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【ゲーミングPC業界座談会 2017】まだ認知度の低い「プロゲーマー」という職業

 「盛り上がりつつある」という事実は参加者各位の共通認識だが、一同揃って「ただし」という言葉が後に続く。立場によって表現はそれぞれだが、「期待していた広がりにはまだ至っていない」という課題感を誰しもが抱えているようだ。カギを握るのは、ガラパゴス化している日本のゲームコンテンツだ。


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テーマ3 ゲーミングPC市場がさらに発展するには
市場拡大のカギは「コンテンツ」
ガラパゴス化する市場を打破するには?

ドメスティックな日本市場 ハードメーカーも対応に苦慮

 ゲーマーでなくとも「ファイナルファンタジー」や「モンスターハンター」といったゲームタイトルを知らない日本人は少ないだろう。しかし、「League of Legends」や「Overwatch」となると「聞いたこともない」が圧倒的多数派になる。
 

ソフマップAKIBA2号店 パソコン総合館

 米国のライアットゲームズが開発した「League of Legends」は総プレイヤー数が7000万人ともいわれるビッグタイトルで、5億円を超える賞金総額の大会も開催されている。本国では2009年に稼働し、12年には世界で最もプレイヤーが多いPCゲームに認定された。しかし、日本語版の正式なサービスローンチは17年3月で、8年ものタイムラグがあった。
 

日本eスポーツ協会(JeSPA) 松本順一国際委員長

 ドメスティックな状況に陥っている日本のコンテンツ事情は、ハードウェアメーカーにとっても悩みの種だ。例えば、推奨PCの表記。ワールドワイドでメジャーなタイトルではなく、国内で知名度のあるタイトルを推奨タイトルとして採用するのは、PCゲームの裾野を少しでも広げるための苦肉の策だ。

 「日本だとスマートフォンやコンソールのユーザーが多いので、入口はどうしてもクロスプラットフォームで展開しているタイトルになる」と、ある参加者は内情を説明するが、最終的にはPCゲーム固有のタイトルに手を伸ばしてもらいたいというのが本音だ。ワールドワイドと同じ波に乗らなければ、結局は、小さな盛り上がりで終わってしまうからだ。
 

日本eスポーツ連盟(JeSF) 梅崎伸幸共同代表理事

業界の将来を左右する eスポーツの進展

 しかし、ユーザー意識にも変化の兆しがある。国内で開催されるゲームのアワードに海外メーカーが選出されるようになったことは、その傾向を裏づける。

 また、「eスポーツ」というワードも徐々に浸透しつつあるようだ。業界団体関係者も「販売店から『eスポーツ』について詳しく教えてください』と依頼されることが増えた」と、現場の熱を伝える。


DETONATOR 江尻勝代表

 最近だと、先述した店頭イベントもプロゲーマーを招いて開催されることが増えた。「海外であればイベントを開催すると、その地域の売り上げがグンと伸びる。ユーザーの母数が増えれば、それだけリターンは大きくなる」とのことで、その効果に関係者は期待を寄せる。

 起爆剤として今後の進展が楽しみなeスポーツだが、課題もある。まず、けん引するプロゲーマーの不足だ。人数が少ないということは、それだけライバルも少ないということ。「イベントに招待されることも増え、プロゲーマーを取り巻く環境は良くなっている。しかし、それが逆に若いプレイヤーの甘やかしにつながっている。“勝負に勝たなくてもお金がもらえる”という意識がある」と、あるベテランプロゲーマーは苦言を呈す。
 

SCARZ 友利洋一代表

 世界を見渡すとPCゲームが盛んな国にはスタープレイヤーがおり、市場の活性化に少なからず貢献している。「プロゲーマーという職業の認知」は第一歩であり、業界の担い手として立場を確立するための道のりはまだ半ばだ。(BCN・大蔵 大輔)
 
7社5団体が議論 ゲーミングPC業界座談会 2017
開催日:2017年7月20日
場所:BCNアカデミールーム
参加メーカー:日本AMD、日本エイサー、ASUS JAPAN、日本HP、サードウェーブ、デル、ユニットコム、SCARZ、DETONATOR、e-sports促進機構、日本eスポーツ協会、日本eスポーツ連盟(団体種別、50音順)


※『BCN RETAIL REVIEW』2017年9月号から転載