<KeyPerson> 生活家電はデジタル家電と比較して、買い替えサイクルが長い。冷蔵庫なら「冷やす」、洗濯機なら「洗う」という特定の目的を満たせるなら、ちょっとした不満で買い替えを検討するまでには至らない。でも、このちょっとした不満がいま使っているモデルのままで解決できるとしたら?―― そんな生活家電の新しい価値を今年2月に提案したのは、日立アプライアンスだ。ソフトウェアによって“進化する家電”の本質について、2017年4月に社長に就任した徳永俊昭社長が明かした。
取材・文/大蔵 大輔、写真/松嶋 優子
徳永 もともと日立製作所の金融システム事業部にいた私に期待されているのは、家電の事業体をデジタル時代に合った形に変えていくことです。いわゆる“家電のデジタライゼーション”がミッションだと考えています。
―― 金融システムと家電ではかなり勝手が異なるように思いますが、どのように結びつくのでしょうか。
徳永 いますぐに金融システム事業の知識や要領が家電事業に生きるわけではありませんが、共通して求められるスキルはあります。まず、現代は金融にしろ家電にしろITを抜きには語れません。基本的な知識として持っていることは重要です。
また、家電開発のフローは金融システムのプロジェクトと類似しています。要件定義や基本設計といったマイルストーンをクリアしながら、お客さまに完成品を届ける。こうした一連の流れのマネジメントはこれまで培ったノウハウが生きると考えています。
―― 現在の日立アプライアンスには、デジタル家電の製品はありませんが、“家電のデジタライゼーション”とはどのようなイメージですか。
徳永 「家電がどう変わるのか」とたずねられることは多いのですが、われわれはもう少し引いたスタンスでこのデジタライゼーションに取り組んでいます。「世の中全体がデジタル化していくなかで、家電がどのような位置づけにあるのか」という視点です。例えば、これまで洗濯機は「洗う」という機能に特化していましたが、デジタル化した世界ではより高度な役割を果たすことが可能かもしれない。
方法として二つのことを考えていて、まず一つがソフトウェアによって動作が変わる「ソフトウェア・デファインド」というコンセプトです。10~20年と長く使用する白物家電ですが、機能をアップデートすることができれば、常にお客さまの暮らしに寄り添うことができます。機能の高度化ともいえますね。
もう一つが新しいエコシステムの構築です。これまで洗濯機は自宅で「洗う」機能を提供してきましたが、「洗う」が実現できれば自宅である必要はないわけです。例えば、洗濯機に外部のサービスに委託するボタンが備わっていて、「今日は自宅で洗濯する時間がない」と判断したらそれを押す。白物家電の周辺にあるサービスを巻き込むこともわれわれの仕事ではないかと思っています。
徳永 スマートフォンやインターネットと連携して新しいインターフェースを提供するという試みは便利ではありますが、そこにお客さまが付加価値を感じているかという難しいところです。機能があることで価格が高くなるなら「いりません」と答える方は相当多いのではないでしょうか。
―― ソフトウェア・デファインドは、ソフトウェアによって利便性を現在より一段高めるための手段ですが、これにはソフトウェアだけでなくハードウェアの設計も変えていく必要がありますよね。
徳永 ご指摘の通り、われわれが目指す生活に寄り添ったソフトウェアの利便性には、ハードウェアを見直すことも不可欠です。まだ具体的には申し上げられないのですが、ソフトウェアのアップデートによって動作が変わるように、ハードそのものの設計を最適化していく必要はあると考えています。
―― 販売現場ではどのような訴求が有効になってきますか。
徳永 日立の「進化する家電」がいかにお客さまの生活にメリットをもたらすかを伝えていただきたいですね。白物家電は長く使用するものですが、生活のスタイルは刻々と変化していきます。変化する生活スタイルに、そのときどきでマッチできるというメッセージをぜひ伝えていただきたい。年度内には2~3商品の新たなコンセプトにもとづく家電を披露できると思います。楽しみにしていてください。
取材・文/大蔵 大輔、写真/松嶋 優子
目指すのは“家電のデジタライゼーション”
―― 2017年4月に社長に就任し、約1年が経過しました。徳永 もともと日立製作所の金融システム事業部にいた私に期待されているのは、家電の事業体をデジタル時代に合った形に変えていくことです。いわゆる“家電のデジタライゼーション”がミッションだと考えています。
―― 金融システムと家電ではかなり勝手が異なるように思いますが、どのように結びつくのでしょうか。
徳永 いますぐに金融システム事業の知識や要領が家電事業に生きるわけではありませんが、共通して求められるスキルはあります。まず、現代は金融にしろ家電にしろITを抜きには語れません。基本的な知識として持っていることは重要です。
また、家電開発のフローは金融システムのプロジェクトと類似しています。要件定義や基本設計といったマイルストーンをクリアしながら、お客さまに完成品を届ける。こうした一連の流れのマネジメントはこれまで培ったノウハウが生きると考えています。
―― 現在の日立アプライアンスには、デジタル家電の製品はありませんが、“家電のデジタライゼーション”とはどのようなイメージですか。
徳永 「家電がどう変わるのか」とたずねられることは多いのですが、われわれはもう少し引いたスタンスでこのデジタライゼーションに取り組んでいます。「世の中全体がデジタル化していくなかで、家電がどのような位置づけにあるのか」という視点です。例えば、これまで洗濯機は「洗う」という機能に特化していましたが、デジタル化した世界ではより高度な役割を果たすことが可能かもしれない。
方法として二つのことを考えていて、まず一つがソフトウェアによって動作が変わる「ソフトウェア・デファインド」というコンセプトです。10~20年と長く使用する白物家電ですが、機能をアップデートすることができれば、常にお客さまの暮らしに寄り添うことができます。機能の高度化ともいえますね。
もう一つが新しいエコシステムの構築です。これまで洗濯機は自宅で「洗う」機能を提供してきましたが、「洗う」が実現できれば自宅である必要はないわけです。例えば、洗濯機に外部のサービスに委託するボタンが備わっていて、「今日は自宅で洗濯する時間がない」と判断したらそれを押す。白物家電の周辺にあるサービスを巻き込むこともわれわれの仕事ではないかと思っています。
ハードの見直しも不可欠 根本から新しい家電を設計
―― 白物家電のソフトウェアについては、スマートフォンやネットワーク連携などで他社も開発を進めていますが、まだユーザーには浸透していないように見受けられます。徳永 スマートフォンやインターネットと連携して新しいインターフェースを提供するという試みは便利ではありますが、そこにお客さまが付加価値を感じているかという難しいところです。機能があることで価格が高くなるなら「いりません」と答える方は相当多いのではないでしょうか。
―― ソフトウェア・デファインドは、ソフトウェアによって利便性を現在より一段高めるための手段ですが、これにはソフトウェアだけでなくハードウェアの設計も変えていく必要がありますよね。
徳永 ご指摘の通り、われわれが目指す生活に寄り添ったソフトウェアの利便性には、ハードウェアを見直すことも不可欠です。まだ具体的には申し上げられないのですが、ソフトウェアのアップデートによって動作が変わるように、ハードそのものの設計を最適化していく必要はあると考えています。
―― 販売現場ではどのような訴求が有効になってきますか。
徳永 日立の「進化する家電」がいかにお客さまの生活にメリットをもたらすかを伝えていただきたいですね。白物家電は長く使用するものですが、生活のスタイルは刻々と変化していきます。変化する生活スタイルに、そのときどきでマッチできるというメッセージをぜひ伝えていただきたい。年度内には2~3商品の新たなコンセプトにもとづく家電を披露できると思います。楽しみにしていてください。