1989年に小泉成器として分社独立してから29年。田中裕二社長は96年から海外メーカー商品課長などを歴任し、14年に代表取締役社長に就任した。ディストリビュータでありながら、自社ブランド製品の開発と販売も行い、特殊なビジネスモデルが強みだ。
取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/細田 立圭志、写真/松嶋 優子
田中裕二社長
メーカーとベンダー機能を兼ね備え
家電量販店に新しい売り場を創造
田中 2013年に発売したフィリップスのノンフライヤーですね。同社とは02年に総代理店契約を結んでいました。揚げ物がヘルシーに食べられるということで、取引先の家電量販店の反応もよく、爆発的なヒットにつながりました。小泉成器における当時の調理家電の売上高は20億円程度でしたが、昨年は180億円まで成長しました。全社売上高の約3割を占め、理美容・健康に次ぐ、2番目の柱事業となりました。
道越 ディストリビュータでありながら、自社ブランド製品の開発と販売も行っているのもユニークですね。
田中 ベンダーとメーカーの両方の機能を兼ね備えている特殊なビジネスモデルが、われわれの強みです。一カテゴリ一社の代理店契約を基本とすることで、例えば、メーカー単独ではフルラインアップできないところを、われわれの製品で補うことができます。逆に、国内外の強いブランドと組ませていただくことで、家電量販店での売り場が確保しやすくなるメリットもあります。実際に、理美容・健康や調理家電の売り場で、ある程度、イニシアチブをとることができるようになりました。
道越 なぜ一カテゴリ一社にこだわるのですか。
田中 同一カテゴリで複数メーカーの商品を扱うと、単なるディストリビュータになってしまい、そこに将来性はないと考えたからです。一カテゴリ一社なら、メーカーと一緒になってユーザー視点の企画や開発会議に参加できたり、競合メーカーに対して一緒に戦うことができます。当然ながら、メーカーにとっては販売代理店を使うことで、営業コストが安くつくメリットもあります。
自社の強みを説明する田中社長
道越 いきなりメーカーの開発段階から、入り込めるものではないですよね。
田中 海外メーカーの新製品発表は2~3年のサイクルなので、製品の企画会議に参加しても製品化までに時間がかかります。また、主要カテゴリのメーカーとはTop to Topの交流も含めて深く付き合っています。例えば、ティファールを展開するグループセブ社とは、毎年、商品担当と営業の5~6人でフランスの本社まで行き、日本市場向けの仕様などについて話し合っています。
田中 変わりませんね。もともとはアパレルが起源ですが、その年の流行をいち早く察知して、協力工場に染めさせたり縫わせたりしながら、ファブレスで売るというスタイルは創業から変わっていません。もうひとつわれわれが得意とするのが、異業種から商品を持ってくることです。例えば、今では家電量販店の理美容コーナーに普通に並んでいる手鏡やリセットブラシは、われわれが売り場提案をしながら広げました。1962年に、業務用でしか扱われていなかったヘアドライヤーを初めて電気店に販路を拡大して、ヒットさせたのも小泉(当時の小泉産業)でした。その後も石油ストーブやガステーブル、家具調こたつ、高圧洗浄機などもそうです。
道越 そのようなカテゴリはまだありますか。
田中 たくさんあります。日本の消費者も海外に住む経験が増えているので、海外であたりまえに使われているブランドが違和感なく受け入れられます。全世界で110兆円といわれる家電市場のうち、日本は少なくなったとはいえ7兆円あり、海外メーカーにとっては依然として魅力的なマーケットであることに変わりはありません。ただ、国内の流通構造の複雑さや、規格や品質の高さについてこられない企業も多く、そのギャップを埋めるのもわれわれの仕事なのです。
ダブルファンドライヤー「モンスター」
取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/細田 立圭志、写真/松嶋 優子
田中裕二社長
メーカーとベンダー機能を兼ね備え
家電量販店に新しい売り場を創造
一カテゴリ一社のこだわりが流通業に付加価値をつける
道越 昨年で創業300年、平成元年に小泉成器として分社独立してから29年。最もヒットした商品は何ですか。田中 2013年に発売したフィリップスのノンフライヤーですね。同社とは02年に総代理店契約を結んでいました。揚げ物がヘルシーに食べられるということで、取引先の家電量販店の反応もよく、爆発的なヒットにつながりました。小泉成器における当時の調理家電の売上高は20億円程度でしたが、昨年は180億円まで成長しました。全社売上高の約3割を占め、理美容・健康に次ぐ、2番目の柱事業となりました。
道越 ディストリビュータでありながら、自社ブランド製品の開発と販売も行っているのもユニークですね。
田中 ベンダーとメーカーの両方の機能を兼ね備えている特殊なビジネスモデルが、われわれの強みです。一カテゴリ一社の代理店契約を基本とすることで、例えば、メーカー単独ではフルラインアップできないところを、われわれの製品で補うことができます。逆に、国内外の強いブランドと組ませていただくことで、家電量販店での売り場が確保しやすくなるメリットもあります。実際に、理美容・健康や調理家電の売り場で、ある程度、イニシアチブをとることができるようになりました。
道越 なぜ一カテゴリ一社にこだわるのですか。
田中 同一カテゴリで複数メーカーの商品を扱うと、単なるディストリビュータになってしまい、そこに将来性はないと考えたからです。一カテゴリ一社なら、メーカーと一緒になってユーザー視点の企画や開発会議に参加できたり、競合メーカーに対して一緒に戦うことができます。当然ながら、メーカーにとっては販売代理店を使うことで、営業コストが安くつくメリットもあります。
自社の強みを説明する田中社長
道越 いきなりメーカーの開発段階から、入り込めるものではないですよね。
田中 海外メーカーの新製品発表は2~3年のサイクルなので、製品の企画会議に参加しても製品化までに時間がかかります。また、主要カテゴリのメーカーとはTop to Topの交流も含めて深く付き合っています。例えば、ティファールを展開するグループセブ社とは、毎年、商品担当と営業の5~6人でフランスの本社まで行き、日本市場向けの仕様などについて話し合っています。
今でも変わらない創業300年の精神
道越 このようなスピリットは、創業から300年たっても変わらないのでしょうか。田中 変わりませんね。もともとはアパレルが起源ですが、その年の流行をいち早く察知して、協力工場に染めさせたり縫わせたりしながら、ファブレスで売るというスタイルは創業から変わっていません。もうひとつわれわれが得意とするのが、異業種から商品を持ってくることです。例えば、今では家電量販店の理美容コーナーに普通に並んでいる手鏡やリセットブラシは、われわれが売り場提案をしながら広げました。1962年に、業務用でしか扱われていなかったヘアドライヤーを初めて電気店に販路を拡大して、ヒットさせたのも小泉(当時の小泉産業)でした。その後も石油ストーブやガステーブル、家具調こたつ、高圧洗浄機などもそうです。
道越 そのようなカテゴリはまだありますか。
田中 たくさんあります。日本の消費者も海外に住む経験が増えているので、海外であたりまえに使われているブランドが違和感なく受け入れられます。全世界で110兆円といわれる家電市場のうち、日本は少なくなったとはいえ7兆円あり、海外メーカーにとっては依然として魅力的なマーケットであることに変わりはありません。ただ、国内の流通構造の複雑さや、規格や品質の高さについてこられない企業も多く、そのギャップを埋めるのもわれわれの仕事なのです。
ダブルファンドライヤー「モンスター」
ダブルファンの大容量で時短と髪のいたわりを両立
形状の異なる独自の2つのファンを搭載し、消費電力は1200Wと従来のドライヤーと同じながら、より多くの風を速く届け、マイナスイオン機能により、美しい髪へと導く。AC110V仕様で海外でも使用でき、また、ジェルネイルをした長い爪でも操作しやすいデジタルスイッチを搭載している。■プロフィール
田中裕二
1952年岐阜県大垣市生まれ。中央大学商学部卒業。76年小泉産業に入社し名古屋を中心に中部地区にて営業。89年小泉産業より小泉成器が分社独立して、新規取引先法人営業~営業企画を担当。96年から海外メーカー商品課長、2007年法人営業部長、08年に取締役、12年に常務取締役商品事業統括部長、14年に営業本部長を歴任し、同年代表取締役社長に就任(現職)。
田中裕二
1952年岐阜県大垣市生まれ。中央大学商学部卒業。76年小泉産業に入社し名古屋を中心に中部地区にて営業。89年小泉産業より小泉成器が分社独立して、新規取引先法人営業~営業企画を担当。96年から海外メーカー商品課長、2007年法人営業部長、08年に取締役、12年に常務取締役商品事業統括部長、14年に営業本部長を歴任し、同年代表取締役社長に就任(現職)。
◇取材を終えて
世界中の情報を居ながらにして知ることができる時代になっても、ユニークで有名な商品を知らないことは意外に多い。フィリップスのノンフライヤーやティファールの電気ケトルはそのいい例だろう。コイズミが日本市場に広めた代表的な商品だ。海外商品に限らず、現場に赴き商品を使って確かめて得た感覚は、どんな情報源よりも勝る。メーカー・ベンダーの特性を生かし、新たな風を起こすコイズミ的な商品提案力こそ現代の家電流通を活性化する原動力だ。(柳)
世界中の情報を居ながらにして知ることができる時代になっても、ユニークで有名な商品を知らないことは意外に多い。フィリップスのノンフライヤーやティファールの電気ケトルはそのいい例だろう。コイズミが日本市場に広めた代表的な商品だ。海外商品に限らず、現場に赴き商品を使って確かめて得た感覚は、どんな情報源よりも勝る。メーカー・ベンダーの特性を生かし、新たな風を起こすコイズミ的な商品提案力こそ現代の家電流通を活性化する原動力だ。(柳)
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年10月号から転載