アイロボットが日本法人を設立、ルンバの市場拡大に拍車

経営戦略

2017/04/12 17:19

 ロボット掃除機「ルンバ」を販売する米アイロボット社は4月11日、営業を開始した日本法人アイロボットジャパンのローンチプレスカンファレンスを開催した。


左から日本法人の代表執行役員社長に就任した挽野元氏、
米アイロボット社のCEO 兼 共同創設者のコリン・アングル氏

 2016年11月21日に米アイロボット社は、日本における販売代理店を担当していたセールス・オンデマンドからアイロボット製品販売事業を買収すると発表。年度内に手続きが完了し、4月3日に日本法人アイロボットジャパンを設立、営業を開始した。

 02年に北米で販売を開始、04年に日本市場に進出したルンバは、今年で15周年を迎える。米アイロボット社のCEO 兼 共同創設者のコリン・アングル氏は、「ルンバの発表時、ロボット掃除機というカテゴリはなかなか信用されなかったが、15年間で大きく状況が変わり、掃除機全体の約20%を占めるまでに成長した」と、市場の変化を説明した。
 

米アイロボット社のCEO 兼 共同創設者のコリン・アングル氏

 市場の拡大もさることながら、アイロボットも継続的に成長を続けている。「新しいカテゴリを開拓した企業というのは、時間の経過とともにシェアが低下するものだが、ルンバは同カテゴリのグローバル売り上げで約6割のシェアをキープしている」と、アングル氏は業界のパイオニアとしての地位を堅持していることを強調。アイロボットが休みなくイノベーションに挑戦し、改良を重ねてきたことを理由に挙げた。
 

15年間、コンスタントに進化を遂げてきたルンバ。
黎明期から現在までグローバルで6割を超えるシェアを堅持している

 アイロボットにとって日本は北米に次ぐ第2位の市場で、マーケットシェアは北米では88%を占めるのに対して日本では55%。過半数ではあるものの、まだ伸びしろはあると考えている。「よく言われることだが、日本市場での成長はグローバルでの成功に直結する。今回の日本法人設立もマーケットを重要視しているがゆえの決断だ」という言葉にも表れているように、日本だけでなく全世界のマーケットを見据えた戦略でもあるようだ。
 

全世界と日本のロボット掃除機市場とシェア

 日本法人の代表執行役員社長に就任したのは、音響機器メーカーであるボーズの元社長・挽野元氏だ。ボーズ時代にアジア広域で営業・販路開拓を行い、マーケットポジションの飛躍に貢献した実績が買われた。

 就任の挨拶で挽野氏は、「アイロボット社の日本法人を引き受けた理由は二つある」と切り出した。「一つは、人の生活に与える影響力だ。シニアの方や足が悪い方はまるで家族のようにルンバに接している。そんな家電はなかなかないと思う。二つめは、米アイロボットのすべての社員が『技術と人間らしさの融合』というテーマに取り組んでいるということだ。アイロボットのロゴは『I』と『R』を組み合わせたものだが、この意味は『人間』と『ロボティクス』を指す。日本法人の社員にしても共有している思いは同じだと感じた」。
 

大任を引き受けた理由を語る挽野元代表執行役員社長

 今後の戦略としては、(1)顧客ニーズを捉えた製品開発(2)ロボット掃除機のさらなる普及拡大(3)顧客との継続的な関係性の強化の3点を挙げる。

 (1)については、エンドユーザーとの距離を近づけ、従来以上に積極的なマーケットリサーチを行っていく。(2)では具体的な数値として世帯普及率10%を目指す。現在は北米で9%、日本で4%ということだが、裾野を拡大していく計画だ。(3)はすでにルンバを使用している顧客に、新しい使い方や機能を提案し、関係性を強化していくことにしている。
 

挽野氏が掲げる今後の戦略

 今回のプレスカンファレンスでは、新製品に関する情報はなかったが、アングル氏・挽野氏のいずれのコメントにも「コネクティビティ」という単語が頻出し、今後さらに先進的なIoT機能を実装するのではないかと予感させた。ルンバは単なるロボット掃除機からIoTの中核をなすコネクティビティロボットに進化できるか。15年目のルンバ、1年目のアイロボットジャパンが打ち出す戦略が、ロボット掃除機を次の段階に進めるうえでの推進力になることを期待したい。(BCN・大蔵 大輔)