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<エアコンメーカー座談会・2017>メーカー横断で取り組むべきこと

特集

2017/02/24 18:00

 家電量販店の売上高で高い構成比を占めるエアコン。しかし、歴史的な経緯や業界の慣例で固定化されてきた仕様を、1社だけで打ち破るのは難しい。将来に向けて業界が“ひと皮むける”ためには何が必要かを議論した。

メーカー横断で取り組むべきこと

エネルギー効率向上と幅800mmのジレンマ

 エネルギー効率を高めるには、製品内の熱交換器は大型化せざるを得ない。一方、日本の住宅事情に合わせるため、家庭用ルームエアコンの室内機の幅は、いわゆる半間サイズの幅800mm以内であることが求められてきた。このため、製品は奥行き方向に伸ばして容積を稼ぐしかない。室内機の、壁からの「出っ張り」量が年々大きくなっているのはこのためだ。

家の中の「快適さ」はエアコンだけでは実現できない

 しかし現代の家庭を見回すと、半間サイズである必要のない場所に室内機が取り付けられていることも多い。室内機の幅を広げる代わりによりスリムな形状とし、目立たないスタイルを実現するというアプローチもあっていいはずだ。

 座談会参加のメーカーからも、社内的にはそのような議論が行われているという声があがっていた。しかし、エアコンの売り場は限られたスペース内で幅800mmの製品をできるだけ多数陳列できるように設計されており、その枠をはみ出た製品はそもそも店頭に並べられないおそれがある。どうしても各社横並びのサイズとならざるを得ないのが現状だが、枠を打ち破るような挑戦をしたいという思いは少なからず業界内にあるようだ。
 

富士通ゼネラルの国内民生営業本部国内営業推進統括部 商品戦略部の田邉恵史担当部長

 また、室外機の大型化・重量化も進んでいる。工事業者のベテラン作業員が高齢化するなか、これ以上製品が重くなると取り付け作業そのものが困難になるおそれもある。1人でできた作業に2人が必要となった場合、人的コスト増をどこかで吸収しなければならない。

 省エネ性能の高いエアコンを製造するには、部材や加工にもコストやエネルギーがかかる。座談会では「スペック上の省エネ化が本当に地球温暖化抑止に貢献しているのか」を、あらためて考えるべきという意見も出ていた。

将来のエアコンは「部屋」から「家」へ

 エアコンのカタログに必ず並ぶ「快適」の文字。かつて、真夏の猛暑や不快な梅雨を快適に過ごすための道具として、エアコンはある意味で絶対的な存在だった。

 しかし、家庭の複数の部屋にエアコンが取り付けられ、あたり前の存在になった現代、エアコンは快適な生活空間をつくる手段のひとつに過ぎない。座談会では「例えば、『快適に眠る』ための空間はエアコンだけはなく、寝具や照明など、他の製品との連携によって実現されるもの」といった見方も示されていた。ネットワークを介した家電の連携が少しずつ広がっているが、快適な住空間をつくり上げるため「エアコンだけで実現できないことにも取り組んでいくのが、エアコンの進化の方向かもしれない」という意見があがっていた。
 

意見を交わす参加者

 従来の家電連携は、自社製品の間でのみ対応し、顧客を囲い込むための方策だった。しかしユーザーの生活空間を快適にすることが目的となれば、他社の製品やクラウドサービスとの連携も当然必要となり、業界横断での取り組みが求められる。参加メーカーから出た「『部屋中を快適に』から『家全体を快適に』に、私たちも考え方を変えていく必要がある」という声が印象的だった。(BCN・日高 彰)
 
<エアコンメーカー座談会・2017>
開催日:2017年1月25日
場所:BCN 会議室
参加メーカー:シャープ、ダイキン工業、東芝ライフスタイル、日立ジョンソンコントロールズ空調、富士通ゼネラル(50音順)

▼記事一覧
https://www.bcnretail.com/market/detail/20170224_42313.html
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年3月号から転載