パナソニック、新ショップ店施策で商圏分析を支援

 パナソニックの販売会社であるパナソニック コンシューマーマーケティング(PCMC)は、10月から全国約8000店のパナソニックショップ店(PS店)に、商圏エリア分析を支援する新しい施策を導入する。


パナソニック コンシューマーマーケティングLE社の内田義人社長

自店の商圏シェアを把握

 PCMCの内田義人社長は新ショップ店政策について「個店ごとの事業拡大は千差万別だが、1店1店の変化に対応できる施策だ」と強調する。具体的には、パナソニックショップが事業拡大に向けて支店を出店する際に有望なエリアを把握する「エリア商圏分析」と、自店で抱える顧客を商圏マップに落とし込んで自店の商圏シェアを把握する「店舗商圏分析」の2つからなる。

 「エリア商圏分析」は、オープンソースの地理情報システムであるQGISに競合店の位置情報や国勢調査データを加えたシステムで、有望エリアや空白エリアを500m四方のメッシュ単位で把握できる。パナソニックショップのような地域家電店では経営者の高齢化が進み、閉店する店も少なくない。パナソニック以外の日立や東芝などの競合する系列店が店をたためば、そのエリアは空白地帯となり、パナソニックにとっては新たに支店を出店するチャンスも生まれるわけだ。
 

QGISを使った「エリア商圏分析」

 もう一方の「店舗商圏分析」は、総務省統計局の「統計センター」のjSTATMAPに、自店顧客と国勢調査データを反映。自店客がいないエリアを攻めたり、逆に自店の上得意客が多いエリアを守る際に効果が期待できる。商圏エリアの特性を把握することで、新規客獲得に向けたポスティングやチラシ配布活動などが効率的に行える。
 

jSTATMAPを使った「店舗商圏分析」

 PCMCでは以前より、事業拡大意欲の高いショップ店にクラウドベースでデータベース・マーケティング(DBM)が行える「Vシステム」を導入しており、購買日や購入頻度、購入金額から顧客データをRFM分析できる環境を整えていた。

 Vシステムを導入したパナソニックショップは約5000店あるとみられ、顧客データとリンクする「店舗商圏分析」はこうしたショップを対象にした支援ツールとしても有効に機能しそうだ。

事業継承を視野の「安心リレープログラム」も

 また、高齢になった経営者が事業を継承できないまま突然リタイヤしてしまう「後継者問題」にも本腰を入れる。「地域家電店では、店主が引退したくてもお客様から『やめられたら困る』という声が上がるケースも少なくない。今は健全に商売をしているが、将来の不安を抱えるPS店は約1000店ある」(内田社長)と、パナソニックショップでも後継者問題は大きな課題となっている。

 PCMCでは、高齢の店主が安心して事業継承できる「安心リレープログラム」を用意し、収支シミュレーションに基づく中期経営計画書の作成や、5年の長いスパンで考える「事業引継ぎ計画書」の作成などをサポートする。引継ぎを考える店と、引き受ける店のマッチングや、店主が親族や従業員、他店に継承するなど想定されるパターンごとに事業継承のスキームをアドバイスすることで、全国のPS店ネットワークを維持する考えだ。(BCN・細田 立圭志)