【コンシューマPC業界座談会 2017】買い替え需要の取り組み策
東京五輪が開催される2020年が早くも3年後に迫りつつあるが、この数年の間に教育や消費環境の大きな変化が次々に控えている。PCにとっては復権の好機であると同時に、捉え損なうと淘汰される危険をはらむ重要な期間となる。消費増税の駆け込みとWindows XPサポート終了でビックウェーブとなった「2015年春」の反省から、機会損失を防ぐための販売戦略を議論した。
2020年に向けてトピック目白押し
来たる商機に万全の備えを
<参加企業一覧>
https://www.bcnretail.com/market/detail/20171006_43642.html
当時を振り返り、各社からは「メッセージを発信するのが遅かった」という意見が相次いだ。およそ1年前から買い替えを訴求していたものの、結局は最後の1か月に購入が集中し、メーカー・流通はともに負担を強いられることになった。直前にならないと動かないという国民性の問題もあるが、別の見方をすれば、そのタイミングまで買い替える積極的な理由を見出せなかったということでもある。
次の買い替えのビックウェーブとなるWindows 7のサポート終了は20年1月。「今からサポート終了を見据えた買い替えの必要性を喚起しながら、新しいPCで何ができるかをしっかり伝えていかなくてはいけない」。3年前の二の舞にならないためにも、3年先を見据えて本格的に動き出さなければいけない局面に差し掛かっている。
メールやブラウジングと異なり、スマホで代用することが難しいプログラミングは、まさにメーカーが模索する“PCだからできること”だ。キッズ向けPCなども徐々に登場してきており、商機を逃さないために各社は準備を進めている。
使用者が子どもとはいえ、購入するのはもちろん保護者だ。ある参加者の「入学前に祖父母がプレゼントするランドセルのようなイメージになるのではないか」という予想は的を射ているかもしれない。
販売手法にも工夫の余地がある。低学年なら耐久性・安全性重視だが、学年が上がれば、求められるスペックも上がる。そのたびに買い替えるのは世帯にとって負担が大きいので、例えば、月額制でリースして、学年によって最適なモデルを使用するという方法が登場するかもしれない。製品そのもの以外でも変化が起こる可能性は十分に考えられる。
ここには世代間の格差もある。「自宅でPCに語りかけるのはハードルが高い」という声がある一方、小さい子どものいる参加者からは「文字が読めないので、音声操作が普通」と正反対の意見が出た。PCを使いこなせない若者が増えたという意見をよく耳にするが、より操作が簡単なスマホに慣れているということと無関係ではない。さらなるPC離れを引き起こさないためにも、定着するか否かの判断は見誤らないようにしたいところだ。(BCN・大蔵 大輔)
■コンシューマPC売り場の声(ヨドバシカメラ)
ヨドバシカメラ
鈴木裕介 パソコン事業部 パソコン事業部長
◇6歳からの「プログラミング」で消えた10~20代層を取り戻す
PCの所有率で10~20代の層が消えてしまった反省から、6歳の小学生からノートPCを持っていただくための訴求のひとつに、お子様向けのプログラミングがある。まだ訴求しきれていないが、英語学習も提案の切り口になるだろう。
PC売り場のなかでコーナーづくりを行っている段階だが、次のステップとして、おもちゃコーナーで販売しているプログラミングで動く恐竜やロボットなどと一緒に、カテゴリの垣根を越えた提案を考えている。すでに「マルチメディア梅田」では、ロボットプログラミングのイベントを開催し、また「マルチメディアさいたま新都心駅前店」では、定期的にプログラミングのイベントを開いて、お客様の反応はすごくいい。教室に通う前にお客様が「プログラミングについて知りたい」と思ったときに、まだ家電量販店が受け皿になりきれていない。
「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」のPCコーナー
「Windows 10ならセキュリティ面で安全です」と訴求しながら、「マルチメディア札幌」でも売り場を変えて、店側から積極的に情報を発信している。例えば、ランドセルと同じようなカラー展開があってもいいだろう。2020年までの需要を考えると、10~20代のPC需要を取り戻すチャンスだ。
2020年に向けてトピック目白押し
来たる商機に万全の備えを
<参加企業一覧>
https://www.bcnretail.com/market/detail/20171006_43642.html
積極的な買い替え理由が不足 3年前の反省を生かせるか
2014年4月は17年振りの消費増税と高シェアOSであるWindows XPのサポート終了のタイミングが重なり、直前に未曾有のPCの駆け込み需要が発生した。需要の後には反動がくるものだが、PC市場が経験したトンネルは予測以上に長いものだった。家電量販店やPC専門店、ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」によると、14年4月以降で販売台数の伸び率がプラスに転じたのは16年10月。実に2年半もの間、前年割れが続いた。当時を振り返り、各社からは「メッセージを発信するのが遅かった」という意見が相次いだ。およそ1年前から買い替えを訴求していたものの、結局は最後の1か月に購入が集中し、メーカー・流通はともに負担を強いられることになった。直前にならないと動かないという国民性の問題もあるが、別の見方をすれば、そのタイミングまで買い替える積極的な理由を見出せなかったということでもある。
次の買い替えのビックウェーブとなるWindows 7のサポート終了は20年1月。「今からサポート終了を見据えた買い替えの必要性を喚起しながら、新しいPCで何ができるかをしっかり伝えていかなくてはいけない」。3年前の二の舞にならないためにも、3年先を見据えて本格的に動き出さなければいけない局面に差し掛かっている。
プログラミング必修化を追い風に メッセージの発信先は保護者
では、具体的にはどのような提案が需要喚起につながるのだろうか。直近に控える大きなトピックとしては、20年に小学校で必修化するプログラミング教育が挙げられる。全国各地では先行してプログラミング教室が開催されており、受講希望者が殺到しているという。メールやブラウジングと異なり、スマホで代用することが難しいプログラミングは、まさにメーカーが模索する“PCだからできること”だ。キッズ向けPCなども徐々に登場してきており、商機を逃さないために各社は準備を進めている。
使用者が子どもとはいえ、購入するのはもちろん保護者だ。ある参加者の「入学前に祖父母がプレゼントするランドセルのようなイメージになるのではないか」という予想は的を射ているかもしれない。
販売手法にも工夫の余地がある。低学年なら耐久性・安全性重視だが、学年が上がれば、求められるスペックも上がる。そのたびに買い替えるのは世帯にとって負担が大きいので、例えば、月額制でリースして、学年によって最適なモデルを使用するという方法が登場するかもしれない。製品そのもの以外でも変化が起こる可能性は十分に考えられる。
音声入力は定番になるか 世代格差も問題に
プログラミングに代表されるようにキーボードの必要性は揺らがないが、同時に次なる進化が求められているのも事実だ。すぐに思いつくのは、入力インターフェース。昨今注目を集めている音声入力は画期的ながら浸透するまでには至っておらず、各社は今後の需要を測りかねているように見受けられた。ここには世代間の格差もある。「自宅でPCに語りかけるのはハードルが高い」という声がある一方、小さい子どものいる参加者からは「文字が読めないので、音声操作が普通」と正反対の意見が出た。PCを使いこなせない若者が増えたという意見をよく耳にするが、より操作が簡単なスマホに慣れているということと無関係ではない。さらなるPC離れを引き起こさないためにも、定着するか否かの判断は見誤らないようにしたいところだ。(BCN・大蔵 大輔)
■コンシューマPC売り場の声(ヨドバシカメラ)
ヨドバシカメラ
鈴木裕介 パソコン事業部 パソコン事業部長
◇6歳からの「プログラミング」で消えた10~20代層を取り戻す
PCの所有率で10~20代の層が消えてしまった反省から、6歳の小学生からノートPCを持っていただくための訴求のひとつに、お子様向けのプログラミングがある。まだ訴求しきれていないが、英語学習も提案の切り口になるだろう。
PC売り場のなかでコーナーづくりを行っている段階だが、次のステップとして、おもちゃコーナーで販売しているプログラミングで動く恐竜やロボットなどと一緒に、カテゴリの垣根を越えた提案を考えている。すでに「マルチメディア梅田」では、ロボットプログラミングのイベントを開催し、また「マルチメディアさいたま新都心駅前店」では、定期的にプログラミングのイベントを開いて、お客様の反応はすごくいい。教室に通う前にお客様が「プログラミングについて知りたい」と思ったときに、まだ家電量販店が受け皿になりきれていない。
「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」のPCコーナー
「Windows 10ならセキュリティ面で安全です」と訴求しながら、「マルチメディア札幌」でも売り場を変えて、店側から積極的に情報を発信している。例えば、ランドセルと同じようなカラー展開があってもいいだろう。2020年までの需要を考えると、10~20代のPC需要を取り戻すチャンスだ。
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年10月号から転載