今年4月の改正資金決済法施行前後から、国内でもビットコインでの決済に対応する店舗が増えてきた。取引所の破綻やレートの暴騰・暴落などが騒がれた仮想通貨だが、実際には店側のリスクは小さく、導入店からは「メリットあり」との声が相次ぐ。注目すべき本質は、既存の決済システムにないコストパフォーマンスの良さと利便性の部分だ。
<POINT>
(1) 導入店では「想定以上」の利用
(2) 店側のレート変動リスクはなし
(3) 手数料の安さとQR決済の普及に注目
エンターテインメントサイトの「DMM.com」では、昨年2月末、コンテンツやEC購入に充てられるポイントの購入方法として、ビットコイン決済を導入した。運営元のDMM.comラボによれば、導入理由は「将来的な期待値の高さを考慮して」ということで、実用性もさることながら、当初は話題づくりを狙っていたようだが、「昨年末くらいから利用率・決済金額とも想像以上に伸びている」といい、支払い手段のひとつとして定着しつつある。
また、都内で豪華版のカプセルホテル「安心お宿」を運営するサンザは、国内外の利用者の利便性向上を目的として、今年3月に新宿店でビットコイン決済に対応。同社も「当初は本当に利用があるのか半信半疑な部分もあった」とのことだが、導入後一定のニーズが確認され、現在も利用は伸び続けているため、他店舗への導入拡大も検討しているという。
なぜなら、ほとんどの店舗は、顧客から支払われたビットコインを直接受け取っているわけではなく、bitFlyerやコインチェックなどの大手取引所が提供する決済サービスを利用している。例えば、1000円分の商品がビットコインで決済された場合、顧客はそのときのレートで1000円相当のビットコインを支払うが、店側に入金されるのは1000円から一定割合の決済手数料を引いた日本円であり、レートが変動しても入金額は変わらない。店からみれば、ビットコインもクレジットカードや電子マネーと変わらない一つの決済ルートに過ぎない形だ。ビットコインの騰落によって消費者の購買意欲に変化はあるかもしれないが、レートの変動によって売り上げそのものが目減りするといった心配はないわけだ。
ビックカメラは7月、ビットコイン決済を全店共通のサービスに拡大。意外にも利用の中心は日本人という
日本のビットコインユーザーが具体的に何を魅力と感じているのかは不明だが、ビックカメラの場合、ビットコイン決済でのポイント付与率は現金と同率で、顧客にとってはクレジットカードでの支払いよりも有利だ。これが可能なのも、店舗が決済業者に支払う手数料は、クレジットカードでは3~5%程度なのに対し、ビットコイン決済では1%といわれており、圧倒的に安いからだ。
ビックカメラは2017年7月、ビットコイン決済を全店共通のサービスに拡大。意外にも利用の中心は日本人という
また、クレジットカードや電子マネーは導入時に専用の決済端末やカードリーダーが必要なのに対し、ビットコインに代表されるモバイル決済はQRコードの表示と読み取りが可能なスマートフォン1台があればよい。店舗にとっては導入・運用とも低コストなのが特徴となっている。ユーザー側も、専用のカードやFeliCa対応端末を用意する必要はなく、安価なSIMフリースマホでも使用にはまったく問題ない。
日本でなかなか普及しなかったキャッシュレス決済も、徐々にではあるが確実に高まっている。インバウンド対応の一環として注目されることの多いビットコインだが、既存の金融の仕組みの外側だからできる低コストや導入の容易さのほうが、店舗にとっては注目すべきポイントといえるだろう。(BCN・日高 彰)
<POINT>
(1) 導入店では「想定以上」の利用
(2) 店側のレート変動リスクはなし
(3) 手数料の安さとQR決済の普及に注目
仮想通貨(暗号通貨)「ビットコイン」とは?
2014年の大手取引所「マウントゴックス」の破綻や、今年春以降の交換レートの乱高下など、何かと“怪しげ”なイメージが先行する形で話題となっている「ビットコイン」。しかし、仮想通貨の法的位置づけを定めた改正資金決済法が昨年成立し、この4月から施行された。この中で、取引所に登録や監査が義務づけられるなど、利用者が不当な不利益を被ることを防ぐための仕組みが整備されたことで、国内大手企業の間でも、商品やサービスの代金決済にビットコインを導入する例が増えてきている。エンターテインメントサイトの「DMM.com」では、昨年2月末、コンテンツやEC購入に充てられるポイントの購入方法として、ビットコイン決済を導入した。運営元のDMM.comラボによれば、導入理由は「将来的な期待値の高さを考慮して」ということで、実用性もさることながら、当初は話題づくりを狙っていたようだが、「昨年末くらいから利用率・決済金額とも想像以上に伸びている」といい、支払い手段のひとつとして定着しつつある。
また、都内で豪華版のカプセルホテル「安心お宿」を運営するサンザは、国内外の利用者の利便性向上を目的として、今年3月に新宿店でビットコイン決済に対応。同社も「当初は本当に利用があるのか半信半疑な部分もあった」とのことだが、導入後一定のニーズが確認され、現在も利用は伸び続けているため、他店舗への導入拡大も検討しているという。
通常の通貨では考えられない相場の動き 投機対象に
年初に1BTC=13万円前後だった交換レートは9月初頭に55万円を突破し、そこからわずか2週間程度で再び40万円前後まで下落するなど、通常の通貨では考えられない相場の動きを見せているビットコイン。「レート変動リスクが怖くて、決済手段には使えない」という声が上がるのも当然だが、導入店舗側についていえば、通常はレートが大きく動いても直接的に損害を被ることはない。なぜなら、ほとんどの店舗は、顧客から支払われたビットコインを直接受け取っているわけではなく、bitFlyerやコインチェックなどの大手取引所が提供する決済サービスを利用している。例えば、1000円分の商品がビットコインで決済された場合、顧客はそのときのレートで1000円相当のビットコインを支払うが、店側に入金されるのは1000円から一定割合の決済手数料を引いた日本円であり、レートが変動しても入金額は変わらない。店からみれば、ビットコインもクレジットカードや電子マネーと変わらない一つの決済ルートに過ぎない形だ。ビットコインの騰落によって消費者の購買意欲に変化はあるかもしれないが、レートの変動によって売り上げそのものが目減りするといった心配はないわけだ。
全店導入に踏み切ったビックカメラ 「意外にも日本人利用者が多い」
小売業界におけるビットコイン対応で、最近最も大きな話題となったのがビックカメラによる導入だ。当初は数店舗における試験的なサービスとして始まったが、想定以上の利用があったとして、すぐに全店での導入に踏み切った。意外にもビットコイン利用者層の中心は訪日外国人ではなく、日本の顧客なのだという。ビックカメラは7月、ビットコイン決済を全店共通のサービスに拡大。意外にも利用の中心は日本人という
日本のビットコインユーザーが具体的に何を魅力と感じているのかは不明だが、ビックカメラの場合、ビットコイン決済でのポイント付与率は現金と同率で、顧客にとってはクレジットカードでの支払いよりも有利だ。これが可能なのも、店舗が決済業者に支払う手数料は、クレジットカードでは3~5%程度なのに対し、ビットコイン決済では1%といわれており、圧倒的に安いからだ。
ビックカメラは2017年7月、ビットコイン決済を全店共通のサービスに拡大。意外にも利用の中心は日本人という
また、クレジットカードや電子マネーは導入時に専用の決済端末やカードリーダーが必要なのに対し、ビットコインに代表されるモバイル決済はQRコードの表示と読み取りが可能なスマートフォン1台があればよい。店舗にとっては導入・運用とも低コストなのが特徴となっている。ユーザー側も、専用のカードやFeliCa対応端末を用意する必要はなく、安価なSIMフリースマホでも使用にはまったく問題ない。
日本でなかなか普及しなかったキャッシュレス決済も、徐々にではあるが確実に高まっている。インバウンド対応の一環として注目されることの多いビットコインだが、既存の金融の仕組みの外側だからできる低コストや導入の容易さのほうが、店舗にとっては注目すべきポイントといえるだろう。(BCN・日高 彰)