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ローソンの白石卓也執行役員、「レジロボ」で試したかったこととは

インタビュー

2017/04/21 12:00

 ローソンは2016年12月から17年2月にかけて、パナソニックと共同で大阪・守口市の「ローソンパナソニック前店」で無人レジ機「レジロボ」と「RFID」(電子タグ)の実証実験を行った。小売業の生産性向上の切り札として注目される「レジロボ」で試したかったこととは何か。「今、メスを入れないと5年先、10年先はない」と危機感をあらわにするローソン執行役員の白石卓也業務システム統括本部副本部長に聞いた。

取材・文/細田 立圭志、写真/大星 直輝

・前半<生産性向上の切り札はロボット、AI、ICタグ>から読む

レジ業務からの解放を目指す

―― 顧客がバーコードをスキャンした商品を「スマートバスケット」に入れ、専用レジに置くだけで精算と袋詰めが完了する「レジロボ」の実証実験の成果はいかがでしたか。
 

最新テクノロジーの導入やシステム内製化に向けた組織づくりを推進する白石卓也執行役員

白石 レジロボの最終的な目標は、クルー(販売員)のレジオペレーションからの解放です。そのために、お客様がどれだけレジロボにアプローチしていただけるかの実証実験をしました。

 来店した2割の方にレジロボを使っていただけました。1日、1000人の来店数があれば200人のお客様がレジロボを使うので、単純にクルーのレジ業務の2割の工数削減につながりました。もちろん、お客様にとってはレジスピードが早くなるメリットが得られます。
 

夜間のオペレーション効率が上がったと語る

 具体的な数字はいろいろありますが、見えない部分のメリットにも注目しています。例えば、夜間は少ない人数でクルーたちは(在庫管理や清掃など)いろいろな作業をしなければなりません。しかし、お客様が来店するとオペレーションを途中でストップしなければなりません。来店客が気になってしまい、作業に集中できなくなってしまうのです。

 しかし、来店客のレジ業務や誘導をロボットができるようになれば、問い合わせを受けたときにだけ対応すればよく、クルーは作業を止めることなく集中できます。

 来店客を常に気にしながらする作業と、集中して行う作業とでは、後者の方がより生産性が高まるのは明白です。実証実験では、こうした見えないメリットを得られたことが大きかったですね。

「AIは特別」の認識はない

―― ロボットとともにAI(人工知能)も、小売業にものすごいスピードで入り込んでいますね。

白石 ディープラーニングやニューラルネットワークなどの本来意味するAIの話から、現行のロジックのかたまりのAIまで含めて、広い意味ですべての業務システムの裏ではAIが走っています。

 ラインでお客様とコミュニケーションするローソン公式キャラクターの「ローソンクルー♪あきこちゃん」をはじめ、発注、需要予測、店内カメラの導線解析にもバックにはAIが入っています。今後は(商品やサービスなどの)テストや開発の自動化にもAIが入ってくるでしょうから、AIが何か特別なものという認識はありません。
 

ローソン公式キャラクターの「ローソンクルー♪あきこちゃん」

 Javaなどと同じように、AIエンジニアがこれからますます重要になってくるでしょう。われわれも社内で採用して育成していこうと考えています。

―― 小売業はITの最前線になっていきますね。

白石 毎日1000万人のお客様に何かしらの商品を買っていただいています。その裏では、倍以上の買っていただけなかったお客様がいるのです。こうしたお客様が、どこで立ち止まって、なぜ商品を手に取られなかったのかが分析できるようになります。

 お客様の趣味、嗜好はスピーディーに変化し、多様化していて、リアルタイムにつかむ必要があります。SNSなどの発達で、旬な商品が2、3日で終わってしまうことだって普通にあるのです。昔のSNSがなかった時代とはレベルが異なる、次のステージへと競争軸が移っているのです。

・<なぜRFIDは単品管理にこだわるのか>に続く

・【動画】役員が語る『会社の夢』― ローソン 白石卓也執行役員