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IoT住宅の理想は団地にある! 築46年のリノベ物件は衝撃の連発(上)

時事ネタ

2018/07/10 17:30

 いよいよ日本に上陸したスマートスピーカーによって、「住まい」と「IoT」が密接に関わり始めた。ここ数か月の間に、新たな動きとして「IoTマンション」や「IoTアパート」が登場。今回は、何とスマートスピーカーや最新のデジタル機器を取り入れた「IoT団地」が誕生したと聞き、さっそく見学してきた。

家具家電付きリノベブランド「bento」第1弾

 訪問したのは東京・立川市、多摩都市モノレール「玉川上水駅」から徒歩4分のに位置する柏町団地だ。初めて下車した玉川上水駅の周辺は、本当にここに未来志向の住まいがあるのかと思えるほどにのどか。柏町団地も同じく、昔ながらの「THE・団地」という趣きだ。玄関の前に来ても、まだ気分はノスタルジック。しかし、ドアノブをひねりドアを開けた先には、わずか40~50m2の1LDKに、デジタルとIoTを駆使した未来感ある空間が広がっていた。
 
東京・立川市にある柏町団地。リノベしたのは築46年の棟

 今回、訪れた「IoT団地」は、正確にいうと、柏町団地のような築古物件をリノベーションし、家具家電付きで販売するROSETTAのリノベーションブランド「bento(ベントー)」の第1号となる「bento bianco 立川」のモデルルームだ。

 プロデュースしたROSETTA代表取締役の木村英寛氏は、アメリカの音楽大学に在籍しながら、映像やWeb、空間デザインを独学で学び、帰国後にROSETTAを起業。現在では施工管理、インテリアデザイン、住設の選定、仕入れ、輸入など、住宅に関する一連の流れを一人でこなすスペシャリストだ。IoTエバンジェリストとしての顔ももち、CNETオフィシャルブロガーも務めるなど、控え目にいって超人のような人だ。
 
異色の経歴をもつROSETTA代表取締役の木村英寛氏

 モデルルームは5月26日にオープンした。今年の年始に完成して、現在に至るまで約半年、奥様と愛猫のピアノちゃんと一緒に生活しているという。「モデルルーム(しかも団地)に家族と暮らすってどうだろう……」と内心では思いつつ、説明を聞き始めた。
 
リノベーション前(左)と後(右)の比較。
まさか団地の中にこんな高級マンションのような部屋があるとは誰も思わないだろう

隠れ要素満載のオープンキッチン 随所に凝らされた見せない工夫

 まずは、玄関から近いオープンキッチン兼ダイニング。キッチン周りは生活していると、洗剤やら食器やらが外に出て、どんなにオシャレな空間でも知らぬ間にごちゃごちゃしてくるものだが、このオープンキッチン、とにかく無駄なものが一切出ていない。記者の感覚だと、むしろ物がなさすぎるくらいの印象だ。
 
「本当に生活してます!?」というくらい無駄がないオープンキッチン

 デザイン性の高い調理器具が並ぶ中で何気なく置いてあったので、うっかり見落とすところだったが、食器棚の上にソニーモバイルの超単焦点プロジェクター「Xperia Touch」を発見。木村氏によると、音声操作やジェスチャー操作で、調理中にレシピを見たり、ニュースを読み上げさせたりしているそうだ。食事中に映画やドラマを楽しむ用途でも役に立っている。
 
記者は見逃さなかった、食器棚の上の「Xperia Touch」

 実際にカウンターバーの椅子に腰かけ、動画を流してもらうと、なんだかものすごく音が良い。まるでホームシアターから流れているような迫力ある音場だ。首をかしげていると、木村氏が椅子の奥を覗いてほしいという。ひょいとのぞき込んで納得。椅子の奥にはサウンドバーが! 指摘されるまで全く気がつかなかった。
 
記者が完全に見落とした、カウンターバー奥のサウンドバー

 キッチンのライトはフィリップスのスマート照明「Hue」を使用。スマートスピーカーに声で指示して消灯できる。問題はキッチンのどこにもスマートスピーカーが見当たらないことだ。サウンドバーのようにどこかに隠れているのではと思い、探してみると、窓に面したキッチン台の側面に発見。専用のホルダーに収納され、マグネットで貼り付けられていた。
 
意外と置き場所に困るスマートスピーカーは、視界に入らないキッチン台の側面に設置

多機能でもあえて“目的を絞る” 家具・家電を中心に考える

 キッチンだけでも隠れた仕かけが山のように出てくるが、正直、高機能のガジェットをキッチンに固定してしまうのはもったいないのではという気もした。木村氏にその感想を伝えたところ、「いろいろな場所・場面で使いたいというのは罠です」という回答が返ってきた。

 「例えば、超単焦点プロジェクターはコンパクトでモバイル性が高いのがメリットですが、実際に移動させるのは手間です。そのうち、面倒さばかり気になって使わなくなってしまう。この家の他のものにも共通することですが、重要なのは“目的を絞ること”。特定のシーンで、特定の使い方をすることで、毎日使うツールとして機能するようになるのです」

 うーむ、深い……。位置の固定は見た目のスッキリ感にも結びついている。超単焦点プロジェクターにせよ、スマートスピーカーにせよ、設置されているのは、コンセントのすぐそば。ケーブルはほとんど目に触れない。聞けば聞くほど、計算されつくされているが、ここでさらに衝撃の事実を告げられる。

 「このリノベーションハウスは設置する家電・家具から決め、それに合わせて、間取りや外装、コンセントの配置などを設計しています」。

 言わんとすることは言葉通りで、「bento」の物件はすべて「家具・家電ありき」。わかりやすい例でいえば、キッチンの壁面。並べられた食器棚や冷蔵庫が壁幅と寸分違わない幅に収まっている。これは壁面に並べるインテリアや家電を選定、それらの横幅を計算、それに合わせてキッチンとリビングを仕切る壁を設計、という通常とは逆の流れで組み立てているからこそ可能な技だ。施工からインテリアデザインまで幅広く見識のある木村氏ならではの発想の転換といえるだろう。
 
壁にぴったり食器棚や冷蔵庫が並んでいるのではなく、
食器棚や冷蔵庫にぴったりになるように壁が設計されている

 衝撃はまだまだ続く。次回はリビング、バスルーム、パウダールームのこだわりを紹介する。(BCN・大蔵 大輔)