なぜ動画ではなく「テキスト」なのか
ーー 記者会見をそのままストリーミング配信するメディアもありますが、ログミーが面白いのが、動画ではなく、文字なんだという点です。通常、コンテンツは文字から写真、写真から動画と、情報量がリッチな方に向かいますよね。ログミーは逆に「テキスト」にこだわってます。川原崎 なんでも動画とういうのに疑問をもっていて、動画に合うコンテンツは動画にすればいいのです。猫の動きが見たければ動画がいいでしょうし、いい景色が見たいなら写真の方がいい、情報が知りたいだけなら文字の方が取得しやすいのです。
ーー 「イベント」を書き起こすという着想はどこからきたのですか。
川原崎 正直に言って、最初はネット上の動画を書き起こすメディアとして立ち上げましたが、ネット上にそんなに面白い動画がなかったんです。書き起こすものが増えないときに考えたのが、イベントです。結局、動画コンテンツの元は、イベントや対談、取材なのです。録画はしてもウェブにアップしてないなど、イベントの1%もウェブ上に存在しないのではないかと。だったら、大本であるイベント自体を自分たちで録画して書き起こそうかという発想になりました。
ーー その場にいる臨場感を共有できるのが動画のメリットだと思うのですが、なぜわざわざ文字に書き起こすのですか。
川原崎 映画のように、すごく作り込んでいるものを2時間かけて、お金を払ってでも映画館でみる価値はあっても、対談やパネルディスカッションの多くは、動画にしたときに編集をしていないので、コンテンツとしてはリッチではありません。1日24時間という限られた時間のなかで、イベントの動画を2時間かけて見るだけのクオリティはないと思います。
イベント事業にもかかわっているのですが、イベントは情報を取得するために行くのではなく、好きな仲間や登壇者と同じ場所にいるとか、参加者との交流などに価値があるのです。イベントの本当の価値は、動画では再現できていないと思います。体験価値を知りたいならその場に行くしかないですし、情報を知りたいだけなら、書き起こしで十分なので、動画は中途半端です。
ーー逆に書き起こしの良さとは。
川原崎 1時間のイベントが10分で読めるので情報取得のスピードが速く、時間効率を上げられます。メモをとる必要がないし、内容をシェアしやすい。また、イベントにかかわっていて気づいたのは、人はあまり上手に話せないということです。他社をディスっちゃったり。報道に関しては、パブリックな場で発言したことなので言質をとってそのまま載せますが、イベントはちょっときつく言い過ぎたとか、間違っちゃったことがあるので、内容を確認してもらって、本当は何を伝えたかったのかをログミー上では伝わるようにしています。
マネタイズはクライアントから
ーー ログミーとしての収益源はPVなのでしょうか。川原崎 単純にPVを上げたければ芸能人ネタを取り上げたり、釣りタイトルやみんなと同じものを書けば取れます。それだと独自性がなく、自分たちがやる意味はあまりないと思うので、PVをお金に変える手法はログミーでは、最初からやならいと決めていました。なぜなら、明らかに正しくないからです。
最初から、直接、クライアントからお金をいただくというマネタイズ手法です。当時、人材事業の企業などから新卒説明会などのイベントを書き起こして、それをシェアすることで、広告掲載費というかたちで対価をいただいていました。
CMを流すときに、映像制作費でお金をいただくのではなく、テレビに流すことで対価をいただいているのと同じです。ログミーのユーザーに、自分たちのコンテンツを届けたいからということでお金をいただいています。ログミーを読んでるような学生や社会人を採用したいという目的のほか、マーケティングやPR、ブランディングなど多岐にわたります。また、ログミーの読者はインターネットのリテラシーが高く、話題になった記事はSNSなどで話題になったりするのです。
ーー どのようにして300万人のユーザーが集まったのでしょう。コンテンツをコツコツと増やしていくにしたがって、リテラシーの高いユーザーが集まったのですか。
川原崎 そうですね。とくに何かをしたということはありません。もちろん細かいテクニックはありますが、あまりSEO対策やソーシャル対策を頑張ることはしてません。ルールが変わるとなくなってしまうので。
ーー クライアントがつくまでどうしていたのですか。書き起こしには人も時間もコストもかかりますが。
川原崎 ほかの起業家と変わらないのですが、ウェブのコンサルティングをしてお金を稼いで、ログミーに投資していました。それ以外は普通のメディアと同じです。第三者であるわれわれが載せているというのも同じですし、ただ、「ログミーだから長文でも仕方ないか」というのはあるかもしれませんね。