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最新「インバウンド」を読み解く、拡大する「外需」消費の行方(後編)

オピニオン

2018/01/31 16:00

 前編では、訪日外国人旅行者数の伸びや消費額などの数字とともに、「モノからコト」の変化にいち早く敏感に反応したラオックスの取り組みを紹介した。インバウンドビジネスの変化を裏づける数字を、もう少し細かくみていこう。(BCN・南雲 亮平)

娯楽サービスの購入率が伸び、「免税改正」は物販にも波及

 全国籍・地域を含む種類別の購入率・購入者単価率の推移(図5)では、衣料品・健康グッズ・トイレタリーと化粧品・香水、そして娯楽サービスが人気ジャンルだ。購入率に注目すると、前述の3項目は成長しているが、相対的に単価が高いカメラ・ビデオカメラ・時計や電気製品は伸び悩んでいる。

 娯楽サービス費の購入率の伸びについて、観光庁 観光戦略課 観光経済調査室の赤井久宣室長は「この流れは今後も続いてほしい」と語る。「コト消費」を増大させて訪日外客がさらに増えれば、連動して物品購入への波及効果が期待できるからだ。その際、手間なくスマートに買い物ができる仕組みを整える必要がある。
 

 政府が進めるのは免税制度の見直しだ。国土交通省(観光庁)が発表した「平成30年度税制改正」では、「外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充」が決定。18年7月1日から実施される。現在の制度では「一般物品」と「消耗品」のそれぞれで下限額(5000円以上)の要件を満たす必要がある。ところが、訪日旅行客からは商品購入時に2種目の判別が難しいなどの不満が相次いでいるという。
 

 そこで解決策として編み出されたのが、「一般物品」にも特殊包装を行うなどの条件を満たすことで、2種目の合算を認める措置をとる、というものだ。免税店からは「合算が認められれば『買い増し』が期待できる」と歓迎の声が上がったことも、制度の拡充を推し進めた一因だ。

 免税手続きの改善も進める。現行の制度では、免税店で旅券に購入記録票を貼りつけ、割印を受けることが免税販売の要件になっている。安く買い物ができる一方で、「記録票だらけでパスポートが分厚くなった」などの声が多数出ており、記録票がさらに増えれば破れたりはがれたりするリスクも高くまる。免税店側としても、手続きするための人材と時間の確保が悩みだ。

 双方の要望を反映した結果、「免税販売情報の電磁記録による提出」を免税販売の要件にするという措置が考案された。あわせて、記録票を税関に提出する義務も、提示義務に代えられる。

 観光戦略課係長 兼 免税制度推進チームの樋口泰三氏は「以前より免税店の許可は受けやすい。外国語を話せる従業員が常駐していなくても、案内図の表記やコミュニケーション用のボードを用意するなど、必要条件のハードルは低くなっている。免税店は、これからさらに増えていくでしょう」と展望する。18年の現在の状況を読み解くと、「爆買い」の反動時に「インバウンドビジネスは終わった」と喧伝された15年は緒戦にすぎず、本番はこれからなのだと期待できる。
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2018年2月号から転載