【コンシューマPC業界座談会 2017】体験型の売場づくりに試行錯誤
【コンシューマPC業界座談会 2017】 小学生が将来就きたい職業の1位に「YouTuber」が挙がった。夏休みの学校で開催されたプログラミング教室がすぐに定員オーバーになるなど、世の中ではPCに関するイベントが盛り上がっている。だが、コンシューマPC業界がその波に乗り切れないのはなぜか。売り場でのコト提案は進んだのか。本音ベースの議論が続いた。
■売り場の「コト提案」は進んだか
将来見据えて「小学生」に種まき
<参加企業一覧>
https://www.bcnretail.com/market/detail/20171006_43642.html
「PCは何でもできてしまうがゆえにコト提案が難しい商品ジャンルだ」という出席者の意見が象徴するように、思い切ったターゲティングが難しいところに、コンシューマPC売り場でのコト提案が足踏みしている状況がある。
SNSやメール、インターネット閲覧といったわかりやすいシンプルなメッセージは、スマホに奪われてしまい、「PCは何をするツールか」という基本に立ち返るべきだという声も出た。単なるウェブ閲覧や音声認識だけではなく、生産性や効率を高めるためのツールであることを踏まえると、一点に絞って訴求してしまうと、それにマッチしない顧客をミスリードしてしまう可能性もあり、メーカーとしてもなかなか決め打ちができない。
販売サイドからは「動画編集をしましょうと言い続けてきた結果が今の状況なので、いっそのこと、発想の違う異業種のアイデアを取り入れたほうがうまくいくかもしれない」と、売り場の在り方に限界すら感じさせる発言も出た。
「極端なことを言えば『脱PC売り場』を目指してほしい。例えば、孫のランドセルを購入しに来た祖父母向けに、エッジの効いたプログラミング用のノートPCを提案するといった取り組みだ」と、現在の売り場を分解して、イベントや情報を発信するストーリーごとに、商品を組み合わせる売り場づくりも提案された。
試行錯誤している時間はないという見解も出た。「スマートスピーカーの販売がスタートすれば、必然的にクロモノと白物の垣根を越えた売り場が求められるだろう」と、コト提案の売り場づくりは時間の問題であるという考え方だ。販売員にとっても、つながる商品を横断的に提案する接客スキルが求められる。
加えて、10月にマイクロソフトがWindows10のFall Creators UpdateでリリースするMR(Mixed Reality)も、360度カメラやMRゴーグルによるバーチャルリアリティを訴求するために、体験型のコト提案の売り場づくりを後押しするトピックスだ。
注意したいのは、同じプログラミングでも、地域によっては熱の入れようが異なる地域もあること。「東北地方は熱心だが、なかには関心が薄い地方の自治体もある」というように、郊外型店舗では地元自治体の動向を注意深くウォッチしたり、場合によってはメーカーと一緒になって働きかける必要もありそうだ。
いずれにしても、コト提案で重要な要素は顧客との共感であるため、ある程度のターゲティングが必要になるが、マスマーケティングに慣れてきた業界の弊害もあって、売り場では販売効率にとらわれる施策が先行する。結果的に、従来と同じ代わり映えのしない売り場が閉塞感を生み出している。
業界共通の認識として、PCの買い替えサイクルが7年まで伸び、掃除機などの耐久消費財と変わらなくなっているという課題が残る。自動車業界にヒントを得るべきとの意見も象徴的だった。「PCのCPUのように、車のスピードをすごく重視する客層は一部。そこでワンボックスカーやSUVなど、家族との時間の過ごし方や週末の楽しみ方など、上手にカテゴリ分けをしながら提案の幅を広げている」。ノートPCかデスクトップPCかという切り口だけでなく、タブレットやクラムシェル、2 in 1などカテゴリはいろいろあるが、顧客までしっかりと伝わりきれていないところにも課題があるようだ。(BCN・細田 立圭志)
■コンシューマPC売り場の声(エディオン)
横井達也 商品統括部
情報家電商品部マネージャー
◇「家族に1台」の発想を壊して2台、3台目の新市場をつくる
プログラミング教育で、具体的に提案するときに気をつけなくてはいけないのが、従来型のPCをそのままあてはめてはいけない点だ。PCの平均販売価格は10万円前後。確かに4~5万円から、高額機種だと15万円を超えるものまであるが、一般的な家庭では親が子どもに、15万円を超えるPCを買い与えることはあまりないだろう。
ただ、15万円を超えるPCは「1世帯に1台」と決めつけるのではなく、エアコンのように2台目、3台目を子どもの部屋にも置くという提案ができないものだろうか。ニーズにあった商品はわれわれだけではつくれないので、メーカーの協力が必要だ。
PCはパーソナルコンピュータなのだから、家族で1台ではなく、お子様にもどんどんと使っていただきたい。スマホと同じで、いろいろな心配事が増えるから、それに対するセキュリティ面での安心感を訴求していきたい。メーカーは単価ダウンを恐れるかもしれないが、子ども向けというコンセプトとメッセージ性を尖らせれば、大人だけではない新しいPC市場を創造することができるだろう。あれもこれもできるPCではなく、例えばドライブを除いたり、機能を絞り込んだPCがあってもいい。
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年10月号から転載
■売り場の「コト提案」は進んだか
将来見据えて「小学生」に種まき
<参加企業一覧>
https://www.bcnretail.com/market/detail/20171006_43642.html
「PCは何でもできてしまうがゆえにコト提案が難しい商品ジャンルだ」という出席者の意見が象徴するように、思い切ったターゲティングが難しいところに、コンシューマPC売り場でのコト提案が足踏みしている状況がある。
SNSやメール、インターネット閲覧といったわかりやすいシンプルなメッセージは、スマホに奪われてしまい、「PCは何をするツールか」という基本に立ち返るべきだという声も出た。単なるウェブ閲覧や音声認識だけではなく、生産性や効率を高めるためのツールであることを踏まえると、一点に絞って訴求してしまうと、それにマッチしない顧客をミスリードしてしまう可能性もあり、メーカーとしてもなかなか決め打ちができない。
販売サイドからは「動画編集をしましょうと言い続けてきた結果が今の状況なので、いっそのこと、発想の違う異業種のアイデアを取り入れたほうがうまくいくかもしれない」と、売り場の在り方に限界すら感じさせる発言も出た。
「極端なことを言えば『脱PC売り場』を目指してほしい。例えば、孫のランドセルを購入しに来た祖父母向けに、エッジの効いたプログラミング用のノートPCを提案するといった取り組みだ」と、現在の売り場を分解して、イベントや情報を発信するストーリーごとに、商品を組み合わせる売り場づくりも提案された。
試行錯誤している時間はないという見解も出た。「スマートスピーカーの販売がスタートすれば、必然的にクロモノと白物の垣根を越えた売り場が求められるだろう」と、コト提案の売り場づくりは時間の問題であるという考え方だ。販売員にとっても、つながる商品を横断的に提案する接客スキルが求められる。
加えて、10月にマイクロソフトがWindows10のFall Creators UpdateでリリースするMR(Mixed Reality)も、360度カメラやMRゴーグルによるバーチャルリアリティを訴求するために、体験型のコト提案の売り場づくりを後押しするトピックスだ。
東北地方は熱心だが地域により温度差が
そうしたなかでも、プログラミング教育に対する売り場からの期待の声は大きい。「教室に行く前に、家電量販店に相談するという導線を築くことができれば、潜在的な需要を取り込めるはずだ」と、目前のニーズをつかむために、メーカーと小売りが一体になってプログラミング売り場への導線づくりに取り組んでいる。注意したいのは、同じプログラミングでも、地域によっては熱の入れようが異なる地域もあること。「東北地方は熱心だが、なかには関心が薄い地方の自治体もある」というように、郊外型店舗では地元自治体の動向を注意深くウォッチしたり、場合によってはメーカーと一緒になって働きかける必要もありそうだ。
いずれにしても、コト提案で重要な要素は顧客との共感であるため、ある程度のターゲティングが必要になるが、マスマーケティングに慣れてきた業界の弊害もあって、売り場では販売効率にとらわれる施策が先行する。結果的に、従来と同じ代わり映えのしない売り場が閉塞感を生み出している。
業界共通の認識として、PCの買い替えサイクルが7年まで伸び、掃除機などの耐久消費財と変わらなくなっているという課題が残る。自動車業界にヒントを得るべきとの意見も象徴的だった。「PCのCPUのように、車のスピードをすごく重視する客層は一部。そこでワンボックスカーやSUVなど、家族との時間の過ごし方や週末の楽しみ方など、上手にカテゴリ分けをしながら提案の幅を広げている」。ノートPCかデスクトップPCかという切り口だけでなく、タブレットやクラムシェル、2 in 1などカテゴリはいろいろあるが、顧客までしっかりと伝わりきれていないところにも課題があるようだ。(BCN・細田 立圭志)
■コンシューマPC売り場の声(エディオン)
横井達也 商品統括部
情報家電商品部マネージャー
◇「家族に1台」の発想を壊して2台、3台目の新市場をつくる
プログラミング教育で、具体的に提案するときに気をつけなくてはいけないのが、従来型のPCをそのままあてはめてはいけない点だ。PCの平均販売価格は10万円前後。確かに4~5万円から、高額機種だと15万円を超えるものまであるが、一般的な家庭では親が子どもに、15万円を超えるPCを買い与えることはあまりないだろう。
ただ、15万円を超えるPCは「1世帯に1台」と決めつけるのではなく、エアコンのように2台目、3台目を子どもの部屋にも置くという提案ができないものだろうか。ニーズにあった商品はわれわれだけではつくれないので、メーカーの協力が必要だ。
PCはパーソナルコンピュータなのだから、家族で1台ではなく、お子様にもどんどんと使っていただきたい。スマホと同じで、いろいろな心配事が増えるから、それに対するセキュリティ面での安心感を訴求していきたい。メーカーは単価ダウンを恐れるかもしれないが、子ども向けというコンセプトとメッセージ性を尖らせれば、大人だけではない新しいPC市場を創造することができるだろう。あれもこれもできるPCではなく、例えばドライブを除いたり、機能を絞り込んだPCがあってもいい。
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年10月号から転載