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LINE Pay・長福久弘COO「日本は決してキャッシュレス後進国ではない」

インタビュー

2018/02/23 15:31

 「中国ではコンビニからタクシー、屋台まで、今や何でもQRコードで払える」というニュースは、2016年頃から何度も繰り返し報じられてきた。しかし、日本にはSuicaやおサイフケータイをはじめとする独自の非現金支払手段がすでに数多く存在し、キャッシュレス決済自体は珍しいものではない。LINE Payが新たなキャッシュレスの仕組みとして日本市場に食い込む余地は、どこにあるのだろうか。

取材・文/日高 彰、写真/大星直輝

<他の決済事業も競合ではなくパートナー>から読む
 

LINE Payの長福久弘取締役COO

―― そもそも論になってしまいますが、ほとんどの日本の消費者はクレジットカードや交通系ICカードなど、何らかのキャッシュレス決済手段をすでに持ち歩いています。そこへさらにバーコードや二次元コードを使用したモバイル決済が入り込む余地はあるのでしょうか。

長福 まさにその通りで、「中国ではスマホでどこでも払える。すごいすごい」といわれていますが、日本に帰ってきてみれば電車に乗るのはICカードがあたりまえで、それが自販機でもコンビニでも使えるわけですから、実はキャッシュレス化自体は進んでいると思います。ただ、各種カード決済がようやく25%前後といわれている中で、まだまだ取りきれていない層があると考えています。そしてキャッシュレス決済の中で圧倒的に便利なのは、モバイル決済だと考えています。

―― 日本では中国ほどのキャッシュレス需要がないのではという指摘もあります。

長福 中国でモバイル決済が普及した背景として、ニセ札の横行や、一般流通する高額紙幣が100元(約1700円)までといった点が語られており、対して日本では現金の信頼性・使い勝手が高いといわれています。しかし、少なからぬ消費者がすでにクレジットカードを始めとする現在のキャッシュレス決済手段に利便性を感じていて、さらにカードすら持ち歩かなくていい、スマートフォン1台で生活できるということであれば、そういう手段に対するニーズは必ずあると考えています。
 

LINE Payのプロモーションに力を入れている

―― 中国のキャッシュレス決済普及においては、アカウントにお金をチャージすると高額なボーナスがもらえるといった、インパクトのあるキャンペーンでユーザーを獲得していた時期もありましたが、同様の施策を打つ考えは。

長福 その意味では、LINE Payカードのポイント2%還元や、昨年末から年始にも行った「LINEのお年玉」キャンペーンなど、実はこの1年ほど、LINE Payのプロモーションにはかなりの費用を投入してきました。そのこともあって、ユーザー数を3000万まで増やすことができました。3000万という数字は他の決済サービスと比較しても圧倒的な規模ですので、打ってきた施策は成功だったと思っています。
 

打ってきた施策に手応えも感じているという

―― 母数は一定の規模に達したので、次は利用を促進していく段階に入ったと。

長福 2018年に関しては、使えるお店を増やしていくこと、中でもわれわれは「オフライン」といういい方をしていますが、実店舗で使えるところを増やすことに注力していきます。なぜオフラインが重要になるかというと、やはりLINE Payを生活の中でしっかり使えるサービスにしていきたいからです。今年は3か月くらいの単位で市場が大きく変化していくと思っています。今こうして私がお話ししている温度感と、6月、9月ではかなり状況が変わって、年末に振り返ると「今年はモバイル決済が本当に来ましたね」といわれるようになる、と考えています。

―― 普及が徐々に進んでいる実感はありますが、そこまでの状況はまだなかなか想像できません。

長福 昨年の3000万ユーザー獲得がなければ、私もここまでいうことはできなかったと思います。また、キャッシュレス化にあたって国の後押し(※)があるのも非常に重要な点で、今までとこれからではまったく状況が変わってくると考えています。

 出すべきサービスも短いスパンで変わっていくと思いますが、われわれはLINEを国内7300万ユーザーまで育ててきた実績があり、サービスが普及するスピードはよく理解していますので、段階にあわせた戦略をうまく出しながら、LINE Payを成長させていきます。

※2017年6月に閣議決定された政府の新成長戦略「未来投資戦略2017」ではキャッシュレス化の推進が明記され、10年間(2027年6月まで)でキャッシュレス決済比率を倍の4割程度とする数値目標が設定された。