<KeyPerson>ジュピターショップチャンネル篠原社長、1日で28億円の売上を創出する秘訣は?
2016年11月1日、開局20周年を迎えたジュピターショップチャンネル。度重なる不況のなかでも、19期連続の増収を達成。今年度も順調に事業を成長させている。20周年を記念した大創業祭では、1日の売り上げが過去最高となる約28億円を記録。昨年の創業祭で打ち立てた14億円を大幅に更新した。国内の人口が減少に転じ、テレビ離れも進むなか、なぜ成長を継続できるのか。篠原淳史社長が秘訣で語ったのは、変幻自在のクロスメディア戦略と不変のセールスポリシーだ。
取材・文/大蔵 大輔
写真/大星 直輝
ジュピターショップチャンネルの篠原社長
篠原 おかげさまで目標を達成することができました。当日の売り上げは27億8000万円。昨年の創業祭が14億円と過去最高だったので、約2倍の記録更新になります。初めて10億円を超えたのが2007年、私が社長に就任した年です。9年かけて4億円を積み上げたのを、いきなり目標20億円ですから、ハードルは高かった。その認識は社員全員にありましたが、無理だとは誰も思っていなかったですね。
―― 倍増はすごいですね。達成の要因は何ですか。
篠原 プロジェクトは約1年前からスタートしました。大創業祭に向けた準備は入念にできていたと思います。20億円の目標は4月の時点で打ち出し、テレビで伸ばす分、新聞で伸ばす分、というようにそれぞれの媒体でどれだけ売り上げを積めるかを緻密に計算しました。今回の28億円という数字は、クロスメディアで展開した施策の相乗効果だと考えています。
大創業祭に向けて、約1年前から準備をスタートしたと語る篠原社長
―― ECサイトでの販売も2003年から取り組まれていますね。比率はどのくらいあるのでしょうか。
篠原 ECサイトの売上構成比は25%前後を占めています。これまでは、テレビ番組を見たお客様の注文手段としてネットは機能していましたが、現在はネット限定の商品を展開することで、売り上げを伸ばしています。また、われわれの強みは「生放送」ですから、毎日0時から配信している「ネットLIVE」にも力を入れています。テレビと明確にターゲットを区分しているのではなく、あくまでお客様の選択肢を増やす発想ですね。一番大事にしているのは、見たい時間・場所・デバイスに合わせたcomfortableなコンテンツをつくることです。
―― 創業以来、19期連続の増収を達成していますね。
篠原 最初の10年は、テレビの多チャンネル化と視聴可能世帯数の増加という背景がありました。ショッピング専門チャンネルが必要な販売チャンネルとして受け入れてもらえ、お客様との接点が増えた時代だった。もちろんそれに乗るだけではなく、商品力・番組力・オペレーション力を愚直にしっかりやってきました。
後半の10年でも姿勢は変わっていません。テレビショッピングはキャストの能力が売りを左右すると思われがちですが、一番大切なのは商品の思いをいかにお客様に伝えられるかです。スーパーセールスマンには頼りません。商品力と番組力はパッケージです。本当に価値がある商品、そして情報とエンタテインメントを兼ね備えた番組が揃ったとき、スタジオに、えもいわれぬ空気が醸成されます。この“空気感”がお客様の心を揺り動かすのです。
創業以来、19期連続の増収を達成している
篠原 ショップチャンネルは、百貨店を目指しています。すべてのカテゴリをラインアップするなかで、家電は欠かせないカテゴリです。美容家電を中心に販売していましたが、現在は白物家電にまで拡大する状況が整いつつあります。店頭に行けば必ずあるアイテムでも、季節やタイミングをはかって集中的に紹介できるのが強みです。私は究極の接客だと思っています。24時間家電を紹介する「家電祭」も年に2回開催しています。次回は12月9日です。また、12月4日には初の試みとしてダイソン商品オンリーの「24時間ダイソンデイ」を企画しています。
―― 消費者の動向に変化はありますか。
篠原 昨年売れた商品が今年も同じようには売れない、という傾向があります。商品のサイクルがどんどん短くなっている。これは全カテゴリに共通です。過去のデータにもとづいて販売計画を立てますが、「昨年売れたから5%増しで」、というようなやり方だと大火傷します。今を見る目が要求されます。
<ショップチャンネル篠原社長、課題は若い女性の誘導、Webの充実がカギへ>に続く
取材・文/大蔵 大輔
写真/大星 直輝
ジュピターショップチャンネルの篠原社長
生放送本番を焦点にクロスメディア戦略を展開
―― 11月1日の大創業祭では「1日で売り上げ20億円」の目標を立てていましたが、成果はいかがでしたか。篠原 おかげさまで目標を達成することができました。当日の売り上げは27億8000万円。昨年の創業祭が14億円と過去最高だったので、約2倍の記録更新になります。初めて10億円を超えたのが2007年、私が社長に就任した年です。9年かけて4億円を積み上げたのを、いきなり目標20億円ですから、ハードルは高かった。その認識は社員全員にありましたが、無理だとは誰も思っていなかったですね。
―― 倍増はすごいですね。達成の要因は何ですか。
篠原 プロジェクトは約1年前からスタートしました。大創業祭に向けた準備は入念にできていたと思います。20億円の目標は4月の時点で打ち出し、テレビで伸ばす分、新聞で伸ばす分、というようにそれぞれの媒体でどれだけ売り上げを積めるかを緻密に計算しました。今回の28億円という数字は、クロスメディアで展開した施策の相乗効果だと考えています。
大創業祭に向けて、約1年前から準備をスタートしたと語る篠原社長
―― ECサイトでの販売も2003年から取り組まれていますね。比率はどのくらいあるのでしょうか。
篠原 ECサイトの売上構成比は25%前後を占めています。これまでは、テレビ番組を見たお客様の注文手段としてネットは機能していましたが、現在はネット限定の商品を展開することで、売り上げを伸ばしています。また、われわれの強みは「生放送」ですから、毎日0時から配信している「ネットLIVE」にも力を入れています。テレビと明確にターゲットを区分しているのではなく、あくまでお客様の選択肢を増やす発想ですね。一番大事にしているのは、見たい時間・場所・デバイスに合わせたcomfortableなコンテンツをつくることです。
―― 創業以来、19期連続の増収を達成していますね。
篠原 最初の10年は、テレビの多チャンネル化と視聴可能世帯数の増加という背景がありました。ショッピング専門チャンネルが必要な販売チャンネルとして受け入れてもらえ、お客様との接点が増えた時代だった。もちろんそれに乗るだけではなく、商品力・番組力・オペレーション力を愚直にしっかりやってきました。
後半の10年でも姿勢は変わっていません。テレビショッピングはキャストの能力が売りを左右すると思われがちですが、一番大切なのは商品の思いをいかにお客様に伝えられるかです。スーパーセールスマンには頼りません。商品力と番組力はパッケージです。本当に価値がある商品、そして情報とエンタテインメントを兼ね備えた番組が揃ったとき、スタジオに、えもいわれぬ空気が醸成されます。この“空気感”がお客様の心を揺り動かすのです。
創業以来、19期連続の増収を達成している
24時間ダイソンデイも開催、家電カテゴリへの思いは?
―― 今年の4月21日にはダイソンの掃除機で、1日あたり1商品での販売金額が過去最高を記録しました。家電に対して特別な思いはありますか。篠原 ショップチャンネルは、百貨店を目指しています。すべてのカテゴリをラインアップするなかで、家電は欠かせないカテゴリです。美容家電を中心に販売していましたが、現在は白物家電にまで拡大する状況が整いつつあります。店頭に行けば必ずあるアイテムでも、季節やタイミングをはかって集中的に紹介できるのが強みです。私は究極の接客だと思っています。24時間家電を紹介する「家電祭」も年に2回開催しています。次回は12月9日です。また、12月4日には初の試みとしてダイソン商品オンリーの「24時間ダイソンデイ」を企画しています。
―― 消費者の動向に変化はありますか。
篠原 昨年売れた商品が今年も同じようには売れない、という傾向があります。商品のサイクルがどんどん短くなっている。これは全カテゴリに共通です。過去のデータにもとづいて販売計画を立てますが、「昨年売れたから5%増しで」、というようなやり方だと大火傷します。今を見る目が要求されます。
<ショップチャンネル篠原社長、課題は若い女性の誘導、Webの充実がカギへ>に続く
■プロフィール
篠原淳史(しのはら・あつし)
1959年生まれ。81年に一橋大学法学部を卒業し、住友商事に入社。ダイレクトマーケティング部長、ファッションアパレル事業部長、ファッション・ブランド事業部長を歴任した後、07年8月にジュピターショップチャンネルの代表取締役社長に就任(現任)
・【動画】トップに聞く『会社の夢』
篠原淳史(しのはら・あつし)
1959年生まれ。81年に一橋大学法学部を卒業し、住友商事に入社。ダイレクトマーケティング部長、ファッションアパレル事業部長、ファッション・ブランド事業部長を歴任した後、07年8月にジュピターショップチャンネルの代表取締役社長に就任(現任)
・【動画】トップに聞く『会社の夢』
◇取材を終えて
「1時間かけて説明できる商品じゃないと売れない」。買い付ける商品を選別する基準を篠原社長が教えてくれた。テレビショッピングという業態は、店頭と比較するとアイテム数は圧倒的に少ない。同じカテゴリでもなぜこの商品なのか、その思いを伝えられなければ、わざわざショップチャンネルで買い物をするモチベーションは生み出せないという。オンラインの急成長で、売りの現場では「品揃えの追求こそ是」という風潮がある。そんな時代にあって、1アイテムを1時間の尺でいかに説明して売るかという手法で成功を収めている事実は、顧客は買うモノだけでなく売るヒトも見ていることを思い出させてくれる。(雀)
「1時間かけて説明できる商品じゃないと売れない」。買い付ける商品を選別する基準を篠原社長が教えてくれた。テレビショッピングという業態は、店頭と比較するとアイテム数は圧倒的に少ない。同じカテゴリでもなぜこの商品なのか、その思いを伝えられなければ、わざわざショップチャンネルで買い物をするモチベーションは生み出せないという。オンラインの急成長で、売りの現場では「品揃えの追求こそ是」という風潮がある。そんな時代にあって、1アイテムを1時間の尺でいかに説明して売るかという手法で成功を収めている事実は、顧客は買うモノだけでなく売るヒトも見ていることを思い出させてくれる。(雀)
※『BCN RETAIL REVIEW』2016年12月号から転載