ファーウェイ、「P20 Pro」でキャリア端末の復活なるか
【日高彰の業界を斬る・8】 3月27日、ファーウェイ・テクノロジーズはスマートフォンの新製品「Huawei P20」シリーズを発表した。カメラ性能でライバル機を圧倒する「P20 Pro」などが登場したが、日本のユーザーにとって気になるのは、これらの機種が国内市場でどのように展開されるのかだ。
この性能は、P20では1/2.3インチ、P20 Proでは1/1.7インチという、スマートフォンとしては大型のセンサ(撮像素子)を搭載したこと、さらにP20 Proではトリプルカメラ構成を採用したことによってもたらされたが、それに加えて、機械学習をベースとしたソフトウェア技術も高画質化に大きく貢献しているとみられる。「スマートフォンの価値をAIで高める」というコンセプトを、一般消費者にわかりやすく伝えている点でも意欲的な製品だ。
フランス・パリで開催された製品発表会は、インターネットで世界に同時配信されていた。筆者もこれを視聴していたが、配信画面のコメントやSNSの投稿などをみた限り、必ずしもP20シリーズの前評判は高くなかったように思う。「トリプルカメラ搭載のハイエンドモデル」という内容自体は事前に漏れ聞こえていたため、それ自体に驚きはなかったし、iPhone X以来多くのメーカーが採用する、ノッチ(切り込み)付きディスプレイにファーウェイも追随したことには、世界のユーザーから失望のコメントが相次いでいた。
しかし、DxOMarkのスコアが明らかになるとその空気は一変。発表会後ほどなくして、実際に製品で撮影した画像が内外で紹介されるようになると、iPhone Xすら霞むカメラ性能をもつ機種という評価が形成されていった。
世界のスマートフォン市場で3位につけ、2位アップルとの差を詰めつつあるファーウェイとはいえ、10万円を超える端末を日本市場で売りさばいていくのは容易ではないだろう。P20 Proについては、大手携帯電話会社向けの「キャリアモデル」が登場することも十分考えられる。
携帯の大手3社はファーウェイ製品を主にタブレットやデータ通信端末で採用しており、スマートフォンの展開は久しく消極的だったが、今年1月に「nova 2」がKDDIから発売されたように、再びその距離は縮まりつつある。P20 Proはファーウェイ製品で数少ない防水モデルであることからも、日本市場との親和性は高い。
加えて、同社の戦略がしたたかだと感じられるのは、華々しい発表会で「最強のカメラ携帯」という評価を固めるのと同時に、普及価格帯の製品とみられる「P20 lite」を、ひっそりと製品ラインナップに加えていることだ。こちらはプレスリリースなどの形では発表されておらず、ウェブサイトの製品一覧にいつの間にか追加されていた。
昨年、ファーウェイが日本市場でシェアを獲得するのに大きく貢献したのが、良好なカメラ性能と薄型デザインを備えながら、価格を約3万円に抑えた「P10 lite」だった。同社はエントリー機の「nova lite 2」から実売9万円前後の「Mate 10 Pro」まで幅広いラインアップを揃えているが、家電量販店の店頭などで聞くと、現在でも販売数量のうち圧倒的多数を占めるのはP10 liteだという。
P20 Proが国内で発売されれば、当然P20 liteにも注目が集まるだろう。ガジェットファンの間ではP20 Proが高い評価を得ると考えられるが、それと同時に、量販店の店頭や、MVNOなどを通じた販売では、P10 liteの後継にあたるP20 liteが“台風の目”になるに違いない。P20シリーズは、キャリアモデルとSIMフリーモデルの両面展開で日本市場を攻略する、同社の戦略のひとつの完成形となるのだろうか。(BCN・日高 彰)
カメラスコアの最高記録を大きく更新
業界でも影響力のあるカメラ性能評価サイト「DxOMark」で、新製品の「P20」は102点、「P20 Pro」は109点の高得点となった。もちろん、これらのスコアはDxOMarkによるテスト範囲内であり、すべての撮影場面でP20シリーズが他社製品を上回ることを保証するものではない。ただ、これまで各社がハイエンド機種を発売しても、スコアの更新幅はせいぜい2~3点だったのに対し、P20 Proは、サムスンが2月に発表したばかりのGalaxy S9+をいきなり10点も超えてきた。傑出したカメラ性能をもつ製品であることは間違いないだろう。この性能は、P20では1/2.3インチ、P20 Proでは1/1.7インチという、スマートフォンとしては大型のセンサ(撮像素子)を搭載したこと、さらにP20 Proではトリプルカメラ構成を採用したことによってもたらされたが、それに加えて、機械学習をベースとしたソフトウェア技術も高画質化に大きく貢献しているとみられる。「スマートフォンの価値をAIで高める」というコンセプトを、一般消費者にわかりやすく伝えている点でも意欲的な製品だ。
フランス・パリで開催された製品発表会は、インターネットで世界に同時配信されていた。筆者もこれを視聴していたが、配信画面のコメントやSNSの投稿などをみた限り、必ずしもP20シリーズの前評判は高くなかったように思う。「トリプルカメラ搭載のハイエンドモデル」という内容自体は事前に漏れ聞こえていたため、それ自体に驚きはなかったし、iPhone X以来多くのメーカーが採用する、ノッチ(切り込み)付きディスプレイにファーウェイも追随したことには、世界のユーザーから失望のコメントが相次いでいた。
しかし、DxOMarkのスコアが明らかになるとその空気は一変。発表会後ほどなくして、実際に製品で撮影した画像が内外で紹介されるようになると、iPhone Xすら霞むカメラ性能をもつ機種という評価が形成されていった。
初の10万円超え機種、日本でどう売るか
一方、P20 Proは899ユーロ(約11万8000円)と、その価格も同社製品としては過去に類を見ない水準となっている。日本のSIMフリースマートフォン市場で強い勢いを保っているファーウェイだが、国内において、10万円超えのSIMフリー端末は最新のiPhoneを除いて存在しない。世界のスマートフォン市場で3位につけ、2位アップルとの差を詰めつつあるファーウェイとはいえ、10万円を超える端末を日本市場で売りさばいていくのは容易ではないだろう。P20 Proについては、大手携帯電話会社向けの「キャリアモデル」が登場することも十分考えられる。
携帯の大手3社はファーウェイ製品を主にタブレットやデータ通信端末で採用しており、スマートフォンの展開は久しく消極的だったが、今年1月に「nova 2」がKDDIから発売されたように、再びその距離は縮まりつつある。P20 Proはファーウェイ製品で数少ない防水モデルであることからも、日本市場との親和性は高い。
加えて、同社の戦略がしたたかだと感じられるのは、華々しい発表会で「最強のカメラ携帯」という評価を固めるのと同時に、普及価格帯の製品とみられる「P20 lite」を、ひっそりと製品ラインナップに加えていることだ。こちらはプレスリリースなどの形では発表されておらず、ウェブサイトの製品一覧にいつの間にか追加されていた。
昨年、ファーウェイが日本市場でシェアを獲得するのに大きく貢献したのが、良好なカメラ性能と薄型デザインを備えながら、価格を約3万円に抑えた「P10 lite」だった。同社はエントリー機の「nova lite 2」から実売9万円前後の「Mate 10 Pro」まで幅広いラインアップを揃えているが、家電量販店の店頭などで聞くと、現在でも販売数量のうち圧倒的多数を占めるのはP10 liteだという。
P20 Proが国内で発売されれば、当然P20 liteにも注目が集まるだろう。ガジェットファンの間ではP20 Proが高い評価を得ると考えられるが、それと同時に、量販店の店頭や、MVNOなどを通じた販売では、P10 liteの後継にあたるP20 liteが“台風の目”になるに違いない。P20シリーズは、キャリアモデルとSIMフリーモデルの両面展開で日本市場を攻略する、同社の戦略のひとつの完成形となるのだろうか。(BCN・日高 彰)