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<KeyPerson>コンビニを起点にICタグの実証実験をする理由は?

インタビュー

2017/02/24 12:30

 小売業の生産性を向上させる切り札として、経済産業省の住田孝之商務流通保安審議官は、ICタグ、いわゆるRFIDを挙げる。コンビニエンストアでの実証実験も開始した。「大量に破棄されている食品ロスの解消もつながる」と力説する。

取材/細田 立圭志、文/ 大蔵 大輔、写真/大星 直輝

・前半<「プレミアムフライデー」の狙い>から読む

――――ICタグの取り組みが、どのように小売業の生産性に貢献するのでしょう。

住田 2月初旬に、ある大手コンビニエンスストアの大阪の店舗で、RFIDの実証実験が行われました。コンビニのすべての商品にICタグをつけて、在庫管理や会計を自動化する取り組みです。

 私は長い目で見て、これは革命的な取り組みだと考えています。現状、ICタグは単価が1枚当たり10円~12円するので、単価が1000円以上のアパレルなどで使われています。平均単価が100円のコンビニでの導入は容易ではありません。
 

小売業の生産性を向上させる切り札として「RFID」を挙げる住田孝之商務流通保安審議官

 しかし、いまや10兆円産業といわれているコンビニ市場で、平均単価が100円ということは、年間で1000億個のモノが動いていることになります。廃棄などのロスを含めればもっとありますが、1000億個のRFIDが必要になるわけです。RFIDの単価が1円以下に下がれば、みんなが使うようになるでしょう。それが狙いです。

 実は2005年頃に「ミューチッププロジェクト」が行われていました。月間1億個の利用で単価5円を目指していたけど、1億個使うところがなかったので頓挫してしまいました。1000億個あれば、これが可能になります。

 コンビニの商品にRFIDがつくと、レジに商品を持っていけば会計は終わりです。バーコードを読む必要がなく、レジなしで、ゲートを通って自動決済ということも可能になりますし、万引き対策にもなります。

――食品ロスの解消とは、どのようにつながるのでしょうか。

住田 スーパーで賞味期限切れが近づくと、よく20%オフなどのシールを貼りますよね。この作業が現場では膨大な負担になっています。RFIDなら個々の賞味期限が分かるので、会計時に値引きすることも可能です。シールは不要です。さらに、値引きの可能性を考えて、パンや牛乳を前の棚から取るような人が増えると、食品ロスの削減にもつながります。
 

RFIDを活用すれば、物理的に「値引きシール」を貼らずとも、レジで会計時に値引きできる

 消費者の購入行動が変わり、前の方から取る習慣に変わり、小売業の生産性も上がり、食品ロスもなくなる。RFIDはリーダーをかざせば、冷蔵庫のなかの商品の賞味期限も分かるので、普及すれば店だけでなく、家でも多くの無駄がなくなります。

 まさにIoT(モノのインターネット)の取り組みですが、こうした取り組みが、流通業でも今後、どんどんと行われるようになると考えています。

・<動画インタビュー>トップに聞く『施策の抱負』