ナニワ商会塩山社長に聞く、ベトナム市場の活力

インタビュー

2017/08/25 18:00

 ナニワ商会では、グループ企業のフォトバンクを通じて、写真のデジタル化サービス「節目写真館」を2012年から提供している。需要の拡大から、15年に新たなスキャンセンターをベトナム・ホーチミンシティに開設。今年中に、現地に写真館をオープンし、労働力を活用するだけでなく、ベトナムを市場としたビジネスを展開する予定だ。インタビュー中、話題が東南アジアの活気に移ると、塩山社長の目がにわかに輝き始めた。

取材・文/日高 彰、写真/松嶋 優子


ナニワ商会の塩山知之社長

前半<新たな成長の道筋をアジアに見出す>から読む

―― ナニワグループの今後の成長戦略として、海外事業を重視されていますね。

塩山 日本の平均年齢は今いくつだと思われますか。46歳くらいだそうです。若いときに比べて頭の回転が遅くなりかけている44歳の僕が、なんとまだ平均よりも下なんですよ。果たして、日本という市場に未来はあるのでしょうか(笑)。ベトナムへ行くと、成長しているマーケットとはこういうものだということを、本当に肌で実感できます。ベトナムの平均年齢は29歳前後です。人口は約9300万人で増加中。街に活気があって、人はみんなまじめでビジネス意欲も旺盛。平均給与は日本の何分の一、富裕層は下手したら日本人のそれよりもお金持ちといった世界です。

―― ちょうどこれから、子どもにお金を使うようになるので、写真館需要が見込めるということですね。

塩山 そうなんです。日本企業はこれまで、製造業の工場や、ITのオフショア開発でベトナムの労働力を活用してきました。それもいいですが、私はむしろ現地のマーケットで勝負したい。最初はホーチミンに写真館を開設し、その後、ハノイなどにも広げられたらと考えています。また、隣国カンボジアは現在、外資に開放的な姿勢ですので注目しています。
 

―― 日本企業のベトナム進出が、ここ数年再び加速していると言われています。

塩山 特に中小企業やベンチャーの人は、人生をかけてベトナムに来られていますね。やる気のある人が多く集まっていて、しかもリスクを覚悟している。単身で渡って、社員は全員ベトナム人で、日本人は自分一人だけ。しかし、それだけ熱意をもって取り組んだ事業でも、「当たる」確率はそんなに高くはありません。一方で、日本の大企業も現地には多いのですが、本気でリスクをとって事業を営む気概にあふれている人は、それほど多くないかもしれません。

―― ミャンマーの経済開放などもあって、東南アジアへの視察が一時期ブーム的に盛り上がりましたが……。

塩山 そう、日本の本社から来る視察団とかはすごく多いんです。現地の人たちは誘致のために一生懸命説明する。それで「どうですか、進出しませんか」と聞くと、日本の企業は「帰って検討します」。決まったかなと思ってメールすると「今度の役員会議で議論します」。これでは、現地からしたら「日本はもういいよ」という気持ちになりますよ。ベトナム市場に食い込んでいる印象が強いのは、台湾や韓国ですね。でもその陰には、“屍”も絶対にたくさん積み上がっていると思います。それでも彼らがすごいのは、リスクテイクするということです。毎晩日本人街で飲んでいたらダメですね(笑)。私も、現役のうちにできる本当に大きな仕事は、そう多くないと思っているので、海外事業はライフワークとして、諦めずにやっていきたいと考えています。

後半<データと野武士の力>に続く