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フィリップスの堤浩幸社長が語る、ヘルスケア分野のブランド戦略(後編)

インタビュー

2017/08/25 15:00

 ワールドワイドで事業の柱をヘルスケア事業に転換したフィリップスが目指すのは、モノとコトが一体になった次世代のエコシステムだ。3月1日に同社日本法人社長に就任した堤浩幸氏は「日本こそ世界に先駆けてモデルケースになることができる」と期待を示す。

取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/大蔵 大輔、写真/松嶋 優子

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日本がリード? ヘルスケアの未来予想図

異業種も含むエコシステムの構築が急務

道越 モノとコトが融合したソリューション提案として、先日発表されたスマートフォンと連携する電動歯ブラシは好例かと思います。ほかに、今後どのようなビジョンをおもちですか。

 スマホ連携を中心にIoT化を推進するのは、電動歯ブラシだけではありません。シェーバーやキッチン家電でも、ソリューションの提案を進めていきます。健康はもちろんですが、お客様が楽しめることも含めた価値創造を行っていきます。ビッグデータ、IoT、クラウド……あらゆる要素を絡めながら、パーソナルヘルスの分野を見直していきたいですね。

道越 それぞれの異なる分野のデータの連携、フィリップス製品群のエコシステムのようなことも考えられるのでしょうか。

 フィリップスのクラウドというのはすでに存在しています。電動歯ブラシからモバイル端末を通して吸い上げたビッグデータを分析し、調理家電を通して食に関するコンサルテ―ションを行うという仕組みは十分に考えられます。また、その仕組みはフィリップスと個人で完結するものではありません。医療機関とビッグデータを共有することで「病気にかかる前にアドバイスを受けることができる」、あるいは「病気になってすぐに適切な処置を受けることができる」、こういったソリューションを可能にするのも、われわれが考えるフィリップスの新しい姿です。
 

日本発のヘルスケアソリューション創出に意欲を示す堤浩幸社長

道越 いま説明していただいた高度なプラットフォームを実現するために、まず着手するべきことは何ですか。

 フィリップスは2025年までの目標に「30億人の健康をサポートしよう」というビジョンがあります。繰り返しになりますが、プロダクトからソリューションへの移行、アーキテクチャを構築するカンパニーを目指すという意識を全社員と共有することが第一にやるべきことです。

 第二に考えなければいけないのが、エコシステムの創造です。先ほどフィリップス製品群のエコシステムの話が出ましたが、すべてを自社でまかなうのは難しい。さまざまな企業とパートナーシップを結び、チャンネルを広げていかなければいけません。自分たちのクラウドと他の企業のクラウドが複数重なっているイメージです。それはIT企業だけではなく、流通や物流の企業も含まれてくるかもしれない。異なる業態にまたがった大きなエコシステムを構築していく必要があるのです。

日本がリード? ヘルスケアの未来予想図

道越 日本のヘルスケア市場という見方をすると、まだ道半ばかと思いますが、どのように普及を目指していくのですか。

 ご指摘の通り、日本のヘルスケア市場はまだわれわれの思い描く姿にはなっていません。しかし、近い将来に日本はヘルスケアで世界をリードする存在にならなくてはいけないと考えています。超高齢化社会や少子化など、健康に対する考え方を180°転換しなければいけない課題を多く抱えていますから。
 

重要なのは“つながる”ことが生み出す新しい価値の創造

 これまでフィリップスでは、海外で販売した製品を日本に持ってきて、という流れが強かったかもしれませんが、これからは日本で価値創造をし、それをグローバルスタンダードにしていく。逆の流れを生み出したいと考えています。

道越 確かに日本は、ヘルスケア分野で世界のベンチマークになることがたくさんあると思います。具体的に、どの分野で新しい市場を切り開きたいという考えはありますか。

 製品やサービス、そしてソフトウェアまで多岐にわたって可能性はあるのではないでしょうか。とかく日本はソフトウェアが弱いといわれることが多いのですが、これから起こる社会環境の変化は、むしろソフトウェアの成長を後押しすると思います。「ソフトウェアといえば日本だな」という状況が生まれ、その中でフィリップスのポジションが高いものになれば、非常に嬉しいですね。