル決済サービスが市場に出てきているなか、14年にサービスを開始し順調にユーザーを増やしているのが先駆者のLINE Payだ。どのようなキャッシュレスの世界を描いているのか。「新しいお金の『流れ』をつくる」という長福久弘取締役COOに今後の方向性を聞いた。(BCN・佐相彰彦)
長福 何といっても、LINEのプラットフォーム上で展開しているということですね。LINEユーザー7600万人のなかで、3000万人がLINE Payのユーザーになっています。LINEを使っていれば、新しくアプリをダウンロードしなくてもLINE Payが使えるという点は、大きな強みと自負しています。
――サービスについて、ユーザーからどのように評価されていますか。
長福 サービスのコアを「送金」に据えていまして、送金を使っているユーザーからの評価は非常に高い。LINE Payを使うにあたってユーザーは銀行口座を登録するのですが、他社のモバイル決済サービスはクレジットカードが基本ですので、銀行口座に関してハードルが高いとの声もあります。確かに、サービスを広めるための“初速”という点ではクレジットカードなのでしょう。ただ、日本のクレジット利用率って実は低いんです。LINEと同じようにLINE Payを幅広く使ってほしい。そういった意味では、銀行口座と連携したモバイル決済サービスのほうが、多くの人に使ってもらえると確信しています。
――LINE Payのユーザーは、どの年齢層が多いのですか。
長福 主に20代がユーザーになっています。LINEも、当初は10~20代がメインでしたが、そのうち家族でコミュニケーションをとるために親世代の30~40代の利用が増え、さらに孫の写真が見たいということで祖父母世代が使うようになりました。LINE Payも、毎月のお小遣いをあげるために親世代が使うようになり、お年玉などをわたすために祖父母世代が利用する、そのような流れになると考えています。送金によって、ユーザーが倍々に増えていくと確信しています。
――銀行口座の登録に関するハードルは低くなりますかね。
長福 これまで日本は、キャッシュレス化が進んでいなかった。キャッシュレスを普及させるためには、クレジットカードの利用を増やすことと、銀行口座と連携したモバイル決済サービスを使ってもらうことは、キャッシュレス化の普及という点で同じかなと感じています。25年までにキャッシュレス決済比率を40%に高め、将来的に80%まで引き上げる、と政府が掲げていることを含めて、モバイル決済サービスが「使いやすいね」「便利だね」と思ってもらえることが重要と考えています。
長福 今はモバイル決済サービス自体が浸透していないというのが日本の実情で、まずはモバイル決済サービスを使ってみるというユーザーが多く、新しいサービスがほしいという状況にまで達していないのが事実です。ただ、多くのユーザーは使い過ぎを防ぎたいと考えていますので、家計簿アプリとの連携は実現しています。また、ユーザーはLINE Payが使える加盟店が多くなることも求めています。そこで、事業者向け決済アプリ「LINE Pay 店舗用アプリ」を提供することにしました。
――事業者がアプリを導入するメリットは?
長福 QRコード決済に対応できる「レジ機能」があり、この機能によって飲食店や小売店などの中小事業者が初期費用をかけずにコード決済を導入できるという点がメリットです。しかも、18年8月からの3年間はアプリの決済手数料を無料化しています。中小事業者ですと、現金での支払いのみというケースがありますよね。なぜかといえば、クレジットカードだと初期投資や決済手数料がかかるからです。大きな壁だったため、限りなくその壁をゼロにすることが必要なんです。そのためにアプリを提供することにしたのです。導入できる環境をつくれば、加盟店が増えると捉えています。
長福 かなり早いペースで普及しているとは実感しています。また、20年の東京五輪によって、さらに外国人観光客が増えるという点でも、ますますキャッシュレス化が進むことが予想されます。ただ、このような流れはトレンドとも感じ取れます。そのため、「なぜキャッシュレスにしなければならないのか」が重要になってきます。
――確かに、それは重要ですね。
長福 「少子化」という観点で、今後は人材不足になるので、釣銭を両替するために銀行に行ったり、1日ごとに時間をかけてレジを締めたり、といった、今までのような業務を改善していかなければなりません。そのためには、テクノロジーを使って効率化する、つまりキャッシュレス化という流れが必要ということなんです。これは都市圏だけでなく、地方もそうです。むしろ、地方こそ人手不足への問題解決が急務といわれていますので、地方の事業者がキャッシュレス化を意識し、それが浸透していくことに期待しています。
――キャッシュレスがあたりまえになると、お金の「価値」というものは変わりますか。
長福 お金の「あり方」は変わってくるでしょうね。これまでは、銀行に預金するのが当然でしたが、キャッシュレス化によって、お金をしっかりと運用するという流れが出てくるでしょう。実際、中国などの海外では所有するお金の大半を資産運用に回すことなどがあたりまえになっています。日本も、このような状況になれば、これまでになかったサービスが生まれてくるといえます。当社も、LINEフィナンシャルなどがグループにいますので、将来的に新しいサービスを模索していきます。
――一方で、普及を阻む懸念材料はありますでしょうか。
長福 「セキュリティ」は普及の障壁になる危険性を秘めています。モバイル決済サービスを提供するベンダーが増えるのは、普及という点ではいいことだといえますが、今後、ぜい弱なセキュリティにもかかわらずサービスを提供するベンダーが出てきてユーザーの個人情報が漏えいした場合、モバイル決済サービスのイメージが悪くなってしまいます。当社は、14年からサービスを提供しています。他社と比べて早くからビジネスを手がけているため、安心して使っていただける点を訴えていく必要があるかもしれません。もちろん、当社は国際レベルでセキュリティを担保していますし、ユーザーのお金を守る強固な仕組みをつくっています。
――LINE Payは、将来的にどのような存在になりますか。
「ペイメント・レボリューション」をコンセプトに、お金にまつわるプラットフォーム、新しいお金の「流れ」をつくって、リーディングカンパニーになる。これが当面の目標です。
「送金」をコアにユーザー増へ
――日本でモバイル決済サービスが増えていますが、そのなかでの優位性を教えてください。長福 何といっても、LINEのプラットフォーム上で展開しているということですね。LINEユーザー7600万人のなかで、3000万人がLINE Payのユーザーになっています。LINEを使っていれば、新しくアプリをダウンロードしなくてもLINE Payが使えるという点は、大きな強みと自負しています。
――サービスについて、ユーザーからどのように評価されていますか。
長福 サービスのコアを「送金」に据えていまして、送金を使っているユーザーからの評価は非常に高い。LINE Payを使うにあたってユーザーは銀行口座を登録するのですが、他社のモバイル決済サービスはクレジットカードが基本ですので、銀行口座に関してハードルが高いとの声もあります。確かに、サービスを広めるための“初速”という点ではクレジットカードなのでしょう。ただ、日本のクレジット利用率って実は低いんです。LINEと同じようにLINE Payを幅広く使ってほしい。そういった意味では、銀行口座と連携したモバイル決済サービスのほうが、多くの人に使ってもらえると確信しています。
――LINE Payのユーザーは、どの年齢層が多いのですか。
長福 主に20代がユーザーになっています。LINEも、当初は10~20代がメインでしたが、そのうち家族でコミュニケーションをとるために親世代の30~40代の利用が増え、さらに孫の写真が見たいということで祖父母世代が使うようになりました。LINE Payも、毎月のお小遣いをあげるために親世代が使うようになり、お年玉などをわたすために祖父母世代が利用する、そのような流れになると考えています。送金によって、ユーザーが倍々に増えていくと確信しています。
――銀行口座の登録に関するハードルは低くなりますかね。
長福 これまで日本は、キャッシュレス化が進んでいなかった。キャッシュレスを普及させるためには、クレジットカードの利用を増やすことと、銀行口座と連携したモバイル決済サービスを使ってもらうことは、キャッシュレス化の普及という点で同じかなと感じています。25年までにキャッシュレス決済比率を40%に高め、将来的に80%まで引き上げる、と政府が掲げていることを含めて、モバイル決済サービスが「使いやすいね」「便利だね」と思ってもらえることが重要と考えています。
中小事業者のキャッシュレス対応を支援
――「このようなサービスがあったらいいね」など、新しいニーズはありますか。長福 今はモバイル決済サービス自体が浸透していないというのが日本の実情で、まずはモバイル決済サービスを使ってみるというユーザーが多く、新しいサービスがほしいという状況にまで達していないのが事実です。ただ、多くのユーザーは使い過ぎを防ぎたいと考えていますので、家計簿アプリとの連携は実現しています。また、ユーザーはLINE Payが使える加盟店が多くなることも求めています。そこで、事業者向け決済アプリ「LINE Pay 店舗用アプリ」を提供することにしました。
――事業者がアプリを導入するメリットは?
長福 QRコード決済に対応できる「レジ機能」があり、この機能によって飲食店や小売店などの中小事業者が初期費用をかけずにコード決済を導入できるという点がメリットです。しかも、18年8月からの3年間はアプリの決済手数料を無料化しています。中小事業者ですと、現金での支払いのみというケースがありますよね。なぜかといえば、クレジットカードだと初期投資や決済手数料がかかるからです。大きな壁だったため、限りなくその壁をゼロにすることが必要なんです。そのためにアプリを提供することにしたのです。導入できる環境をつくれば、加盟店が増えると捉えています。
キャッシュレス化の重要性を訴える
――日本におけるキャッシュレス化が普及する可能性をどう考えていますか。長福 かなり早いペースで普及しているとは実感しています。また、20年の東京五輪によって、さらに外国人観光客が増えるという点でも、ますますキャッシュレス化が進むことが予想されます。ただ、このような流れはトレンドとも感じ取れます。そのため、「なぜキャッシュレスにしなければならないのか」が重要になってきます。
――確かに、それは重要ですね。
長福 「少子化」という観点で、今後は人材不足になるので、釣銭を両替するために銀行に行ったり、1日ごとに時間をかけてレジを締めたり、といった、今までのような業務を改善していかなければなりません。そのためには、テクノロジーを使って効率化する、つまりキャッシュレス化という流れが必要ということなんです。これは都市圏だけでなく、地方もそうです。むしろ、地方こそ人手不足への問題解決が急務といわれていますので、地方の事業者がキャッシュレス化を意識し、それが浸透していくことに期待しています。
――キャッシュレスがあたりまえになると、お金の「価値」というものは変わりますか。
長福 お金の「あり方」は変わってくるでしょうね。これまでは、銀行に預金するのが当然でしたが、キャッシュレス化によって、お金をしっかりと運用するという流れが出てくるでしょう。実際、中国などの海外では所有するお金の大半を資産運用に回すことなどがあたりまえになっています。日本も、このような状況になれば、これまでになかったサービスが生まれてくるといえます。当社も、LINEフィナンシャルなどがグループにいますので、将来的に新しいサービスを模索していきます。
――一方で、普及を阻む懸念材料はありますでしょうか。
長福 「セキュリティ」は普及の障壁になる危険性を秘めています。モバイル決済サービスを提供するベンダーが増えるのは、普及という点ではいいことだといえますが、今後、ぜい弱なセキュリティにもかかわらずサービスを提供するベンダーが出てきてユーザーの個人情報が漏えいした場合、モバイル決済サービスのイメージが悪くなってしまいます。当社は、14年からサービスを提供しています。他社と比べて早くからビジネスを手がけているため、安心して使っていただける点を訴えていく必要があるかもしれません。もちろん、当社は国際レベルでセキュリティを担保していますし、ユーザーのお金を守る強固な仕組みをつくっています。
――LINE Payは、将来的にどのような存在になりますか。
「ペイメント・レボリューション」をコンセプトに、お金にまつわるプラットフォーム、新しいお金の「流れ」をつくって、リーディングカンパニーになる。これが当面の目標です。