「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」を徹底分析、渋谷の今を体現する
5月12日に「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」がオープンした。これまでドン・キホーテのエンタテイメント性を象徴するアイコンとして機能していた「渋谷店」の後継店舗となる新店は、ドン・キホーテが推進する“地域密着型”を突き詰め、単なる旗艦店ではなく進化型旗艦店と位置づけられている。
「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」が5月12日にオープン
フロア構成は地下1階~地上6階の7フロア。売場面積は5522平方メートル。「MEGAドン・キホーテ」は、ドン・キホーテが郊外を中心に展開する業態で、生鮮食品も取り扱う。“若者の街”という渋谷のアイデンティティは残しつつも、周辺で生活・商売を営む幅広い世代や訪日外国人の需要を考慮し、多様性を意識した。
正面入口はBunkamura通りに面しており、。両側には熱帯魚が遊泳する水槽を設置している。中目黒本店でも同様の仕掛けがみられるが、専務取締役 兼 CFOの高橋光夫氏によると「動きのある導線で通行人の目を引くため」とのことだ。
熱帯魚が遊泳する水槽が目を引く正面入口
ちなみに、センター街に面した裏口には、入口が二つあり、それぞれ1階と生鮮食品を販売する地下1階に通じている。そのため、スーパーを利用する顧客は他の売り場を通ることなく、目的地にたどりつける。顧客の回遊に知恵を巡らせるドンキとしては珍しい配慮だが、それだけ観光客と地域住人のセグメントを区分しているということだろう。
センター街に面した二つの裏口は1階と地下1階に直結する
正面入口をくぐると、まず目につくのが「お土産コーナー」だ。東京土産かと思いきや、パッケージに踊るのは「渋谷」の文字。「渋谷の忠犬」や「絶滅危惧種みいつけた(ガングロいちごチョコ餅)」など、地域色を全面に押し出した品が並ぶ。以前から渋谷区役所や町内会と連携していた渋谷店だが、「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」はさらに関係性を強化。渋谷区観光協会が推奨するお土産の先行販売などを行う。
1階の入口付近にあるお土産コーナー、渋谷の色が強い
渋谷のお土産の裏には大阪・博多・広島など、ほかの都市のお土産もある。訪日外国人に人気の高いドン・キホーテだが、渋谷店は新宿や池袋など他の都市型店舗と比較すると集客力が弱かったという。今回の施策には、インバウンド需要をさらに取り込みたいという狙いがあるようだ。
奥には日本各地のお土産も
同フロアではこのほか、化粧品や香水を販売する。インバウンドで人気のブランド品・時計や医療品、電化製品は見当たらなかった。実はこれはドンキの戦略。訪日外国人のお目当てとするカテゴリを各フロアに散らすことで、店舗内での回遊向上を図っているのだ。医療品は3階、ブランド品・時計は4階、電化製品は最上階の6階と、上から下まで隈なく店を回る必要のある配置になっている。
(左)3階の医療品売り場(中)4階のブランド品・時計売り場(右)6階の電化製品売り場
各フロアの通路やPOPも従来のドン・キホーテとは異なる。圧縮陳列は健在なものの、通路は大人3人が余裕をもって歩けるほど広い。また、名物である手書きPOPは売り場によって使い分ける。パーティグッズやキャラクターグッズの売り場は賑やかなPOPで彩られているが、女性向け衣料品や化粧品売り場は清潔感を重視。明確に色分けされている。
従来のドン・キホーテより広い通路
(左)POPが賑やかなパーティグッズ売り場
(右)POPを抑えた清潔感重視の化粧品売り場
6階の電化製品も他の店舗とはラインアップが微妙に異なる。定番アイテムよりデザイン性の高さやユニークさを売りにした一風変わった商品が目立つ。スマートフォンの充電ケーブルであれば、実物を手に取ってじっくり検分できる工夫も。VRデバイスやiQOSケースなどトレンド物も充実する。
スマートフォンの充電ケーブル売り場
iQOSケースやパーソナルモビリティなどトレンド物も充実
注目を集める地下1階の生鮮食品売り場は、さらに他のフロアと雰囲気を異にする。暖色の照明を配し、陳列は物量より見栄えを意識。少しオシャレなスーパーといった装いだ。青果・精肉・鮮魚・惣菜を網羅し、周辺住人から飲食店関係者まで幅広い客層を想定する。都市部は物価が割高になりがちだが、ドン・キホーテのモットーである「地域最安値」を妥協なく追求するという。
生鮮食品売り場
最後にドン・キホーテ初となる試みを二つ、紹介したい。まず、地下1階、1階、2階に設置したセミセルフレジ。会計時にスタッフがバーコードを読み取り、精算するまでは通常のレジと変わらないが、その後、代金はスタッフに手渡すのではなく、隣のセルフレジで自ら支払う。支払い方法は現金もしくはオリジナル電子マネーの「majica(マジカ)」。今後、さらに決済手段を増やしていく予定だ。「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」で試験的に運用し、状況をみながら他店にも拡大していく方針だ。
ドン・キホーテ初の試みとなるセミセルフレジ
次に、性別を問わず利用できるジェンダーフリートイレの設置。渋谷区は日本で初めて同性パートナーシップ条例を成立させるなど、多様性を尊重するダイバーシティ型のまちづくりを推進する。今回の取り組みは、そんな渋谷区の理念を体現するものだ。ショッピングと直接リンクしない部分の配慮だが、ドン・キホーテが掲げる“地域密着”の深さがうかがえる。1階のセンター街入口付近には「手招きハチ像」が設置され、オープン日となる5月12日に除幕式が行われた。ハチ公銅像維持会の賛同のもと、渋谷の新たなランドマークを目指すという。
渋谷区の理念を体現するジェンダーフリートイレ
「渋谷本店」は現在が完成形ではない。7月のオープンを目指す渋谷にちなんだモバイルフード売り場や1階のイベントスペースを活用した集客など、新しい施策を矢継ぎ早に繰り出す予定だ。「渋谷の街の変化に合わせて柔軟に進化する店舗に」というコンセプトは、都市型店舗の新しいモデルケースとなる可能性も秘めている。(BCN・大蔵 大輔)
「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」が5月12日にオープン
フロア構成は地下1階~地上6階の7フロア。売場面積は5522平方メートル。「MEGAドン・キホーテ」は、ドン・キホーテが郊外を中心に展開する業態で、生鮮食品も取り扱う。“若者の街”という渋谷のアイデンティティは残しつつも、周辺で生活・商売を営む幅広い世代や訪日外国人の需要を考慮し、多様性を意識した。
正面入口はBunkamura通りに面しており、。両側には熱帯魚が遊泳する水槽を設置している。中目黒本店でも同様の仕掛けがみられるが、専務取締役 兼 CFOの高橋光夫氏によると「動きのある導線で通行人の目を引くため」とのことだ。
熱帯魚が遊泳する水槽が目を引く正面入口
ちなみに、センター街に面した裏口には、入口が二つあり、それぞれ1階と生鮮食品を販売する地下1階に通じている。そのため、スーパーを利用する顧客は他の売り場を通ることなく、目的地にたどりつける。顧客の回遊に知恵を巡らせるドンキとしては珍しい配慮だが、それだけ観光客と地域住人のセグメントを区分しているということだろう。
センター街に面した二つの裏口は1階と地下1階に直結する
正面入口をくぐると、まず目につくのが「お土産コーナー」だ。東京土産かと思いきや、パッケージに踊るのは「渋谷」の文字。「渋谷の忠犬」や「絶滅危惧種みいつけた(ガングロいちごチョコ餅)」など、地域色を全面に押し出した品が並ぶ。以前から渋谷区役所や町内会と連携していた渋谷店だが、「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」はさらに関係性を強化。渋谷区観光協会が推奨するお土産の先行販売などを行う。
1階の入口付近にあるお土産コーナー、渋谷の色が強い
渋谷のお土産の裏には大阪・博多・広島など、ほかの都市のお土産もある。訪日外国人に人気の高いドン・キホーテだが、渋谷店は新宿や池袋など他の都市型店舗と比較すると集客力が弱かったという。今回の施策には、インバウンド需要をさらに取り込みたいという狙いがあるようだ。
奥には日本各地のお土産も
同フロアではこのほか、化粧品や香水を販売する。インバウンドで人気のブランド品・時計や医療品、電化製品は見当たらなかった。実はこれはドンキの戦略。訪日外国人のお目当てとするカテゴリを各フロアに散らすことで、店舗内での回遊向上を図っているのだ。医療品は3階、ブランド品・時計は4階、電化製品は最上階の6階と、上から下まで隈なく店を回る必要のある配置になっている。
(左)3階の医療品売り場(中)4階のブランド品・時計売り場(右)6階の電化製品売り場
各フロアの通路やPOPも従来のドン・キホーテとは異なる。圧縮陳列は健在なものの、通路は大人3人が余裕をもって歩けるほど広い。また、名物である手書きPOPは売り場によって使い分ける。パーティグッズやキャラクターグッズの売り場は賑やかなPOPで彩られているが、女性向け衣料品や化粧品売り場は清潔感を重視。明確に色分けされている。
従来のドン・キホーテより広い通路
(左)POPが賑やかなパーティグッズ売り場
(右)POPを抑えた清潔感重視の化粧品売り場
6階の電化製品も他の店舗とはラインアップが微妙に異なる。定番アイテムよりデザイン性の高さやユニークさを売りにした一風変わった商品が目立つ。スマートフォンの充電ケーブルであれば、実物を手に取ってじっくり検分できる工夫も。VRデバイスやiQOSケースなどトレンド物も充実する。
スマートフォンの充電ケーブル売り場
iQOSケースやパーソナルモビリティなどトレンド物も充実
注目を集める地下1階の生鮮食品売り場は、さらに他のフロアと雰囲気を異にする。暖色の照明を配し、陳列は物量より見栄えを意識。少しオシャレなスーパーといった装いだ。青果・精肉・鮮魚・惣菜を網羅し、周辺住人から飲食店関係者まで幅広い客層を想定する。都市部は物価が割高になりがちだが、ドン・キホーテのモットーである「地域最安値」を妥協なく追求するという。
生鮮食品売り場
最後にドン・キホーテ初となる試みを二つ、紹介したい。まず、地下1階、1階、2階に設置したセミセルフレジ。会計時にスタッフがバーコードを読み取り、精算するまでは通常のレジと変わらないが、その後、代金はスタッフに手渡すのではなく、隣のセルフレジで自ら支払う。支払い方法は現金もしくはオリジナル電子マネーの「majica(マジカ)」。今後、さらに決済手段を増やしていく予定だ。「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」で試験的に運用し、状況をみながら他店にも拡大していく方針だ。
ドン・キホーテ初の試みとなるセミセルフレジ
次に、性別を問わず利用できるジェンダーフリートイレの設置。渋谷区は日本で初めて同性パートナーシップ条例を成立させるなど、多様性を尊重するダイバーシティ型のまちづくりを推進する。今回の取り組みは、そんな渋谷区の理念を体現するものだ。ショッピングと直接リンクしない部分の配慮だが、ドン・キホーテが掲げる“地域密着”の深さがうかがえる。1階のセンター街入口付近には「手招きハチ像」が設置され、オープン日となる5月12日に除幕式が行われた。ハチ公銅像維持会の賛同のもと、渋谷の新たなランドマークを目指すという。
渋谷区の理念を体現するジェンダーフリートイレ
「渋谷本店」は現在が完成形ではない。7月のオープンを目指す渋谷にちなんだモバイルフード売り場や1階のイベントスペースを活用した集客など、新しい施策を矢継ぎ早に繰り出す予定だ。「渋谷の街の変化に合わせて柔軟に進化する店舗に」というコンセプトは、都市型店舗の新しいモデルケースとなる可能性も秘めている。(BCN・大蔵 大輔)