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スマートウォッチの活路はアウトドア? カシオが突き進む独自路線

販売戦略

2018/02/09 19:00

 近未来感が漂う風貌で期待度が高かったリストバンド型のウェアラブルデバイスだが、市場の成長速度は鈍い。要因は多々あるが、スマートフォンとの差異化を明確にできなかったことは大きいだろう。そんな市場の閉塞感を打ち破るべく、カシオ計算機が打ち出したのが「スマホが使用できない状況下でも機能する」というコンセプトだ。2月8日には「Smart Outdoor Watch」シリーズの海外アプリ企業9社とのパートナーシップ連携を発表した。


「Smart Outdoor Watch」シリーズが海外アプリ9社と提携
(写真はカシオとグーグル、アプリ提供企業の代表者)

スマートフォンは不要 スタンドアローンであることが基準

 「Smart Outdoor Watch」シリーズは、2017年4月に発売したAndroid Wearを採用するGPS搭載のスマートウォッチ。耐久性にすぐれる「G-SHOCK」のエッセンスを継承しつつ、GPSによる「地図機能」にフォーカスすることで独自の立ち位置を獲得している。
 

2017年4月に発売した「PRO TREK Smart WSD-F20」

 今回の連携アプリは、スマホを介さずスタンドアローンで機能することが基準になっている。発表されたのは、「ViewRanger(トレッキング)」「HOLE19(ゴルフ)」「GLASSY Surf Report(サーフィン)」「Ski Tracks(スキー・スノーボード)」「FISHBRAIN(釣り)」「MySwimPro(水泳)」「EQUILAB(乗馬)」「Exercise Timer(エクササイズ)」「Zombies, Run!(ストーリーラン)」の9アプリだ。
 

 分かりやすい例をいくつか紹介する。まず、ポルトガルのHOLE19社が開発した、ゴルファー向けの「HOLE19」。すでに世界中に120万人のユーザーを抱える人気アプリで、世界中の約98%のゴルフコース情報を収録し、GPSで現在地からグリーンのフロント、センター、バックまでの距離を表示する。
 

ゴルフのサポートに特化した「HOLE19」

 スウェーデンのFishbrainAB社が開発した「FISHBRAIN」の用途は釣り。過去の数百万の釣果にもとづく釣りどき予測や、現地で釣れた魚種などの膨大なデータを腕元で確認できる。こちらは500万人のユーザーからなる世界最大の釣りコミュニティという地位を確立している。
 

世界中の釣りに関する情報を網羅する「FISHBRAIN」

 それぞれのアクティビティに最適化されたサポートアプリが大多数だが、なかには「Zombies, Run!」のようなユニークなものもある。英国のSIX TO START社が開発したランニングアプリで、ランニングの距離によって音声で流れるストーリーが進行し、ランニングを盛り上げる。スマホを介さないスタンドアローンでも、エンタテインメント性を象徴する存在だろう。
 

ストーリーランという発想がユニークな「Zombies, Run!」

目指すはスマートウォッチでNo.1 複数企業の連携がカギ

 カシオの中村寛副社長 執行役員は「一時のブームで終わるのではないか、という声も聞かれるが、われわれはスマートウォッチの未来を信じている」と、今後も継続して注力する考えを表明。「スマートウォッチでNo.1を目指す。普及にはプラットフォーマー・アプリ提供企業・ハードメーカーが同じ方向性を共有する必要がある」と、役割に応じた協力体制の必要性を訴えた。
 

「スマートウォッチでNo.1を目指す」と宣言した中村寛副社長 執行役員

 スマートウォッチの中では、カシオが展開するGPSスポーツ端末の構成比はまだ低い。しかし、スマートウォッチユーザーはアーリーアダプターから明確な目的をもつユーザーへと移行してきており、拡大の余地は大きいとみられる。先端ガジェットとしてではなく、ゴルフのクラブやウェア、シューズのようにスポーツに欠かせないアイテムと認識されれば花開く可能性は十分にあるだろう。(BCN・大蔵 大輔)