【コンシューマPC業界座談会 2017】ここ1~2年、IT投資のキーワードになっている「働き方革」だが、「モバイルPC市場を成長させる追い風になる」といえるほどのムーブメントになるかはまだ未知数だ。この動きを店頭でのPC販売増につなげるにはどのような施策が考えられるか、メーカーと販売店各社が議論した。
■「働き方改革」は追い風か
「快適なモバイルワーク」を訴求
大企業の場合、PCはITベンダーを通じ情報システムと一体で調達する形態がほとんどだが、中小企業やSOHOワーカーはビジネス用のPCを家電量販店やECサイトから購入することも多い。店頭におけるモバイルPCの動きも活発になると期待できるのではないか。
このような見方についてPCメーカー各社に尋ねると、薄型軽量な機種を主力製品にしているメーカーからは「確実に追い風となっている」といった声が聞かれたものの、業界全体としては、ここ1~2年で急にモバイルPCが伸長したという実感はないという見方が支配的だった。
3つのテーマ別にラウンドテーブル形式で議論した
特に、IT部門に余裕がない中小企業では、大企業のようなPCを一元管理する仕組みを導入するのは難しい。市場にはすでにセキュリティを高められる生体認証機能や、万が一、PCの紛失や盗難が発生した場合も、遠隔でデータを消去できる機能などをもつPCがある。このような製品がもっと知られることで、より多くのビジネスパーソンが外出先でも情報漏えいの不安なく仕事をし、時間を有効に活用できるようになるだろう。ただ現状では、セキュリティに強い機種は「法人向けモデル」として販路が限定されていることも多い。メーカー各社には、高度なセキュリティ機能をより簡単に使える仕組みやサービスを整備し、それを店頭でも販売しやすい形態で提供することが求められる。
今回の座談会では、従来のメーカー別・画面サイズ別の陳列に加えて、セキュリティに強いPCを「モバイルワークに最適」といった形で訴求したり、液晶画面に貼るプライバシーフィルターなど、外出先でのPC利用をより安全で快適にできるアイテムをセットで提案したりすることで、働き方改革の動きを売り上げアップにつなげられるのではないかという声も上がった。
また、中小企業のIT投資では公的な補助金・助成制度が活用できることもある。PC自体の購入に使える制度は少ないが、通信機器やクラウドサービスなど、モバイルワーク環境の整備に必要なシステムの経費を補助する「職場意識改善助成金(テレワークコース)」といった仕組みもある。店舗の法人カウンターで、このような各種制度の案内や申請方法の相談受付を積極的に行うことで、中小企業のIT投資負担を軽減し、モバイルPC導入のハードルを下げられるのではないかという意見もあった。
■コンシューマPC売り場の声(ビックカメラ)
鈴木淳
商品本部商品部 PCグループ係長
◇器用貧乏からの脱却を目指し
PCならではの需要を探る
PC市場は現在、単価を下げながら前年並みの販売台数を維持している。ビックカメラでは、焦点を絞って訴求することで、PC需要の拡大と売上増を狙っている。
需要は買い替えが主で、新規に購入する顧客は多くない印象がある。ユーザーの声を聞いても、用途は動画視聴やチャットなど、スマホで十分に対応できる場合が大半を占める。顧客がPCを購入する理由を、はっきりとつかめなくなってきた。
買い替え以外にも新規需要を生み出さなければ、市場は次第に縮小してしまう恐れがあると考え、PCならではの強みを伝えることでスマホとの差異化を図りつつ、新規ユーザーを増やそうとしている。当面の話題は、ゲーミングや2020年に必修化するプログラミングだろう。
PCは何でもできるが、高すぎるスペックを持て余してしまい、器用貧乏になりつつある。性能の底上げやさまざまな機能を搭載して単価を上げるよりも、消費者目線に立ち、シンプルでもいいのでまずは普及させることが先決ではないか。スマホ並みの生活必需品にならなければ、生き残るのは難しい。
■「働き方改革」は追い風か
「快適なモバイルワーク」を訴求
モバイルPCへの好影響はまだ限定的
首相の諮問機関として「働き方改革実現会議」が設置されるなど、昨年から国を挙げた取り組みになりつつある「働き方改革」。その中で、時間や場所を問わずより柔軟な働き方をするためのツールとして、軽量なモバイルノートPCが話題にあがることが多い。大企業の場合、PCはITベンダーを通じ情報システムと一体で調達する形態がほとんどだが、中小企業やSOHOワーカーはビジネス用のPCを家電量販店やECサイトから購入することも多い。店頭におけるモバイルPCの動きも活発になると期待できるのではないか。
このような見方についてPCメーカー各社に尋ねると、薄型軽量な機種を主力製品にしているメーカーからは「確実に追い風となっている」といった声が聞かれたものの、業界全体としては、ここ1~2年で急にモバイルPCが伸長したという実感はないという見方が支配的だった。
コスト以上にセキュリティがモバイルPCの導入を阻む
働き方改革という題目が掲げられたからといって、企業やビジネスパーソンのIT予算が突然増えるわけではなく、モバイルPCの伸長が限定的というのも当然の話だ。ただ、各社に話を聞くと、実際には単にコストだけではなく、仕事用PCを外へ持ち出したり、逆に私物のPCをオフィスへ持ち込んだりする際のセキュリティリスクも、モバイルPC導入の大きな障壁になっているようだ。3つのテーマ別にラウンドテーブル形式で議論した
特に、IT部門に余裕がない中小企業では、大企業のようなPCを一元管理する仕組みを導入するのは難しい。市場にはすでにセキュリティを高められる生体認証機能や、万が一、PCの紛失や盗難が発生した場合も、遠隔でデータを消去できる機能などをもつPCがある。このような製品がもっと知られることで、より多くのビジネスパーソンが外出先でも情報漏えいの不安なく仕事をし、時間を有効に活用できるようになるだろう。ただ現状では、セキュリティに強い機種は「法人向けモデル」として販路が限定されていることも多い。メーカー各社には、高度なセキュリティ機能をより簡単に使える仕組みやサービスを整備し、それを店頭でも販売しやすい形態で提供することが求められる。
今回の座談会では、従来のメーカー別・画面サイズ別の陳列に加えて、セキュリティに強いPCを「モバイルワークに最適」といった形で訴求したり、液晶画面に貼るプライバシーフィルターなど、外出先でのPC利用をより安全で快適にできるアイテムをセットで提案したりすることで、働き方改革の動きを売り上げアップにつなげられるのではないかという声も上がった。
また、中小企業のIT投資では公的な補助金・助成制度が活用できることもある。PC自体の購入に使える制度は少ないが、通信機器やクラウドサービスなど、モバイルワーク環境の整備に必要なシステムの経費を補助する「職場意識改善助成金(テレワークコース)」といった仕組みもある。店舗の法人カウンターで、このような各種制度の案内や申請方法の相談受付を積極的に行うことで、中小企業のIT投資負担を軽減し、モバイルPC導入のハードルを下げられるのではないかという意見もあった。
働き方改革はライフスタイルの改革
忘れてはならないのは、働き方改革の目的は出先でPCを使うことにあるのではなく、生産性を向上させることで無用な長時間労働をなくし、労働者一人ひとりがより自分に合ったスタイルで働けるようにすることだ。このため、「会社にいないときもPCに縛られる」といった印象が付いてしまっては本末転倒だ。業界の関連各社には、生産性向上の効果を経営者向けに伝えるのと同時に、労働者の間で「モバイルPCがあると仕事が快適になる」という考え方が根付くよう、イメージの醸成にも務めていく必要がある。(BCN・日高 彰)■コンシューマPC売り場の声(ビックカメラ)
鈴木淳
商品本部商品部 PCグループ係長
◇器用貧乏からの脱却を目指し
PCならではの需要を探る
PC市場は現在、単価を下げながら前年並みの販売台数を維持している。ビックカメラでは、焦点を絞って訴求することで、PC需要の拡大と売上増を狙っている。
需要は買い替えが主で、新規に購入する顧客は多くない印象がある。ユーザーの声を聞いても、用途は動画視聴やチャットなど、スマホで十分に対応できる場合が大半を占める。顧客がPCを購入する理由を、はっきりとつかめなくなってきた。
買い替え以外にも新規需要を生み出さなければ、市場は次第に縮小してしまう恐れがあると考え、PCならではの強みを伝えることでスマホとの差異化を図りつつ、新規ユーザーを増やそうとしている。当面の話題は、ゲーミングや2020年に必修化するプログラミングだろう。
PCは何でもできるが、高すぎるスペックを持て余してしまい、器用貧乏になりつつある。性能の底上げやさまざまな機能を搭載して単価を上げるよりも、消費者目線に立ち、シンプルでもいいのでまずは普及させることが先決ではないか。スマホ並みの生活必需品にならなければ、生き残るのは難しい。
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年10月号から転載