家電量販店の他店対抗チラシから考えた、販促の未来

オピニオン

2018/02/14 19:00

 折り込みチラシや無料の地域情報誌についている割引クーポンは、見た瞬間はトクだと感じても、使わないまま有効期限が過ぎてしまうことが多い。一方、オンラインショップの「タイムセール」やオンラインクーポンは頻繁に利用している。インターネット通販の隆盛の要因の一つには、こうした従来の販促ツールの効果低下もあるだろう。

普段とは違うチラシが入った時こそ狙い目

 新聞はだいぶ前に購読をやめたが、地域の情報が知りたくて、新聞折り込みチラシだけを個々にポストに届ける「チラッシュ」というサービスを利用している。

 昨年の12月、地元にあるケーズデンキ店舗の2色刷りチラシが入っていた。そこには「税別●万円以上の商品購入で●円引き」といった切り取り式のクーポンがずらりと並んでいた。

 翌週、ほとんど同じ体裁のチラシが入っていた。今度は地元のヤマダ電機店舗のチラシだ。どちらも紙質の低い色紙に黒と赤のインクを使った2色刷りだったので、おそらく店舗独自のチラシだろう。後から届いたヤマダ電機のクーポン付きチラシは、ケーズデンキに対抗するために急きょ、撒いたものだと思われる。
 

自宅の郵便受けに入っていたケーズデンキとヤマダ電機の折り込みチラシ(左からケーズデンキ、ヤマダ電機)

 一般的に、折り込みチラシの用紙サイズは、セールの規模と比例する。つまり、サイズが大きいほど、力を入れているセールとなる。また、たいていの場合、そのエリアの主力店舗と周辺の中古型店舗の分を同時に印刷しており、内容は共通だ。

 一方、通常のフルカラーのチラシとは別に入る、単色刷りや2色刷りのチラシは、季節限定セールや販売のテコ入れで行う臨時キャンペーンなどの訴求なので、在庫限りの型落ち品を探しているなら、こちらをチェックしたほうがいい。

紙のクーポンは面倒 アプリも実は意外に面倒

 しかし、以前に比べ、折り込みチラシをきっかけに店に行ったり、クーポンを使ったりする頻度は減ってきた。使わなくなった要因を分析すると、紙のクーポンを切る、サイフに入れる、出すという一連の行為が面倒だからだと気づいた。

 2014年頃から小売業界で注目を集めているマーケティング関連のキーワード「オムニチャネル」とは、店舗やイベント、インターネットなどのチャネルを問わず、あらゆる場所で顧客と接点をもち、統一した顧客情報をもとにリアル店舗、オンラインショップの両方への集客を図り、拡販を目指すという考え方や戦略を指す。クーポンはその鍵を握るが、最近の傾向をみると、圧倒的に「つながる」ためのハードルが低く、使う際もクーポン画面を見せるだけと便利な店舗向け「LINE@(ラインアット)」に集約されつつある気がする。
 

LINEで企業・店舗と友だちになるとクーポンやメッセージが届く

 一部のオンラインショップのクーポンは、カートに商品を入れて決済すると自動的に適用され、とても使いやすい。しかし、クーポンコードを手入力する方式や、リアル店舗で買い物時にアプリ画面やメールを見せる方式のオンラインクーポンは不便だ。

 クーポンを使うならオンライン購入、使わないなら実店舗という使い分けが進むと、オムニチャネル化の目的は達成できても、店舗経営はますます難しくなる。実店舗は、試着・試食するだけのショールームとなるからだ。5年後、10年後、はたして紙の販促チラシは残るのか。「LINE@」のビジネス利用の可能性については、改めて紹介したい。(BCN・嵯峨野 芙美)