<TopVision>東芝ライフスタイル石渡社長が語る、「走りながら創る」考え方(前編)
東芝は2016年6月、グループ内で白物家電を管轄していた東芝ライフスタイルの株式の8割を中国・マイディアグループ(美的集団)に売却した。同社の石渡敏郎取締役社長に、マイディア傘下入りによる戦略の変化や今後の展望を聞いた。
取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/日高 彰、写真/瀬之口 寿一
「東芝」の家電に再び投資できる体制が整った
東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長
石渡 近年、東芝グループでは半導体事業や重電事業に重点をおいてきたため、白物家電事業の優先度は相対的に低くなっており、なかなか思うように投資を行えなかったのが実情です。しかし、マイディアグループは白物家電の専業メーカーですから、家電に投資することは当り前です。マイディアに移ったことで、東芝ブランドの家電の開発や、製品訴求に再び注力する体制が整ったと考えています。
実際、マイディアから私に対してはかなりの権限が委譲されており、来シーズンの製品開発のための資金投入や、毀損した東芝ブランドを回復するための広告など、積極的な投資を行っています。
ただ、お金を使う以上、それに見合う利益を上げる責任があります。もちろん東芝時代も責任はありましたが、現在の体制になって「権限を委譲し、成功したら報酬を与え、失敗したら責任を追及する」というマネジメント方針がより明確になりました。
道越 異なる企業文化に、社員の方々が戸惑う場面もあったのではないでしょうか。
石渡 良い意味で「世の中には自分たちと違う価値観がある」という意識が社内に浸透しつつあります。例えば、使用環境がこれだけ変化しているのに、過去から積み上げてきた品質基準を長年使い続けていることに気づきました。それは製品の価格に直接跳ね返っているんですね。もちろん、安全に関する基準はゆずれない一線があり、これは東芝として変えるつもりはありません。しかし、個々の製品仕様に関しては、オーバースペックな部分がないか、一から見直そうという動きが現場でも生まれています。
石渡 マイディアは年間3000万台以上のルームエアコンを生産しており、この規模を活用してエアコンの製品ラインアップ、価格競争力は大きく向上させられると考えています。また、製品の幅としては、現在東芝にはない300リットル以下の冷蔵庫、17リットル以下の単機能電子レンジといったカテゴリを充実させていきます。
道越 東芝ライフスタイル側としてはどのような方針で製品企画・開発に取り組まれていますか。
石渡 製品のサイズは変えずに、中身の容積を大きくするという戦略を複数の製品で共通してとっています。例えば、冷蔵庫では幅685mmで600リットルの大容量を実現しました。冷蔵庫の「壁」部分を薄くしながら、エネルギー効率は落としていません。
また、ドラム式洗濯乾燥機では、ドラムの振動を抑えるアクティブサスペンションの開発により、横幅600mmで洗濯・脱水容量11kgに対応した。 スペースがない、廊下を通せないといった理由で大型製品の購入をあきらめていたお客様に、大容量の価値をお届けします。また、東芝には数々の省エネ技術があります。マイディアグループとの協業を通じ、このような優れた技術を世界にお伝えしたいと考えています。
・後編<IoTビジネスは走りながら創る>に続く
6ドア冷凍冷蔵庫
ベジータ GR-K600FWX
エチレンガスの分解性能を高め野菜の保存環境を向上させた「新鮮 摘みたて野菜室」を搭載。「ツイン冷却システム」や真空断熱材の採用で、高い省エネ性能と幅685×奥行745mmの省スペースを両立した。
・動画インタビュー・トップに聞く『会社の夢』
取材/道越一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト
文/日高 彰、写真/瀬之口 寿一
「東芝」の家電に再び投資できる体制が整った
東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長
マイディア傘下入りで「権限と責任」が明確に
道越 昨年6月、世界で白物家電事業を展開するマイディアグループ(美的集団)の傘下に移られました。戦略にはどのような変化が生まれましたか。石渡 近年、東芝グループでは半導体事業や重電事業に重点をおいてきたため、白物家電事業の優先度は相対的に低くなっており、なかなか思うように投資を行えなかったのが実情です。しかし、マイディアグループは白物家電の専業メーカーですから、家電に投資することは当り前です。マイディアに移ったことで、東芝ブランドの家電の開発や、製品訴求に再び注力する体制が整ったと考えています。
実際、マイディアから私に対してはかなりの権限が委譲されており、来シーズンの製品開発のための資金投入や、毀損した東芝ブランドを回復するための広告など、積極的な投資を行っています。
ただ、お金を使う以上、それに見合う利益を上げる責任があります。もちろん東芝時代も責任はありましたが、現在の体制になって「権限を委譲し、成功したら報酬を与え、失敗したら責任を追及する」というマネジメント方針がより明確になりました。
道越 異なる企業文化に、社員の方々が戸惑う場面もあったのではないでしょうか。
石渡 良い意味で「世の中には自分たちと違う価値観がある」という意識が社内に浸透しつつあります。例えば、使用環境がこれだけ変化しているのに、過去から積み上げてきた品質基準を長年使い続けていることに気づきました。それは製品の価格に直接跳ね返っているんですね。もちろん、安全に関する基準はゆずれない一線があり、これは東芝として変えるつもりはありません。しかし、個々の製品仕様に関しては、オーバースペックな部分がないか、一から見直そうという動きが現場でも生まれています。
今後の製品開発を語る石渡社長
小型家電の種類を拡大 トレンドは省スペース大容量
道越 マイディアとの連携によって、新たに実現できる製品や、強化する戦略にはどのようなものがありますか。石渡 マイディアは年間3000万台以上のルームエアコンを生産しており、この規模を活用してエアコンの製品ラインアップ、価格競争力は大きく向上させられると考えています。また、製品の幅としては、現在東芝にはない300リットル以下の冷蔵庫、17リットル以下の単機能電子レンジといったカテゴリを充実させていきます。
道越 東芝ライフスタイル側としてはどのような方針で製品企画・開発に取り組まれていますか。
石渡 製品のサイズは変えずに、中身の容積を大きくするという戦略を複数の製品で共通してとっています。例えば、冷蔵庫では幅685mmで600リットルの大容量を実現しました。冷蔵庫の「壁」部分を薄くしながら、エネルギー効率は落としていません。
また、ドラム式洗濯乾燥機では、ドラムの振動を抑えるアクティブサスペンションの開発により、横幅600mmで洗濯・脱水容量11kgに対応した。 スペースがない、廊下を通せないといった理由で大型製品の購入をあきらめていたお客様に、大容量の価値をお届けします。また、東芝には数々の省エネ技術があります。マイディアグループとの協業を通じ、このような優れた技術を世界にお伝えしたいと考えています。
・後編<IoTビジネスは走りながら創る>に続く
6ドア冷凍冷蔵庫
ベジータ GR-K600FWX
エチレンガスの分解性能を高め野菜の保存環境を向上させた「新鮮 摘みたて野菜室」を搭載。「ツイン冷却システム」や真空断熱材の採用で、高い省エネ性能と幅685×奥行745mmの省スペースを両立した。
■プロフィール
石渡敏郎
1956年、東京都出身。78年、早稲田大学法学部を卒業し東京芝浦電気(現在の東芝) に入社。海外事業畑を歩み、ブラジル、米国、中国で通算16年間の海外駐在を経験。映像・PC・家電事業を担当する。2005年の東芝PC&ネットワーク上海社社長、10年の東芝ホームアプライアンス取締役社長を経て現職。
・<動画インタビュー>トップに聞く『会社の夢』
石渡敏郎
1956年、東京都出身。78年、早稲田大学法学部を卒業し東京芝浦電気(現在の東芝) に入社。海外事業畑を歩み、ブラジル、米国、中国で通算16年間の海外駐在を経験。映像・PC・家電事業を担当する。2005年の東芝PC&ネットワーク上海社社長、10年の東芝ホームアプライアンス取締役社長を経て現職。
・<動画インタビュー>トップに聞く『会社の夢』
◇取材を終えて
東芝はハイエンドの高機能白物家電やPCビジネスを通じて、IoTに強い次世代家電の技術を持っている。しかもなにより「東芝ブランド」がある。一方、マイディアグループは白物家電で世界第2位のスケールメリットを生かしたコスト競争力や商品展開力を備えており、両社の強みが互いの弱みを補完する形で見事にかみ合った。2社のシナジー効果によって、欧米市場への本格展開を皮切りに、グローバル企業への飛躍が大いに期待できそうだ。(柳)
東芝はハイエンドの高機能白物家電やPCビジネスを通じて、IoTに強い次世代家電の技術を持っている。しかもなにより「東芝ブランド」がある。一方、マイディアグループは白物家電で世界第2位のスケールメリットを生かしたコスト競争力や商品展開力を備えており、両社の強みが互いの弱みを補完する形で見事にかみ合った。2社のシナジー効果によって、欧米市場への本格展開を皮切りに、グローバル企業への飛躍が大いに期待できそうだ。(柳)
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年3月号から転載
・動画インタビュー・トップに聞く『会社の夢』