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UPQがスマホで焼損事故、4Kディスプレイの誤記に続き弱点が露呈

オピニオン

2017/05/09 18:05

 やはり1人ですべてを手がけるのには無理があったのか――。スタートアップのリーダー的存在のUPQ(アップ・キュー)が窮地に追い込まれている。同社は5月9日、2015年12月に発売したSIMフリースマートフォン「UPQ Phone A01X」のバッテリーが過熱して焼損し、重大製品事故2件、非重大製品事故2件があったと発表した。


UPQの中澤優子CEO代表取締役(17年2月末に開催したBCNの座談会で撮影)

 「UPQ Phone A01X」の充電中にバッテリーが過熱、焼損した事故については、ユーザーから直接UPQに16年に2件、17年に2件の連絡があった。16年9月29日に1件目のユーザーから連絡を受けて、UPQは消費者庁と経済産業省の指導のもとNite(製品評価技術基盤機構)を通して解析を依頼した結果、充電時のバッテリーが焼損元であることが確認できた。消費者庁によると、製品そのものに原因があるかどうかは現在究明中だという。
 

バッテリーが焼損元で事故につながったUPQのSIMフリースマとフォン「UPQ Phone A01X」

 その後も新たに重大製品事故、非重大製品事故を含む3件の事故が発生。重大製品事故の1件は、製品を充電中に製品とその周辺が焼損した火災だ。17年3月28日に発生し、同年5月9日に消費者庁が発表した。UPQ側は、以前の4件と同様にバッテリーが原因である可能性が高いとするが、こちらも原因は究明中である。

 なお、この事故では、消費者庁に4月27日に報告が受理されているが、消費生活用製品安全法では事業者が事故を認識した日を含めて10日以内の報告を義務付けている。UPQは11日目の報告で、提出期限を超過していたことから消費者庁が厳重注意をした。

 UPQでは「お客様窓口」を開設。電話はフリーダイヤル0120-291-700で、PHS・携帯電話からも利用可能。受付時間は平日10時~18時。NTTコミュニケーションズ以外の050番号(IP電話)を利用の顧客はフリーダイヤルを利用できないので、03-6629-7836宛てとなる。

 メール窓口は24時間対応(返信は平日10時~18時)で、support@upq.meもしくはhttp://upq.me/jp/contact/で受け付けている。

スタートアップの武器が弱点に

 UPQの中澤CEO代表取締役は、2015年8月6日にほぼ一人で7カテゴリー、24製品の企画、製造、販売を手掛けてスタートアップとして華々しくデビューし、脚光を浴びた。今回、問題になった「UPQ Phone A01X」は、それからわずか4か月後に発表した後継機で、ビックカメラやヤマダ電機、ヨドバシカメラ全店など、家電量販店での扱いも増やしていた。

 直近でも、UPQブランドの商品は4月14日に広島駅南口にオープンした「エディオン蔦屋家電」で常設ブースを展開したり、27日にはカー用品のオートバックスセブンが運営する旗艦店「スーパーオートバックス東京ベイ東雲」で初展開するなど、リアル店舗の販売チャネルを次々に拡大している。

 一方で、17年4月12日には50型と65型の4Kディスプレイの3機種「Q-display 4K50/Q-display 4K50X/Q-display 4K65 Limited model 2016/17」で、120Hzの倍速駆動のスペック表記が60Hzの誤りだったと発表。同じ製品を扱っていたDMM.comでは購入者からの返金受付で応じたのに対し、UPQはお詫びとして2000円のAmazonギフト券を配るといった対応の違いが、インターネットで非難の的となったばかり。

 BCNでは、今年2月末に実施した「スタートアップメーカー座談会」でUPQの中澤CEO代表取締役を招き議論した。その際も、少数精鋭のスタートアップならではの企画アイデアや自由なカラバリ展開、それを実現するスピード感が最大の武器であることを熱く語った。しかし今回は、スタートアップの武器であるはずのスピードが、弱点として露呈してしまった形だ。

 実質、中澤CEO代表取締役一人の会社であるUPQは、日本のスタートアップ市場を引っ張ってきたし、スタートアップを目指す若い才能の目標にもなっている存在。大手家電量販店が注目するのも、既存の大手家電メーカーが再編などで揺れる中、活気のある商品や品揃えに魅力を感じているからだろう。大きな難局をどのように乗り切るのか、中澤CEO代表取締役の振る舞いに注目が集まる。(BCN・細田 立圭志)