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12万円掃除機で再び世界へ打って出る、東芝の白物家電グローバル戦略

経営戦略

2017/08/17 19:00

 東芝ライフスタイルは8月3日、キャニスタータイプとコードレスタイプの利点を兼ね備えたコードレスクリーナー「VC-NXシリーズ」の製品発表会を開催した。

 税別実勢価格は、スタンダードの「VC-NX1」で10万円前後、自動ゴミ捨て機能を追加した上位機種の「VC-NXS1」は12万円前後と、家庭用掃除機としては最高級価格帯の製品だ。今このような挑戦ができるのは、中国・マイディアグループ(美的集団)傘下へ入った効果のひとつだという。
 

世界向け戦略製品「VC-NXシリーズ」を発表した石渡敏郎社長

 新世代のコードレスクリーナー「VC-NXシリーズ」のコア技術となっているのが、自社で新たに開発・製造した、最大入力450W・毎分12万回転の高速直流モーター「ハイスピードDCモーター HD45」だ。
 

最大毎分約12万回転で強力な吸引力を発揮する独自開発のモーター

 近年、電源コードのわずらわしさがないコードレス型が人気を集めているが、コード付きの製品に比べ吸引力が小さいのが弱点だった。新製品では、新型モーターを搭載するとともに、従来製品の倍となる10本のリチウムイオン電池を内蔵することで、最長60分の連続運転を実現。強いパワーとバッテリというコードレス掃除機の課題を解決した。
 

キャニスター型ながら本体は2.8kgと軽量

 発売日は「VC-NX1」が9月1日、「VC-NXS1」が11月1日。カラーは「VC-NX1」がサテンゴールドとブラストシルバー、「VC-NXS1」はグランレッド、グランブロンズの2色。「VC-NX1」には本体を立てた状態でコンパクトに収納できる充電台、「VC-NXS1」には本体の充電だけでなく、本体ダストカップのプリーツフィルターの塵落しとゴミの吸出しを自動で行うダストステーションが付属する。
 

本体ハンドルは可動式で、高いところを掃除するときも持ち変える必要がない

 今回、自社で新規に開発した「ハイスピードDCモーター HD45」は、東芝時代から研究開発を進めていたものだが、2016年6月、マイディア傘下となったことで、世界を攻めるための戦略モデルに一気に格上げされた。今回の新製品を年内に発売し、15年に撤退した中国市場にも再参入する計画。白物家電では未進出だった欧米市場での販売も視野に入れると明言している。

 東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長は「最先端の開発能力と世界で誰もが知るブランドという東芝の強みと、世界3兆円の事業規模と戦略的な投資を行う推進力というマイディアの強み、これらをあわせて、東芝ブランドの家電事業をグローバルへもっていく」と、新体制での世界戦略を語る。
 

マイディアと共同開発したハンディ/スティック型の2in1掃除機「VC-WL100」。
11月発売予定で税別実勢価格は3万円前後の見込み

 石渡社長がもうひとつ力を込めて話したのが「東芝ブランドである以上、品質は一切変えていない」という点だ。

 これまで主に中国やタイにある自社系列の工場で製造を行っていたが、今後はマイディアの製造拠点も含めてサプライチェーンの最適化を図り、コスト効率を高めていく。しかし、東芝のブランドを付ける製品については、旧東芝時代と変わらない基準をクリアしたものだけを世に出すことを改めて強調した形だ。マイディアグループにとっても、東芝ブランドの製品は、ラインアップ上位のプレミアムモデルに位置づけられるものであり、より厳しい品質基準を設けることに合理性があると判断されているようだ。

 グローバルの戦略モデルとしてコードレス型を選んだのは、技術的な理由もあった。普及価格帯の掃除機に搭載するモーターは家庭用交流電源で直接駆動するため、仕向け地域の電圧に合わせた仕様を作り分けなければいけないが、バッテリ駆動なら、モーターは共通のものを使用できるからだ。また世界で使われるとなると、フローリング、じゅうたん、畳と、さまざまな使用環境でも確実にごみを吸い取る吸引性能が必要となるが、これも、8月発売の「TORNEO V」でも採用している新開発のヘッドで対応した。コストをかけられる高級機がグローバルモデルに選ばれたのは必然でもあった。(BCN・日高 彰)