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大手家電流通協会 佐藤健嗣会長、2016年は「西高東低」、2017年は「低位安定」

インタビュー

2016/12/22 18:00

 2016年7月に、大手家電流通協会の会長に就任した佐藤健嗣氏は、「家電流通の地位向上に貢献していきたい」と意気込みを語る。自動車業界と比較すると、家電業界はメーカーも流通も弱体化した。16年の振り返りと17年の展望。そして、急速に広がるインターネット販売や家電流通各社が横断的に取り組むべき課題について聞いた。

取材・文/細田 立圭志
写真/川嶋 久人


大手家電流通協会 佐藤健嗣会長
 

エアコン商戦で差、白物家電は技術革新がカギ

―― 16年の家電流通市場はいかがでしたか。

佐藤 上期は微減収増益という企業が大半でした。マーケットは高位ではありませんが、そこそこ安定していました。日本全体でみると、エアコン商戦が「西高東低」だったので、西に店舗ウェイトの高い企業は業績がよかったのですが、逆に、来年度はリスク要因になるでしょう。来年は、西と東でリバランスされれば、横ばいはいける可能性が高いとみてます。

―― すると、17年は安定するのでしょうか。

佐藤 それが分かれば皆さん苦労しない難しい質問ですが、「低位安定」でしょうね。鍋底で安定する状態が続くとみています。正直なところ、ここが本当に鍋の底なのかどうかも分かりませんが、劇的に悪くなるという話でもないでしょう。

 20年の東京五輪もあるので来年、再来年まで安定した状況は続くのではないでしょうか。ただ、中期的には19年10月に再延期した消費税が上がり、そのときは五輪直前で浮かれて気がつかなくても、五輪が終わった瞬間の消費がどうなるかは注意しなければなりません。

 テレビも台数、単価の上下はあるでしょうが、4Kが普及期に入って本格的に売れ始めたら3年ぐらいは(好調が)続くでしょう。昔ほど多くはありませんが、有機ELなど家電業界には、なんだかんだとネタや芽はあります。主力商品のテレビの回復に注目し、白物家電は軸となる買替えサイクルがどうなっていくかです。技術革新で買替えの動機づけになる新しい付加価値が搭載された商品が登場すれば、サイクルも短くなります。

 小売業全般からみても、家電業界は決して悪い状況ではありません。今の状況が続けば、各社、安心感はあると思います。われわれは家電しか知らないから、これが普通だと考えるかもしれませんが、他の流通業では厳しいところはいっぱいありますから。
 

ネット販売が広がっても価格は家電量販店が優位

―― EC(電子商取引)が家電流通でも急速に広がっています。

佐藤 流れとしては世界規模で(EC化は)進んでいくと思います。ただ、ネット販売に向く商品と向かない商品があります。また、小売業や流通業の歴史的な発展の中で、方向性は合っていてもその進行度合いは地域や国、産業構造などで大きく異なります。ウェブがすべてを支配できるわけではありません。

 最近では、ウェブで商品を見てから店頭で購入するウェブルーミングの動きもあります。また、ネット企業のビジネスモデルの発祥である米国でも、ネット企業自らがリアルの店舗を構えはじめていますよね。結局、『お客様が求めるものは何か』に力点を置いて商売をしていくことが大切なのです。ウェブかリアルかの対立の構図で、片付けられる話ではありません。
 

ネット販売が広がっても価格は家電量販店が優位と語る佐藤会長

―― EC化が広がる一方、インターネット市場での商品流通量が減っているとの声も聞きます。

佐藤 最近では、価格は家電量販店のほうが重要な役割を担っています。品揃えや在庫の確保をネット企業単独で行うのは難しいのです。いまだに開店セールに買取屋さんが並んでいる光景を見かけます。関東や関西など各地から来ています。

 しかし、われわれは地域のお客様に購入していただくために開店セールを実施しているので、一般のお客様から見たら迷惑な話です。最近では、買い取れる量も減っていますし、売り方も工夫しています。正しいことを、きちんとしていくだけです。

―― 7月に大手家電流通協会の新会長に就任しましたが、あらためて意気込みをお聞かせください。

佐藤 長期的には販売員の人材確保や家電業界の地位向上など課題は山積みですが、加盟会社が主体的に意見交換できる場をつくりたいと思います。頻度を増やすのではなく、今ある時間の中で枠組みを少し変えながら。そして経済産業省や環境省、総務省、消費者庁など関係省庁の方々とかかわっていきたいですね。世の中が大きく変わるときは、業界の意見をもっと上げた方がいいという場面が出てきますから。

・<株価意識して家電量販店の地位向上>に続く
 
■プロフィール

佐藤健嗣(さとう・けんじ)
1953年生まれ。1977年カリフォルニア大学バークレー校経済学部卒業。78年上智大学外国語学部卒業、トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。81年ギガス取締役、88年常務、89年専務、93年社長就任(現任)。2004年にケーズホールディングス副社長、11年副会長就任(現任)。16年7月に大手家電流通協会会長に就任(現任)。

・【動画】トップに聞く『協会の夢』― 佐藤健嗣 大手家電流通協会会長
 
◇取材を終えて

ケーズホールディングスの副会長でもあり、ギガスの社長、家電公取協の副会長も兼任する佐藤会長は、毎年、社員を連れた米国視察研修を続けている。ウォルマートという言葉をニュースで聞いても、知らない販売員と、「あのときに見た店か」と思う販売員ではモチベーションや仕事の姿勢、吸収力がまるで違うという。一強のように描かれるウォルマートだが、中小規模の流通業が次のうねりを見せているとの最新事情を聞きながら、旧NEBA(日本電気大型店協会)でも手腕を発揮した米国視察を、現協会で復活するのも面白いと思った。(至)
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2017年1月号から転載