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可能性は無限大 ドコモの新AIエージェント「my daiz」とは?

時事ネタ

2018/08/13 12:00

 今年5月に無料の会員サービス「dポイントクラブ」をリニューアルし、家族でdポイントを共有できる「ポイント共有グループ」を新設するなど、ポイントサービスと紐づいた共通ID「dアカウント」のサービス拡充・強化に力を入れるNTTドコモ。5月30日には、Androidスマートフォン・タブレット端末とiPhone/iPadで利用できる新しいAIエージェントサービス「my daiz(マイデイズ)」も開始した。

 この「my daiz」の開発を担当したドコモのコンシューマビジネス推進部 関崎(※)宣史エージェントサービス担当部長と近藤佳代子第一エージェントサービス担当課長へのインタビュー時のコメントを交えながら、AI×スマホがもたらす変化を考えてみた。

※「崎」「宣」は正しくは旧字体
 
5月にスタートした「my daiz」。ウェイクワード(呼びかける言葉)はサービス名称と同じ「マイデイズ」

音声でもタッチ操作でOKも スマホ初心者や多忙な人でも使いやすく

 「my daiz」は、ユーザーの行動や状況を学習し、ドコモやパートナー企業が提供する「メンバー(エージェント)」が一人ひとりにあった情報やサービスを届けるサービス。これまで提供していた「しゃべってコンシェル」と「iコンシェル」を統合した。

 擬人化されたユーザーフレンドリーな四角いキャラクター「my daiz」は、いわば自身の分身。dアカウントでログインすることで、ユーザーの基本的なプロフィール情報と連携、さらに細かいプロフィールを登録すると、ユーザーに合わせて情報を提供できるようになる。
 
「my daiz」のキャラクターは、ドコモ社内では「はんぺん太郎」とも呼ばれ、
表情があったほうが親近感がわくので「目」を入れたという

 また、目玉コンテンツ「今日のチラシ」ではローカル色を高め、自治体の広報紙や店舗の折り込みチラシを何枚も確認するより、情報を串刺しにした「my daiz」のほうがわかりやすい、生活に密着したサービスを提供した。ちなみに
 
dアカウントを作成済みなら面倒な初期設定は不要。プロフィールや位置情報からAIが学習し、
その時々に必要な情報をカスタマイズして表示する

 現在の対応機種は、ドコモのAndroid 5.1以降を搭載したスマートフォン・タブレット(SHA-2対応モデル)とiOS 10.0以降を搭載したiPhone/iPad。iOSについては「dアカウント」さえ設定すれば、ドコモの回線がなくても利用可能。また今秋からは、ドコモIDさえ設定すれば、ドコモ以外のAndroid端末でも利用可能になる予定。
 
キャラクターの待受表示はAndroid限定機能。そのほかの機能はOSを問わない

 最新のスマホには、OSと連携した音声認識AIアシスタント「Siri」や「Google アシスタント」が入っているが、「my daiz」は、基本的にキャラクター側からアクションを起こすため、率先して新機能や新アプリを使わない、受け身なスタンスの人でも使い始めやすい。さらに音声操作に加え、タッチ操作やテキスト入力など、通常のスマホと同じ方法でも利用できるため、電車内や待ち時間など、スキマ時間にさっと使える。ターゲットは全世代だが、とくに使って欲しい層としては、スマホを初めて使う初心者やシニア、共働きで子育て中の忙しい母親などを想定して設計したそうだ。
 
自宅周辺のスーパーの特売品がわかる「本日のチラシ」や天気など役立つ情報に加え、オーディオブックの朗読や雑学クイズといった電子辞書ライクな機能も用意

自治体もパートナーとして参加 スマホが最も身近なローカル情報源に

 基本的な使い方は、他の音声認識対応AIアシスタントと同じ。音声で操作したい場合は、スリープ中や充電中でも、スマホに向かって「マイデイズ」と呼びかけるだけで起動する(スリープ中の起動は対応機種のみ)。別売アクセサリーのドコモ純正マイクと組み合わせると、よりスマートスピーカーライクに使える。

 「メンバー」となるパートナー企業には、日本航空(JAL)や高島屋、ヤマト運輸など、著名な企業が名を連ねる。パートナーが提供する情報は全て無料。ECサイトやリアル店舗のキャンペーン情報・クーポンサービスを集約し、位置情報とAIで自動リコメンドの精度を高めている。またパートナー企業として、一部の自治体も「メンバー」に加わっており、横浜市では、ごみの分別に関する情報を提供予定という。
 
位置情報やプロフィールと連動し、幅広く情報を網羅。ドコモの各サービスのほか、
大手企業や一部の自治体もメンバーとして参加する

 ドコモのサービスは、「dゲーム」「dTV」「dアニメストア」「dマガジン」「話して翻訳」など、多数が対応しており、デフォルトで付近のドコモショップやdポイントがたまる・使える店舗、「dポイント」のポイント残高などを表示する。ほかにも、フォトブック作成の提案や絵本の朗読など、子育て・教育に役立つコンテンツを盛り込んだ。ドコモとしては、情報が氾濫するなか、ユーザーとパートナー企業を「つなぐ」役割を重視しているという。
 

dアカウント拡大策とリンクする「my daiz」

 ドコモの近藤佳代子課長によると、「my daiz」は開発に1年強かかったという。「(AIが推定する先読み機能で)いちいち調べる手間を省ける有料版をより多くの方に使って欲しいところですが、無料版でもかなり便利なので、まずは試していただきたいです。行政の情報も届くので、子どものいる家庭ではかなり役立ちます」と、後発ならではの完成度の高さ、ローカル情報の充実ぶりをアピール。関崎宣史部長も「従来の回線単位から会員単位へ、新しいドコモの戦略にあわせ、『my daiz』はフロントに立つサービス。パートナー企業も今後、どんどん拡大していきます」と自信を示した。
 
オプションサービスの一つではなく、ユーザーに寄り添った中核サービスとして育てていきたいと意気込む(左から、ドコモのコンシューマビジネス推進部 関崎宣史エージェントサービス担当部長、近藤佳代子第一エージェントサービス担当課長)

 常に持ち歩くスマホの位置情報と連動した「my daiz」をフル活用すれば、時間のムダの多い日常の買い物や情報収集は、もっと効率よく行えるはず。その一方で、モノや情報に対する「偶然の出会い」が減り、AIにリコメンドされない「個人経営の小さい店舗」などに気づきにくくなるかもしれないと危惧する。

 とはいえ、AIはブームの域を越え、生活の一部にどんどん入り込むだろう。ドコモの技術力とパートナーシップで、よりローカルな情報、ニッチな情報までカバーし、最も頼れる有能なアシスタントになると、スマホに特化した日本発の「my daiz」に期待したい。(BCN・嵯峨野 芙美)