日本最大規模のコンピューターエンタテインメントの総合展示会「東京ゲームショウ(TGS)」で、VRが本格的に登場したのは4年前の「TGS2014」だった。当時はVRを体験できるブースは少なく、コンテンツもゲーム性に乏しい映像視聴型のものが多かった。そこから2015、2016と回を重ねるたびにVR関連のブースは増加し続け、いまではハード・ソフトともに充実し、VRはすっかり定着した。しかし、イベントの盛況とは裏腹に、コンシューマ向けのVR市場は伸び悩んでいるのが現状だ。「TGS2017」からは、どのようなVRの未来がみえてくるのだろうか。
まず、「AR/VRコーナー」には、昨年と同様に日本で発売前のVRヘッドセット、そしてVR体験を高めるアイテムが集結。ユニークだったのは、中国に本社を置くPico Technologyが展開するVRヘッドセットだ。特徴は、本体にAndroid OSを搭載すること。スタンドアロンなため、ケーブルやポジショントラッカーは必要なく、設備を整えなければいけないという、ルームスケールVRの最大のハードルをクリアしているのだ。
Pico Technologyブース
実際に体験すると非常に高精細の画面に驚かされる。日本で発売が決定している「pico neo dk s」や「Pico Goblin」が2.5K(2560×1440ドット)、プロトタイプの最新機は4K。PCに接続するリッチなVR体験に匹敵するクオリティを実現していた。VR専用プロセッサのQualcomm製Snapdragon 820を搭載するので、画面も滑らかに動く。
VRヘッドセット本体にOSを搭載
VRヘッドセットに+αのアイテムは商業施設向けの大型マシンが大半を占めるが、コンシューマー向けでも面白いものがあった。VAQSOの「VAQSO VR」はVRコンテンツに連動して“匂い”を発生させる装置。機種を問わず全てのVRヘッドセットの下に装着することが可能だ。
VRコンテンツに連動して匂いを発生する「VAQSO VR」
ブースでは九つのコンテンツを用意しており、筆者はIllusionの「VRサクラ」を体験。5分程度の短いコンテンツのなかで、「女性」「お菓子」「スイカ」の三つの匂いが、オブジェクトとの距離やアクションに合わせて漂ってきた。今回はプロトタイプということで匂いカートリッジは三つだが、市販品は五つに増設させる予定だ。
オブジェクトとの距離やアクションに合わせて匂いが発生
昨年と比較して印象的だったのが、一人で楽しむコンテンツだけでなく、対人戦を前提にしたコンテンツが増えていたことだ。ポジショントラッキングを応用した雪合戦やアイトラッキングによる心理ゲームなど、VRならではの要素を生かしたゲームが散見された。VRコンテンツは制作にコストがかかるので、基本的にプレイ時間が短いものが多い。対戦ゲームであれば同じボリュームであっても繰り返しプレイできるので、ユーザーにとって魅力的なコンテンツになるはずだ。
対人戦を楽しめるVRコンテンツも続々と登場
(左)「ラブプラス EVERY」の体験ブースには100分待ちの長蛇の列(右)ブース内の様子
「PlayStation VR(PSVR)」を展開するソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)では、「グランツーリスモSPORT」「V!勇者のくせになまいきだR」「Bravo Team」「The Inpatient-闇の病棟-」「サマーレッスン:新城ちさと 七曜のエチュード」「MONSTER OF THE DEEP:FINAL FANTASY XV」「The Elder Scrolls V:Skyrim VR」「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS」の8本のタイトルを用意。コンテンツ不足が指摘される「PSVR」だが、秋冬にかけて多彩なジャンルのタイトルを発売し、テコ入れを図る。
SIEブースでは多彩なジャンルのVRコンテンツを用意
率直な感想として、VRの目新しさという点では今回のTGSは驚きは少なかった。しかし、これはコンセプト先行ではなく、商業化を見据えた現実的な取り組みが増えたということでもある。体験の質は確実に向上している。ハイエンドVRセットはもちろんだが、スマホVRもポジショントラッキングに対応するソフトが登場するなど、進化している。「しっかりした設備の中で一人で没入する」というイメージに「手軽さ」や「コミュニケーション性」といった要素を付与することができれば、市場の次の景色が見えてくるかもしれない。(BCN・大蔵 大輔)
技術向上でVRの質が高まる 対戦型ゲームも登場
「TGS2017」では、「AR/VRコーナー(旧VRコーナー)」でVRが体験できる。加えて、一部のメーカーブースでも、それぞれ体験コーナーを展開している。新しいデバイスやテクノロジー関連は「AR/VRコーナー」に、販売予定のコンテンツはメーカーブースというすみ分けだ。まず、「AR/VRコーナー」には、昨年と同様に日本で発売前のVRヘッドセット、そしてVR体験を高めるアイテムが集結。ユニークだったのは、中国に本社を置くPico Technologyが展開するVRヘッドセットだ。特徴は、本体にAndroid OSを搭載すること。スタンドアロンなため、ケーブルやポジショントラッカーは必要なく、設備を整えなければいけないという、ルームスケールVRの最大のハードルをクリアしているのだ。
Pico Technologyブース
実際に体験すると非常に高精細の画面に驚かされる。日本で発売が決定している「pico neo dk s」や「Pico Goblin」が2.5K(2560×1440ドット)、プロトタイプの最新機は4K。PCに接続するリッチなVR体験に匹敵するクオリティを実現していた。VR専用プロセッサのQualcomm製Snapdragon 820を搭載するので、画面も滑らかに動く。
VRヘッドセット本体にOSを搭載
VRヘッドセットに+αのアイテムは商業施設向けの大型マシンが大半を占めるが、コンシューマー向けでも面白いものがあった。VAQSOの「VAQSO VR」はVRコンテンツに連動して“匂い”を発生させる装置。機種を問わず全てのVRヘッドセットの下に装着することが可能だ。
VRコンテンツに連動して匂いを発生する「VAQSO VR」
ブースでは九つのコンテンツを用意しており、筆者はIllusionの「VRサクラ」を体験。5分程度の短いコンテンツのなかで、「女性」「お菓子」「スイカ」の三つの匂いが、オブジェクトとの距離やアクションに合わせて漂ってきた。今回はプロトタイプということで匂いカートリッジは三つだが、市販品は五つに増設させる予定だ。
オブジェクトとの距離やアクションに合わせて匂いが発生
昨年と比較して印象的だったのが、一人で楽しむコンテンツだけでなく、対人戦を前提にしたコンテンツが増えていたことだ。ポジショントラッキングを応用した雪合戦やアイトラッキングによる心理ゲームなど、VRならではの要素を生かしたゲームが散見された。VRコンテンツは制作にコストがかかるので、基本的にプレイ時間が短いものが多い。対戦ゲームであれば同じボリュームであっても繰り返しプレイできるので、ユーザーにとって魅力的なコンテンツになるはずだ。
対人戦を楽しめるVRコンテンツも続々と登場
「ラブプラス EVERY」に長蛇の列 キラータイトルになれるか
メーカーブースで賑わいをみせていたのはKONAMIブースの「ラブプラス EVERY」だ。2009年に人気を博した恋愛シミュレーションゲーム「ラブプラス」の続編で、スマホ向けのタイトルとして今冬発売を予定している。新作の特徴は、VRモードを搭載していることだ。ビジネスデーながら100分待ちの長蛇の列で、筆者は体験を断念したが、モバイルVRを一気に市場に普及させるキラーコンテンツになる可能性は十分にあるだろう。(左)「ラブプラス EVERY」の体験ブースには100分待ちの長蛇の列(右)ブース内の様子
「PlayStation VR(PSVR)」を展開するソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)では、「グランツーリスモSPORT」「V!勇者のくせになまいきだR」「Bravo Team」「The Inpatient-闇の病棟-」「サマーレッスン:新城ちさと 七曜のエチュード」「MONSTER OF THE DEEP:FINAL FANTASY XV」「The Elder Scrolls V:Skyrim VR」「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS」の8本のタイトルを用意。コンテンツ不足が指摘される「PSVR」だが、秋冬にかけて多彩なジャンルのタイトルを発売し、テコ入れを図る。
SIEブースでは多彩なジャンルのVRコンテンツを用意
率直な感想として、VRの目新しさという点では今回のTGSは驚きは少なかった。しかし、これはコンセプト先行ではなく、商業化を見据えた現実的な取り組みが増えたということでもある。体験の質は確実に向上している。ハイエンドVRセットはもちろんだが、スマホVRもポジショントラッキングに対応するソフトが登場するなど、進化している。「しっかりした設備の中で一人で没入する」というイメージに「手軽さ」や「コミュニケーション性」といった要素を付与することができれば、市場の次の景色が見えてくるかもしれない。(BCN・大蔵 大輔)