もう限界だ。スマホが標準。そう白旗を掲げよう
入力はキーボードに決まってる。画面の拡大はプラスボタンでいいじゃないか。WebサイトのデザインはまずPC用、スマホ用はその次。うすうす感じてはいたが、これらの考えは過去のものだ。スマホは小さくて強力なPC。それにマイクもスピーカーもカメラもGPSセンサーも加速度センサーも、ありとあらゆるセンサーを備えている。アプリ一発でこれらが起動する万能ツール。それがスマホだ。
たいていのことはスマホがあれば済んでしまう。通話やメール、Webサイトの閲覧、SNSは当然として、写真撮影や翻訳、ゲーム、ショッピングから体調管理まで。とにかく何でもこなせる。
万能ツールは昔からある。代表格は「十徳ナイフ」だ。今ではアーミーナイフと名前を変えながらしっかりと生き残っている。ナイフ、はさみ、ドライバー、のこぎり、プライヤー、ルーペに爪切り、魚のうろこ取りがついたものもある。ちょっとした小道具をコンパクトに収めた便利な一品。あらゆる状況に最小限の装備で対応できる万能ツールだ。ただ、アーミーナイフには欠点がある。小さいが故の使い勝手の悪さだ。
肉や野菜を切ることもできるから、料理にも使える。とはいえ、普段の料理にアーミーナイフを使うような物好きはいないだろう。はさみものこぎりも他のツールも同じ。機能はするがあくまでも一時的な代替品として役立つというレベルだ。一流割烹の板長が、アーミーナイフで魚を捌く姿というのは、まったく想像できない。
私にとってスマホはアーミーナイフそのものだった。確かに写真も撮れるし録音もできる。メモも取れればメールも送れてLINEもできる。ただ、写真はカメラで撮った方がいい写真が撮れるし、録音はICレコーダーを使った方が使い勝手がよく信頼性が高い。メモは紙が便利だし、メールは落ち着いてPCで書いた方がきちんと書けるし速い。と、思っていた。
ところが今やプロでも撮影にスマホを使うことがあるという。取材時にスマホでコメントを録音する記者は珍しくなくなった。JKがフリック入力を巧みに操ってLINEのやりとりをする姿は、当たり前すぎて風景の一部だ。スマホは、とっくの昔に十徳ナイフの域を超えたスーパー万能ツールに進化してしまったのだ。ある部分では。例えば、カメラを筆頭に、ICレコーダーや電子辞書、携帯オーディオプレーヤーは、日に日にスマホに浸食されている。最終的にすべてがスマホに飲み込まれてしまうのだろうか。
スマホは時間を知ることもできるが、腕時計が消えそうだという話は聞かない。スマホでテレビ視聴もできるが、テレビが消えそうだという話も聞かない。個人市場で苦戦しているPCは微妙だが、法人市場では依然活況が続いている。それどころか、スマートスピーカーなる新たな製品も登場した。スマホに「OK Google」と話しかければ済む話だが、単体の製品として売れている。今やワイヤレススピーカーの半分かそれ以上はAIスピーカーだ。自動翻訳機も人気だ。スマホでも自動翻訳機能は十分に使える。それでも単体の専用機が登場し、人気を集めている。
多くの市場を侵食しているかに見えるスマホだが、むしろ新たなデバイス市場を生み出すことすらあるわけだ。この構造に早く慣れるべきだ。特に私のようなロートルは。
40インチのスマホは存在し得ない。だからテレビは売れる。万一相手に持ち逃げされても決定的なダメージは受けない。だから翻訳機は売れる。雑音だらけの環境でもきちんと「OK Google」を聞き逃さない。だからAIスピーカーは売れる。電子デバイスは、スマホにできないことがあるからこそ、市場が生まれる。スマホの形やインターフェイスを、現代のデジタルツールの標準形としてまず考える。すると、いろんな新しい市場が見えてきそうな気がする。まずは頭の切り替えだ。(BCN・道越一郎)
たいていのことはスマホがあれば済んでしまう。通話やメール、Webサイトの閲覧、SNSは当然として、写真撮影や翻訳、ゲーム、ショッピングから体調管理まで。とにかく何でもこなせる。
万能ツールは昔からある。代表格は「十徳ナイフ」だ。今ではアーミーナイフと名前を変えながらしっかりと生き残っている。ナイフ、はさみ、ドライバー、のこぎり、プライヤー、ルーペに爪切り、魚のうろこ取りがついたものもある。ちょっとした小道具をコンパクトに収めた便利な一品。あらゆる状況に最小限の装備で対応できる万能ツールだ。ただ、アーミーナイフには欠点がある。小さいが故の使い勝手の悪さだ。
肉や野菜を切ることもできるから、料理にも使える。とはいえ、普段の料理にアーミーナイフを使うような物好きはいないだろう。はさみものこぎりも他のツールも同じ。機能はするがあくまでも一時的な代替品として役立つというレベルだ。一流割烹の板長が、アーミーナイフで魚を捌く姿というのは、まったく想像できない。
私にとってスマホはアーミーナイフそのものだった。確かに写真も撮れるし録音もできる。メモも取れればメールも送れてLINEもできる。ただ、写真はカメラで撮った方がいい写真が撮れるし、録音はICレコーダーを使った方が使い勝手がよく信頼性が高い。メモは紙が便利だし、メールは落ち着いてPCで書いた方がきちんと書けるし速い。と、思っていた。
ところが今やプロでも撮影にスマホを使うことがあるという。取材時にスマホでコメントを録音する記者は珍しくなくなった。JKがフリック入力を巧みに操ってLINEのやりとりをする姿は、当たり前すぎて風景の一部だ。スマホは、とっくの昔に十徳ナイフの域を超えたスーパー万能ツールに進化してしまったのだ。ある部分では。例えば、カメラを筆頭に、ICレコーダーや電子辞書、携帯オーディオプレーヤーは、日に日にスマホに浸食されている。最終的にすべてがスマホに飲み込まれてしまうのだろうか。
スマホは時間を知ることもできるが、腕時計が消えそうだという話は聞かない。スマホでテレビ視聴もできるが、テレビが消えそうだという話も聞かない。個人市場で苦戦しているPCは微妙だが、法人市場では依然活況が続いている。それどころか、スマートスピーカーなる新たな製品も登場した。スマホに「OK Google」と話しかければ済む話だが、単体の製品として売れている。今やワイヤレススピーカーの半分かそれ以上はAIスピーカーだ。自動翻訳機も人気だ。スマホでも自動翻訳機能は十分に使える。それでも単体の専用機が登場し、人気を集めている。
多くの市場を侵食しているかに見えるスマホだが、むしろ新たなデバイス市場を生み出すことすらあるわけだ。この構造に早く慣れるべきだ。特に私のようなロートルは。
40インチのスマホは存在し得ない。だからテレビは売れる。万一相手に持ち逃げされても決定的なダメージは受けない。だから翻訳機は売れる。雑音だらけの環境でもきちんと「OK Google」を聞き逃さない。だからAIスピーカーは売れる。電子デバイスは、スマホにできないことがあるからこそ、市場が生まれる。スマホの形やインターフェイスを、現代のデジタルツールの標準形としてまず考える。すると、いろんな新しい市場が見えてきそうな気がする。まずは頭の切り替えだ。(BCN・道越一郎)