フィリップスの堤浩幸社長が語る、ヘルスケア分野のブランド戦略(前編)
フィリップスという企業に対してどのようなイメージをもっているだろうか。40代より上の世代はオーディオ、30代より下ならシェーバーや美容機器、海外滞在の経験があ.る人なら電球を思い浮かべるかもしれない。さまざまな側面をもつのはよいことのように思えるが、ある意味ではその輪郭がぼやけているともいえる。2017年3月に同社日本法人の社長に就任した堤 浩幸社長は「フィリップス=ヘルスケア」というイメージを日本で確立することを使命と語る。
取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/大蔵 大輔、写真/松嶋 優子
ヘルスケア分野のNo.1カンパニーへ
ブランドイメージを再確立
フィリップス エレクトロニクス ジャパンの堤 浩幸社長
堤 フィリップスはヘルスケア分野のNo.1カンパニーになることをコミットメ
ントしています。われわれはその実現に向けて動いていかなければいけません。特に重視しているのが、フィリップスのブランド価値をお客様によりご理解いただくことです。
実はフィリップスは中国では300種類以上の製品を展開しており、ブランド価値も2番目に高いです。米国や欧州でも似た立ち位置ですが、日本だけはそうではありません。美容家電や医療機器など、さまざまな事業を展開していますが、明確な企業イメージを確立できていません。このイメージをクリアにしていきたいと思っています。
道越 ヘルスケアカンパニーとして認知度を高めていきたいということですね。ところで、コンシューマ向けに展開しているヘルスケア製品は、シェーバーや電動歯ブラシのような、直接医療に関わらないカテゴリが多いです。なぜですか。
堤 共通しているのは、人々の健康的な生活をサポートしているということです。すなわち、予防です。日本人の健康志向は年々高まっていますが、意外と予防に対する意識は低い。「調子が悪くなってから病院に行く」という具合です。これから寿命はますます伸びていきますが、不健康では意味がありません。われわれは健康寿命を意識した予防の重要性を伝えていきたいと考えています。
ヘルスケアカンパニーとしてブランドイメージを再確立したいと語る堤社長
堤 例えば、電動歯ブラシのソニックケアー。これを単なる電動歯ブラシとしてではなく、慢性疾患を予防する予防医療の手段として捉えていただけるようにしたいです。日本は少子高齢化や過疎化などさまざまな社会問題に直面しています。フィリップスの製品を予防医療の手段として認識していただければ、これらの社会現象と密接なつながりが生まれます。
道越 製品をきっかけにしたソリューション、例えば医療機関とデータを共有するなど、toBとの連携も考えていますか。
堤 プロダクトからソリューションに移行しつつあるのが、新しいフィリップスのあり方です。先ほど例に挙げた電動歯ブラシもスマホ連携によって、正しい磨き方をガイドしたり、歯磨きのデータを蓄積・共有したりといった新しい取り組みを行っています。ソフトウェアやクラウドの充実が付加価値の創造につながります。モノだけどただのモノではない、というわけです。
道越 「健康に特化したクラウドサービス」というのが将来的な企業イメージになってきそうですね。
堤 おっしゃる通りです。予防から診断・治療、アフターケアまで一気通貫のプロセスがあるのはフィリップスだけですから、その強みは生かしていきたいです。
道越 ノンフライヤーのようなユニークな調理家電も話題になりました。今後も目新しいアイテムを投入する予定はありますか。
堤 調理家電においても「健康をサポートする」という目的意識は変わりません。次に登場するアイテムも同じです。次世代のノンフライヤーだけでなく、みなさんに驚いていただけるような新製品を準備しているので、ご期待ください。
・後編に続く
ソニッケアー ダイヤモンドクリーン スマート
9月1日に発売する充電式電動歯ブラシの最上位機種「ソニッケアー ダイヤモンドクリーン スマート」はスマホアプリと連携し、正しいブラッシングをガイドする機能を有する。歯磨きのデータは長期間履歴を保存できるだけでなく、歯科医師との共有も可能。まさにフィリップスが描くIoTの姿を体現している。
取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/大蔵 大輔、写真/松嶋 優子
ヘルスケア分野のNo.1カンパニーへ
ブランドイメージを再確立
フィリップス エレクトロニクス ジャパンの堤 浩幸社長
ユーザーの意識を変革 予防医療の重要性を説く
道越 社長に就任されて5か月が経ちました。堤さんの最も重要なミッションは何ですか。堤 フィリップスはヘルスケア分野のNo.1カンパニーになることをコミットメ
ントしています。われわれはその実現に向けて動いていかなければいけません。特に重視しているのが、フィリップスのブランド価値をお客様によりご理解いただくことです。
実はフィリップスは中国では300種類以上の製品を展開しており、ブランド価値も2番目に高いです。米国や欧州でも似た立ち位置ですが、日本だけはそうではありません。美容家電や医療機器など、さまざまな事業を展開していますが、明確な企業イメージを確立できていません。このイメージをクリアにしていきたいと思っています。
道越 ヘルスケアカンパニーとして認知度を高めていきたいということですね。ところで、コンシューマ向けに展開しているヘルスケア製品は、シェーバーや電動歯ブラシのような、直接医療に関わらないカテゴリが多いです。なぜですか。
堤 共通しているのは、人々の健康的な生活をサポートしているということです。すなわち、予防です。日本人の健康志向は年々高まっていますが、意外と予防に対する意識は低い。「調子が悪くなってから病院に行く」という具合です。これから寿命はますます伸びていきますが、不健康では意味がありません。われわれは健康寿命を意識した予防の重要性を伝えていきたいと考えています。
ヘルスケアカンパニーとしてブランドイメージを再確立したいと語る堤社長
モノからソリューションへ 一気通貫の強みを生かす
道越 具体的にどのようにユーザーに対して新しいフィリップスのイメージを伝えていくのですか。堤 例えば、電動歯ブラシのソニックケアー。これを単なる電動歯ブラシとしてではなく、慢性疾患を予防する予防医療の手段として捉えていただけるようにしたいです。日本は少子高齢化や過疎化などさまざまな社会問題に直面しています。フィリップスの製品を予防医療の手段として認識していただければ、これらの社会現象と密接なつながりが生まれます。
道越 製品をきっかけにしたソリューション、例えば医療機関とデータを共有するなど、toBとの連携も考えていますか。
堤 プロダクトからソリューションに移行しつつあるのが、新しいフィリップスのあり方です。先ほど例に挙げた電動歯ブラシもスマホ連携によって、正しい磨き方をガイドしたり、歯磨きのデータを蓄積・共有したりといった新しい取り組みを行っています。ソフトウェアやクラウドの充実が付加価値の創造につながります。モノだけどただのモノではない、というわけです。
道越 「健康に特化したクラウドサービス」というのが将来的な企業イメージになってきそうですね。
堤 おっしゃる通りです。予防から診断・治療、アフターケアまで一気通貫のプロセスがあるのはフィリップスだけですから、その強みは生かしていきたいです。
道越 ノンフライヤーのようなユニークな調理家電も話題になりました。今後も目新しいアイテムを投入する予定はありますか。
堤 調理家電においても「健康をサポートする」という目的意識は変わりません。次に登場するアイテムも同じです。次世代のノンフライヤーだけでなく、みなさんに驚いていただけるような新製品を準備しているので、ご期待ください。
・後編に続く
ソニッケアー ダイヤモンドクリーン スマート
9月1日に発売する充電式電動歯ブラシの最上位機種「ソニッケアー ダイヤモンドクリーン スマート」はスマホアプリと連携し、正しいブラッシングをガイドする機能を有する。歯磨きのデータは長期間履歴を保存できるだけでなく、歯科医師との共有も可能。まさにフィリップスが描くIoTの姿を体現している。
■プロフィール
堤 浩幸
1962年山梨県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業。85年に日本電気に入社。2004年にシスコシステムズに移り、06年に同取締役に就任。スタンフォード大学ビジネススクールエグゼクティブプログラムを修了後、09年にシスコシステムズインクのバイスプレジデントに就任。15年4月にサムスン電子ジャパンの代表取締役 最高執行責任者(COO)、10月に同代表取締役 最高経営責任者(CEO)に就任。16年11月にフィリップス エレクトロニクス ジャパンの執行役員副社長 ヘルスシステムズ プレジデント、17年3月に同代表取締役社長に就任(現職)。
・<動画インタビュー>トップが語る『会社の夢』
堤 浩幸
1962年山梨県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業。85年に日本電気に入社。2004年にシスコシステムズに移り、06年に同取締役に就任。スタンフォード大学ビジネススクールエグゼクティブプログラムを修了後、09年にシスコシステムズインクのバイスプレジデントに就任。15年4月にサムスン電子ジャパンの代表取締役 最高執行責任者(COO)、10月に同代表取締役 最高経営責任者(CEO)に就任。16年11月にフィリップス エレクトロニクス ジャパンの執行役員副社長 ヘルスシステムズ プレジデント、17年3月に同代表取締役社長に就任(現職)。
・<動画インタビュー>トップが語る『会社の夢』
◇取材を終えて
NEC、シスコ、サムスンとIT業界のど真ん中を走り続けてきた堤氏。ヘルスケア分野のリーディングカンパニーを目指し、IoT技術を活用しながらコト売りの拡大を急ぐフィリップスにとっては、まさにジャストタイミングの社長就任だ。超高齢化社会が到来しつつある日本の課題は、延命だけでなく、いかに健康に歳を重ねていけるか、にある。ITを応用したヘルスケアサービスがそうした社会の実現につながる。日本発で世界に好例を示して欲しい(柳)
NEC、シスコ、サムスンとIT業界のど真ん中を走り続けてきた堤氏。ヘルスケア分野のリーディングカンパニーを目指し、IoT技術を活用しながらコト売りの拡大を急ぐフィリップスにとっては、まさにジャストタイミングの社長就任だ。超高齢化社会が到来しつつある日本の課題は、延命だけでなく、いかに健康に歳を重ねていけるか、にある。ITを応用したヘルスケアサービスがそうした社会の実現につながる。日本発で世界に好例を示して欲しい(柳)
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年9月号から転載