小売業全体の1%強 「家電量販店」の実態がわかる3つの数字
【不定期連載・家電量販店白書】 カメラやPC、生活家電から日用品まで、さまざまなアイテムを幅広く取り扱う家電量販店の就業人口は、一説に8~10万人といわれている。
さまざまな業界の動向やシェアを分析、研究しているWebサイト「業界動向サーチ」によると、上場している主要家電量販店15社の売上高を合計した業界規模は約5兆6000億円(2015年7月~15年6月決算)、正社員数は約4万人、平均年収は443万円(平均年齢36.2歳、平均勤続年数10.7年)。ヨドバシカメラやAmazon.co.jpなど非上場の有力企業もあり、業界全体の売上高はもっと高いだろう。
家電量販店以外にも、ホームセンターやライフスタイルショップ、キャリアショップ、モバイルグッズ専門店、メーカー直販サイト、「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などのECモールに出店するインターネット専業ショップなど、さまざまなジャンル・業態の店舗が家電やデジタル製品を販売しており、それらを含めた「家電小売業」の売上高や就業人口は、狭義の「家電量販店」の数字を大きく上回ると推測される。
スタートアップと呼ばれるベンチャー企業を中心に、クラウドファンディングで資金を募り、プロジェクト達成と引き換えに先着順で販売するケースも増えており、デジタル製品の開発・販売と、ネットビジネスとの境目もなくなってきた。業界の全貌はますます見えにくくなり、リアル店舗を中心に、サービスやサポート、体験型イベントなどに力を入れ、純粋な小売業からの脱却を目指す動きも目立つ。
今回から、不定期連載「家電量販店白書」として、就業人口など、家電量販店の「実態」を手始めに、業界に関するトピックスを紹介していく。
(1)店舗数(リアル店舗)
「平成26年商業統計」によると、全国の家電大型専門店(以下、家電量販店)の事業所数(店舗数)は、調査時の2014年7月1日時点で2382店舗だった。グループ間の統廃合を含め、各社ともスクラップ&ビルドが進んでおり、17年3月時点の店舗数は、若干の微増か同程度と推測される。
※家電大型専門店…日本標準産業分類の電気機械器具小売業(中古品を除く)または電気事務機械器具小売業(中古品を除く)に属する事業所のうち、売場面積が500m2以上の店舗を10店舗以上有する企業
(2)店舗形態・売場面積
売場面積の平均は約2700m2。駐車場の有無とタイプで分類すると、郊外ロードサイドの独立型店舗が該当する「専用駐車場あり」は60.5%、複数の独立型店舗が一か所に立ち並び、駐車場を共有する方式の郊外ロードサイド店やショッピングモールなどが該当する「共有駐車場あり」は29.3%、「駐車場なし」は残り10.2%だった。
都市型店舗の場合、以前は、閉店した百貨店の建物に居抜きで入居するケースが多かったが、最近は、再開発で誕生した駅前や駅直結の複合商業施設に中核テナントとして出店するケースが目立つ。「共有駐車場あり」の内訳がわからないため、正確な比率はわからないが、そうしたテナント出店やインショップが増えている印象とは裏腹に、総数はロードサイドの独立型店舗のほうが多く、中心的な出店形態だ。
(3)就業人口
役員や臨時雇用者、派遣などを含めた就業者数は約8万5000人。男女比は、就業者全体では男性63.3%、女性36.7%だが、正規雇用は男性、パート・アルバイトなど非正規雇用は女性のほうが多い。
デパートやスーパーなど、小売業全体の事業所数は約77万5000、就業者数は約620万人なので、小売業全体に占める割合はわずか1.4%。生活家電などを販売するホームセンターをあわせても3.8%にとどまる。
BCNのインタビュー取材に対し、業界団体の会長や家電量販店各社の経営者層は、業界全体の課題として、販売スタッフの確保や人材育成の難しさを挙げた。はじめての就職先、転職先として魅力的な業界にするにはどうすればいいのか。デジタル製品・家電を取り扱う店舗の広がりにあわせた、広義の「家電小売業」の実態を示す数値指標が欲しいところだ。(BCN・嵯峨野 芙美)
さまざまな業界の動向やシェアを分析、研究しているWebサイト「業界動向サーチ」によると、上場している主要家電量販店15社の売上高を合計した業界規模は約5兆6000億円(2015年7月~15年6月決算)、正社員数は約4万人、平均年収は443万円(平均年齢36.2歳、平均勤続年数10.7年)。ヨドバシカメラやAmazon.co.jpなど非上場の有力企業もあり、業界全体の売上高はもっと高いだろう。
家電量販店以外にも、ホームセンターやライフスタイルショップ、キャリアショップ、モバイルグッズ専門店、メーカー直販サイト、「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などのECモールに出店するインターネット専業ショップなど、さまざまなジャンル・業態の店舗が家電やデジタル製品を販売しており、それらを含めた「家電小売業」の売上高や就業人口は、狭義の「家電量販店」の数字を大きく上回ると推測される。
スタートアップと呼ばれるベンチャー企業を中心に、クラウドファンディングで資金を募り、プロジェクト達成と引き換えに先着順で販売するケースも増えており、デジタル製品の開発・販売と、ネットビジネスとの境目もなくなってきた。業界の全貌はますます見えにくくなり、リアル店舗を中心に、サービスやサポート、体験型イベントなどに力を入れ、純粋な小売業からの脱却を目指す動きも目立つ。
今回から、不定期連載「家電量販店白書」として、就業人口など、家電量販店の「実態」を手始めに、業界に関するトピックスを紹介していく。
家電量販店の就業人口は全国約8万人、小売業の1%強
前置きが長くなってしまったが、経済産業省の「平成26年(2014年)商業統計」をもとに、家電量販店の「実態」を数字で追った。(1)店舗数(リアル店舗)
「平成26年商業統計」によると、全国の家電大型専門店(以下、家電量販店)の事業所数(店舗数)は、調査時の2014年7月1日時点で2382店舗だった。グループ間の統廃合を含め、各社ともスクラップ&ビルドが進んでおり、17年3月時点の店舗数は、若干の微増か同程度と推測される。
※家電大型専門店…日本標準産業分類の電気機械器具小売業(中古品を除く)または電気事務機械器具小売業(中古品を除く)に属する事業所のうち、売場面積が500m2以上の店舗を10店舗以上有する企業
(2)店舗形態・売場面積
売場面積の平均は約2700m2。駐車場の有無とタイプで分類すると、郊外ロードサイドの独立型店舗が該当する「専用駐車場あり」は60.5%、複数の独立型店舗が一か所に立ち並び、駐車場を共有する方式の郊外ロードサイド店やショッピングモールなどが該当する「共有駐車場あり」は29.3%、「駐車場なし」は残り10.2%だった。
都市型店舗の場合、以前は、閉店した百貨店の建物に居抜きで入居するケースが多かったが、最近は、再開発で誕生した駅前や駅直結の複合商業施設に中核テナントとして出店するケースが目立つ。「共有駐車場あり」の内訳がわからないため、正確な比率はわからないが、そうしたテナント出店やインショップが増えている印象とは裏腹に、総数はロードサイドの独立型店舗のほうが多く、中心的な出店形態だ。
(3)就業人口
役員や臨時雇用者、派遣などを含めた就業者数は約8万5000人。男女比は、就業者全体では男性63.3%、女性36.7%だが、正規雇用は男性、パート・アルバイトなど非正規雇用は女性のほうが多い。
デパートやスーパーなど、小売業全体の事業所数は約77万5000、就業者数は約620万人なので、小売業全体に占める割合はわずか1.4%。生活家電などを販売するホームセンターをあわせても3.8%にとどまる。
BCNのインタビュー取材に対し、業界団体の会長や家電量販店各社の経営者層は、業界全体の課題として、販売スタッフの確保や人材育成の難しさを挙げた。はじめての就職先、転職先として魅力的な業界にするにはどうすればいいのか。デジタル製品・家電を取り扱う店舗の広がりにあわせた、広義の「家電小売業」の実態を示す数値指標が欲しいところだ。(BCN・嵯峨野 芙美)