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ニコン、グループ全体の構造改革を発表、デジカメは高付加価値製品に注力

経営戦略

2016/11/10 17:08

 ニコンは11月8日、グループ全体で企業価値向上に向けた収益力強化と体質改善を目的に、構造改革を実施すると発表した。これまでの売上高の拡大ではなく、収益力強化を指向する戦略へと方針転換し、「選択と集中」を進める。

 具体的には、売上高の約5割を占めるカメラなどの映像と半導体装置の事業戦略を見直し、グローバル規模での生産・販売・R&D体制の最適化、本社機構を含めた組織・人員の適正化を実施する。
 

抜本的な構造改革でグループ全体の収益力強化を図る

不振の半導体装置事業を縮小、1000名規模で人員適正化

 カメラは、レンズやセンサなど光学技術を結集した精密機器だ。その技術を応用し、ニコンは1980年に、日本で初めてLSI製造用ステッパー(縮小投影型半導体露光装置)を製品化。その後、同じくカメラメーカーのキヤノンも参入した。
 

「ニコンミュージアム」に展示している国産初のステッパー

 半導体は、PCをはじめ、デジタル機器・電化製品に欠かせない。ステッパーは「史上最も精密な機械」と呼ばれ、レンズの性能が優劣を左右するといわれている。一時は圧倒的なシェアを占めたが、近年は、競合するオランダのASMLに水をあけられ、シェアが低下。今回の構造改革では、競争力の弱いArF液浸露光装置の開発の縮小、生産体制の見直し・規模の適正化を図るとともに、配置転換や希望退職の募集を含めて1000名規模の人員適正化を行い、採算性の改善を図る。いわゆる「リストラ」の断行だ。

 半導体露光装置は不振だが、液晶ディスプレイなどの露光を行うFPD露光装置はトップシェアを誇る。FPD露光装置は、ディスプレイの大型化、高精細化の鍵を握る。ニコンの技術は、2000年代後半から世界規模で巻き起こった、液晶テレビ、スマートフォン・タブレット端末の普及を下支えしてきたのだ。こちらは好調で、今年上半期は、中小型精細パネル用FPD露光装置の販売台数が大幅に増加したという。

国内シェア2位のカメラは高付加価値製品に注力

 カメラなどの映像事業も、配置転換などを含む国内350名規模の人員適正化を行い、固定費を削減するとともに製品戦略を見直し、従来以上に高付加価値製品に注力する。カメラに使う光学部品の生産拠点を集約するなど、生産、販売体制の最適化も図る。
 

映像事業の見直しのポイント

 ニコンは、デジタル一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、コンパクトデジタルカメラを手がけており、家電量販店・ネットショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、2015年は、デジタルカメラ全体ではシェア22.2%で、2位だった。

 デジタル一眼レフカメラは、以前からキヤノンと並んで「2強」といわれ、プロの愛好家も多い。しかし、過去10年間、4割超シェアを占め、1位を獲得した2007年を除き、ずっと2位に甘んじており、シェアはここ数年、20%台にとどまっている。デジタル一眼レフの年間販売台数も2014年をピークに減少に転じている。

【関連記事】デジカメは「一人1台」から「一家に1台」に逆戻り? ニーズに応えるカタチは一眼か

 来年、創業100周年を迎えるニコン。今回の構造改革は、カメラ事業ではなく、半導体装置事業が中心だ。財務基盤の健全性が確保できているうちに改革をと強調し、さらなる発展に向けた「攻めの構造改革」と位置づける。ただ、カメラメーカーの印象が強いだけに、一般消費者へのイメージダウンが懸念される。

 スマートフォンの普及や買い替えサイクルの長期化などの影響を受け、国内では、2010年をピークにデジカメ、なかでもコンパクトデジカメの販売台数が大幅に落ち込むなか、カメラ事業の高収益化に成功し、より魅力的な製品開発につなげることができるのか、今後の動きに注目したい。(BCN・嵯峨野 芙美)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。