個人的な意見だが、戸建て住宅より集合住宅、とくに新築・築浅の分譲マンションや賃貸アパートのほうが優れていると思う。その理由の一つは、テレビの受信環境。ケーブルをつなぐだけのわかりやすさと、管理会社や管理組合、大家におまかせの気軽さだ。
一方、同じ新築でも、建売戸建や注文住宅は、アンテナ設置工事はオプション扱いのため、入居時に追加で費用がかかる。外部から見える屋根やベランダにアンテナを設置すると美観を損ねるというデメリットもある。代わりにケーブルテレビや「ひかりTV」を契約する手もあるが、月額制なので、アンテナ設置よりトータルコストは高くなる。
今から7年前、11年7月24日の「地上アナログ放送終了・完全地デジ化」は、アナログとデジタルでは圧倒的に画質が違ったため、消費者に負担を強いるかたちでも完了した。とはいえ、経過措置として、ケーブルテレビによる地上デジタル放送のデジアナ変換再送信サービスを15年3月末まで継続したため、実際には地デジ完全移行はつい最近のことだ。対して、新たに実用放送が始まる「4K8K」放送はプラスαの要素が強く、同様に急ピッチで普及するか、個人的には懐疑的だ。
放送波(電波)を使ったテレビ放送は、対応するテレビ・チューナー・アンテナ、そしてアンテナを家庭のテレビにつなぐケーブルやブースター、分配器などがすべて揃って初めてノイズなく視聴できる。「新4K8K衛星放送」は12月の開始時点では、BS右旋で5チャンネル、BS左旋で4チャンネル、110度CSで8チャンネルを展開する。このうち、BS右旋は既存のBS放送アンテナや室内配線のままで視聴できるが、BS左旋と110度CSは新たに対応アンテナ・ケーブルが必要となる。
持ち家の戸建て住宅なら、4Kテレビや4Kチューナー購入時に業者に依頼し、新4K8K衛星放送対応のアンテナ・ケーブル・分配器などを自費で一新すればいい。問題は集合住宅だ。新4K8K衛星放送に対応するためには、テレビ共聴システムを更新する必要があり、導入の可否は、分譲マンションでは管理組合の決議によって決まり、賃貸マンションではオーナーの判断に委ねられる。
6月に掲載した記事<野田総務相、「4K放送見られない4Kテレビ」問題にクギを刺す>は、非常に多くのアクセスを集めた。ネット上で一部から「総無能」と揶揄される総務省だが、昨年秋に編集部で取材した内容をまとめた記事<本格化する4K/8Kビジネス>総務省が描く普及のロードマップ>によると、事前に集合住宅のテレビ共聴システムの問題を把握し、業界に働きかけているようだ。
もし、今年12月以降に入居予定のマンション・建売住宅の購入を検討しているなら、「4K8K衛星放送」対応かどうかをチェックしたい。戸建てなら、オプションのアンテナ工事の際に、標準より高額でも「4K8K衛星放送」対応にしておけば、のちのち追加の工事費用が発生しないのでおすすめだ。
4K8K衛星放送の普及は、結局のところ、新築マンションデベロッパー、ハウスメーカー、物件を仲介する不動産会社など、住宅業界にかかっている。いくら家電量販店の店頭で「4K8K」の映像や音質のよさを伝えても、自宅で視聴が不可能なら売れるはずがない。むしろ売るとクレームのもとになりかねない。また今後、もし新4K8K衛星放送はすばらしい、ぜひ見たいと一般ユーザーからの評価が高まった場合、非対応物件の価値は相対的に下がり、「駅近」や「大規模再開発」といった、立地偏重の住まい選びのトレンドが変わっていくだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
戸建てVSマンション論争で忘れられがちな“アンテナ設置”のコスト
新築・築浅のマンションは、建設時に設置したテレビ共聴システムを利用し、建物の屋上に設置した共同アンテナから各戸に分配するため、入居にあたって追加工事は必要なく、部屋のTVコンセント(マルチメディアコンセント)にケーブルをつなぐだけで地上・BS・110度CSデジタル放送が視聴できる。テレビ共聴システムとして、アンテナを立てず、有料のケーブルテレビやインターネット回線を利用したテレビサービス「ひかりTV」を利用しているケースもあるが、管理費にその料金が組み込まれているため、感覚的には「無料」だ。一方、同じ新築でも、建売戸建や注文住宅は、アンテナ設置工事はオプション扱いのため、入居時に追加で費用がかかる。外部から見える屋根やベランダにアンテナを設置すると美観を損ねるというデメリットもある。代わりにケーブルテレビや「ひかりTV」を契約する手もあるが、月額制なので、アンテナ設置よりトータルコストは高くなる。
12月の新4K8K衛星放送開始に向けて課題山積み
6月に入り、テレビメーカーや周辺機器メーカー各社から、2018年12月1日にスタートする「新4K8K衛星放送(BS/110度CS 4K8K放送)」を視聴できる4Kチューナー内蔵テレビや、既存のテレビにつないで新4K8K衛星放送を視聴できる外付け4Kチューナーが相次いで発表された。今から7年前、11年7月24日の「地上アナログ放送終了・完全地デジ化」は、アナログとデジタルでは圧倒的に画質が違ったため、消費者に負担を強いるかたちでも完了した。とはいえ、経過措置として、ケーブルテレビによる地上デジタル放送のデジアナ変換再送信サービスを15年3月末まで継続したため、実際には地デジ完全移行はつい最近のことだ。対して、新たに実用放送が始まる「4K8K」放送はプラスαの要素が強く、同様に急ピッチで普及するか、個人的には懐疑的だ。
放送波(電波)を使ったテレビ放送は、対応するテレビ・チューナー・アンテナ、そしてアンテナを家庭のテレビにつなぐケーブルやブースター、分配器などがすべて揃って初めてノイズなく視聴できる。「新4K8K衛星放送」は12月の開始時点では、BS右旋で5チャンネル、BS左旋で4チャンネル、110度CSで8チャンネルを展開する。このうち、BS右旋は既存のBS放送アンテナや室内配線のままで視聴できるが、BS左旋と110度CSは新たに対応アンテナ・ケーブルが必要となる。
持ち家の戸建て住宅なら、4Kテレビや4Kチューナー購入時に業者に依頼し、新4K8K衛星放送対応のアンテナ・ケーブル・分配器などを自費で一新すればいい。問題は集合住宅だ。新4K8K衛星放送に対応するためには、テレビ共聴システムを更新する必要があり、導入の可否は、分譲マンションでは管理組合の決議によって決まり、賃貸マンションではオーナーの判断に委ねられる。
集合住宅の対応は緩やかに進むか
テレビ共聴システムの更新工事は、分譲マンションの管理組合や賃貸オーナーが4K8K対応設備の導入を決議したのち、ようやく着手できるので、集合住宅の居住者が12月1日の初日に「新4K8K衛星放送」の全チャンネルを見るには、現時点で導入が決定しているか、または「新4K8K衛星放送」を受信する仕様を満たしたテレビ共聴システムを導入済みの新築マンションだけとなる。こうした事情から、実際のところ、「新4K8K衛星放送」は、当初はBS右旋で展開するチャンネルのみとみなしたほうがいいだろう。6月に掲載した記事<野田総務相、「4K放送見られない4Kテレビ」問題にクギを刺す>は、非常に多くのアクセスを集めた。ネット上で一部から「総無能」と揶揄される総務省だが、昨年秋に編集部で取材した内容をまとめた記事<本格化する4K/8Kビジネス>総務省が描く普及のロードマップ>によると、事前に集合住宅のテレビ共聴システムの問題を把握し、業界に働きかけているようだ。
もし、今年12月以降に入居予定のマンション・建売住宅の購入を検討しているなら、「4K8K衛星放送」対応かどうかをチェックしたい。戸建てなら、オプションのアンテナ工事の際に、標準より高額でも「4K8K衛星放送」対応にしておけば、のちのち追加の工事費用が発生しないのでおすすめだ。
4K8K衛星放送の普及は、結局のところ、新築マンションデベロッパー、ハウスメーカー、物件を仲介する不動産会社など、住宅業界にかかっている。いくら家電量販店の店頭で「4K8K」の映像や音質のよさを伝えても、自宅で視聴が不可能なら売れるはずがない。むしろ売るとクレームのもとになりかねない。また今後、もし新4K8K衛星放送はすばらしい、ぜひ見たいと一般ユーザーからの評価が高まった場合、非対応物件の価値は相対的に下がり、「駅近」や「大規模再開発」といった、立地偏重の住まい選びのトレンドが変わっていくだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)