• ホーム
  • トレンド
  • ビックカメラ、「完全ワイヤレスイヤホン」の接客カウンター導入で前年比320%の拡販効果

ビックカメラ、「完全ワイヤレスイヤホン」の接客カウンター導入で前年比320%の拡販効果

 家電量販店のイヤホン・ヘッドホン売り場で、左右分離型の完全ワイヤレスイヤホンの販売が活況だ。5月9日に新しく対面式で接客できる「ご案内カウンター」を導入したビックカメラ新宿西口店では、Bluetoothイヤホン全体の販売台数が導入前と比較した前年比で270%、金額ベースでは320%と上昇した。このうち、完全ワイヤレスイヤホンは台数で4割、金額で6割を占める稼ぎ頭だ。

完全ワイヤレスイヤホンの販売が好調なビックカメラの「ご案内カウンター」

土、日は約80台を販売

 同店オーディオコーナーの山本賢志主任は、完全ワイヤレスイヤホンの売れ行きについて「金曜日に約50台、土曜、日曜の休日では80台ほどが売れる。年齢・性別やマニア・初心者に関係なく幅広いお客様が関心を示している商品」と語る。5月下旬の平日午後2時に取材で訪れた際も、カウンター付近に10分ほどいただけで3人の顧客が購入した。その日は午前中だけで10台売れたという。
 

  全国の主要家電量販店・ネットショップの実売データを集計した「BCNランキング」でも、アップルからAirPodsが発売された2016年12月に、わずか0.5%にすぎなかった完全ワイヤレスイヤホンの販売台数構成比は、1年後には10倍の10.5%に急拡大した。17年夏以降に参入メーカーが急増し、約30社まで拡大したことが大きい。「昨年の年末商戦に一気に盛り上がった」と山本主任も手ごたえを感じている。

 ビックカメラは4月28日にラゾーナ川崎店と名古屋JRゲートタワー店で完全ワイヤレスイヤホンの「ご案内カウンター」を設置したのを皮切りに、5月に新宿西口店、6月は池袋本店や有楽町店など、順次、導入店舗を拡大する予定だ。
 
昨年の年末商戦から一気に市場が立ち上がった

 新宿西口店のカウンターは、2階の正面玄関からエスカレーターで3階に上った正面で展開。完全ワイヤレスイヤホンだけで42アイテムを取り揃える。従来は縦150cm、横90cmのガラスケース2台に展示していたが、試聴する際の商品の出し入れが不自由だったり、顧客が接客待ちするといった問題があった。

 だからといって完全ワイヤレスイヤホンは、本体に盗難防止用のケーブルをつけて通常の売り場で展開することは難しい。顧客が試聴する際の装着感が損なわれるからだ。ガラスケースは仕方のない苦肉の策だった。
 
ビックカメラ新宿西口店 オーディオコーナーの山本賢志主任

 新しい「ご案内カウンター」なら、対面で接客しながらスムーズに試聴を促せる。販売員も、鍵でガラスケースの扉を開けて展示棚を手前にスライドすれば商品を簡単に取り出せるし、横長のカウンター形式なので接客待ちも減らせる。また、通常では珍しく、売り場単独の専用レジを設置しているので、ワンストップでの買い物が可能だ。

 専用什器を用いた「ご案内カウンター」は、高級ブランド時計の売り場をイメージしてつくられたという。耳に装着する機器であるため、試聴するたびにキレイにして清潔感を保つのはもちろん、「最近はカラーバリエーションも増えてきて、見た目を気にされる方も多いので鏡を置いている」と山本主任が指摘するように、ファッションアイテムとして購入する顧客も増えている。
 
「ご案内カウンター」では鏡で装着したときの様子をチェックできる

 それ以外にも「ご案内カウンター」は、完全ワイヤレスイヤホンならではの顧客からの細かい相談に、丁寧に受け答えできるメリットがある。音質の違いはもちろん、例えば、スポーツジムで使うなら防水・防滴を気にする必要があるし、通勤や通学などで使うならバッテリの持ちやノイズキャンセリングの有無が気になる。

 カウンター式の高級腕時計売り場で長年ノウハウを蓄積してきたビックカメラの販売手法が、完全ワイヤレスイヤホンで再び開花しそうだ。(BCN・細田 立圭志)