2016年10月20日の深夜、今年大いに話題となった製品が発表された。17年3月3日に発売した任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」だ。新しいコンセプトに加え、人気ソフトが続々と登場し注目を集めたが、発売当初から品薄状態が続いていることも認知度を高める一因になった。売る側も買う側も苦心した一年弱を、簡単に振り返ってみる。
据え置き機と携帯型ゲーム機の両方の機能を搭載する家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」
任天堂は当初、「NX」という社内開発コードネームのゲーム専用機を開発中であると公表していたが、16年10月に正式名称を「Nintendo Switch」に決定したと発表した。ニンテンドースイッチは、テレビなど自宅のモニタとHDMIケーブルで接続した「Nintendo Switchドック」に接続すればモニタに映像を出力、取り外せば本体の画面に映像を出力する新型の家庭用ゲーム機として登場した。
2017年1月13日に東京ビッグサイトで開催された発表会で「Switch」の魅力を語った君島達己取締役社長
予約受付を開始した1月21日の「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」には、非常に寒い日だったにもかかわらず多くの購入希望者が集まった。初日こそ行列ができたものの、予約受付期間中のニンテンドースイッチの注目度は今より低く、苦労して並ばずとも予約ができた。
予約受付開始当日、「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」前に並んだ消費者に配布されたプリント
3月3日の発売日からは状況が一変。当日販売分は即完売、予約者の受け取りにも早朝から行列ができるほどの盛り上がりを見せた。一方で、発売から間を置かずにオンラインストアや一部店舗で中古のニンテンドースイッチが販売され始め、各所で議論を呼んだ。
発売日当日のビックカメラ池袋本店の様子。9時時点で約400名が店舗内外に列をつくった
取扱店は発売後、毎週末に開催する抽選会や不定期の緊急入荷、オンラインストアでの予約受付といった購入手段を展開するものの、どの施策も開始と同時に消費者が殺到。オンライン予約は回線の混雑で接続が安定せず、緊急入荷の有無にかかわらず並んでいなければ間に合わず、抽選会は100分の1程度の大変な幸運に恵まれない限り購入できない状況が続いた。
「マイニンテンドーストア」への接続が困難であることを告知する画面。
中央の絵は一部で「ニンゴジラ」と呼ばれている
ところが、新品のニンテンドースイッチが販売されるたびに一部のオンラインストアや中古品取扱店で、通常価格よりも高値で中古品の取引が増えていった。同時に、いわゆる「転売」目的の購入者に対する批判は高まっていく。
発売から半年が経とうとする8月26日の早朝にも行列ができた(東京・秋葉原のビックカメラ AKIBA)
状況を重くみた任天堂は、6月22日に『「Nintendo Switch本体」品薄のお詫びとお知らせ』を同社のWebサイトへ掲載。秋以降に生産体制を強化する旨を告知した。8月22日からは任天堂の公式オンラインストア「マイニンテンドーストア」でも、10月以降に届くニンテンドースイッチの予約受付を開始した。時間はかかるが確実に入手できる方法として期待されたが、アクセスの集中で接続できない。ついには年の瀬に入る前から、「マイニンテンドーストア」での購入ではクリスマスプレゼントに間に合わない事態に陥った。
「Nintendo Switch Customize」予約受付開始の告知
12月10日には全世界における累計販売台数が1000万台を超えた。任天堂は「ビデオゲームをプレイする場所やプレイスタイルを多様化することで、発売時から世界中のお客様にご評価をいただきました」と理由について言及。いまだに店舗前に行列ができるほど在庫が十分とはいえない状況については、「12月は国内向けにこれまで以上の出荷を計画しており、さらに多くのお客様にお買い求めいただけるよう努めてまいります」とコメントしている。
Nintendo Switchの発売初日、2017年3月3日午前7時前の「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」
また、10月30日に任天堂が発表した18年3月期第2四半期(17年4月~9月)の連結業績では、専用ソフトの「Splatoon 2(スプラトゥーン 2)」が国内外で人気となり、全世界で361万本の販売を記録したと公表。ソフトウェアの販売本数は合計で2202万本になった。ゲーム機、ソフトウェアともに好調な売れ行きを背景に、18年3月期はニンテンドースイッチの販売台数予想を当初の1.4倍の1400台に修正した。
ニンテンドースイッチの新品は、一年を通して十分に消費者の手に渡ったとは言い難い。12月現在も、各オンラインストアで突発的に販売されるが、すぐに在庫切れになってしまう。対して、中古品は通常価格以上の値段に設定され、在庫が豊富にあり続ける。販売店としては、購入者の属性に問わず売り上げがアップするチャンスかもしれないが、消費者からの批判の的になる前に何らかの対策を立てる必要があるのかもしれない。(BCN・南雲 亮平)
据え置き機と携帯型ゲーム機の両方の機能を搭載する家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」
任天堂は当初、「NX」という社内開発コードネームのゲーム専用機を開発中であると公表していたが、16年10月に正式名称を「Nintendo Switch」に決定したと発表した。ニンテンドースイッチは、テレビなど自宅のモニタとHDMIケーブルで接続した「Nintendo Switchドック」に接続すればモニタに映像を出力、取り外せば本体の画面に映像を出力する新型の家庭用ゲーム機として登場した。
2017年1月13日に東京ビッグサイトで開催された発表会で「Switch」の魅力を語った君島達己取締役社長
予約受付を開始した1月21日の「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」には、非常に寒い日だったにもかかわらず多くの購入希望者が集まった。初日こそ行列ができたものの、予約受付期間中のニンテンドースイッチの注目度は今より低く、苦労して並ばずとも予約ができた。
予約受付開始当日、「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」前に並んだ消費者に配布されたプリント
3月3日の発売日からは状況が一変。当日販売分は即完売、予約者の受け取りにも早朝から行列ができるほどの盛り上がりを見せた。一方で、発売から間を置かずにオンラインストアや一部店舗で中古のニンテンドースイッチが販売され始め、各所で議論を呼んだ。
発売日当日のビックカメラ池袋本店の様子。9時時点で約400名が店舗内外に列をつくった
取扱店は発売後、毎週末に開催する抽選会や不定期の緊急入荷、オンラインストアでの予約受付といった購入手段を展開するものの、どの施策も開始と同時に消費者が殺到。オンライン予約は回線の混雑で接続が安定せず、緊急入荷の有無にかかわらず並んでいなければ間に合わず、抽選会は100分の1程度の大変な幸運に恵まれない限り購入できない状況が続いた。
「マイニンテンドーストア」への接続が困難であることを告知する画面。
中央の絵は一部で「ニンゴジラ」と呼ばれている
ところが、新品のニンテンドースイッチが販売されるたびに一部のオンラインストアや中古品取扱店で、通常価格よりも高値で中古品の取引が増えていった。同時に、いわゆる「転売」目的の購入者に対する批判は高まっていく。
発売から半年が経とうとする8月26日の早朝にも行列ができた(東京・秋葉原のビックカメラ AKIBA)
状況を重くみた任天堂は、6月22日に『「Nintendo Switch本体」品薄のお詫びとお知らせ』を同社のWebサイトへ掲載。秋以降に生産体制を強化する旨を告知した。8月22日からは任天堂の公式オンラインストア「マイニンテンドーストア」でも、10月以降に届くニンテンドースイッチの予約受付を開始した。時間はかかるが確実に入手できる方法として期待されたが、アクセスの集中で接続できない。ついには年の瀬に入る前から、「マイニンテンドーストア」での購入ではクリスマスプレゼントに間に合わない事態に陥った。
「Nintendo Switch Customize」予約受付開始の告知
12月10日には全世界における累計販売台数が1000万台を超えた。任天堂は「ビデオゲームをプレイする場所やプレイスタイルを多様化することで、発売時から世界中のお客様にご評価をいただきました」と理由について言及。いまだに店舗前に行列ができるほど在庫が十分とはいえない状況については、「12月は国内向けにこれまで以上の出荷を計画しており、さらに多くのお客様にお買い求めいただけるよう努めてまいります」とコメントしている。
Nintendo Switchの発売初日、2017年3月3日午前7時前の「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」
また、10月30日に任天堂が発表した18年3月期第2四半期(17年4月~9月)の連結業績では、専用ソフトの「Splatoon 2(スプラトゥーン 2)」が国内外で人気となり、全世界で361万本の販売を記録したと公表。ソフトウェアの販売本数は合計で2202万本になった。ゲーム機、ソフトウェアともに好調な売れ行きを背景に、18年3月期はニンテンドースイッチの販売台数予想を当初の1.4倍の1400台に修正した。
ニンテンドースイッチの新品は、一年を通して十分に消費者の手に渡ったとは言い難い。12月現在も、各オンラインストアで突発的に販売されるが、すぐに在庫切れになってしまう。対して、中古品は通常価格以上の値段に設定され、在庫が豊富にあり続ける。販売店としては、購入者の属性に問わず売り上げがアップするチャンスかもしれないが、消費者からの批判の的になる前に何らかの対策を立てる必要があるのかもしれない。(BCN・南雲 亮平)