<特集>エディオン、PCバイヤーが考えるPCビジネスの将来

インタビュー

2016/09/23 10:00

 第6世代のインテルプロセッサ「Core i7」を搭載した高付加価値PCの販売に強いエディオンでは、メーカー別の商品展示ではなく、顧客が「PCで何をしたいか」という「コト」軸での展示手法を取り入れている。


エディオンの原田壮二商品統括部情報通信部マネージャー

 PCは何でもできてしまう多機能性が特徴であるがゆえに、ターゲットが不明確になりやすいというジレンマに陥る。販売時に顧客のニーズを引き出すことが、購入の決め手や購入後の満足度につながる。

 「ネットショッピングがしたいのか、SNSがしたいのか、音楽が聴きたいのか、動画を見たいのか。できることを絞ったPC売り場づくりを心がけている」と、エディオンの原田壮二商品統括部情報通信部マネージャーは売り場づくりのポイントを語る。

 売り場のPOPやカタログにも工夫を施している。シンプルなキャッチコピーや大きな文字で読みやすいオリジナルPOPを使っている。

 カタログも分厚いメーカーカタログではなく、何ができるのかのポイントを絞ったオリジナルのカタログを用意している。

 例えば「Core i7」を説明するにしても「1人で作業するのではなく、4人で同時に作業するから処理するスピードが早いのです」などと、だれでもわかるような簡単な説明に置き換えながら接客しているという。
 

PCの平均使用年数は6年に

 高付加価値モデルをしっかり販売するだけあって、PCメーカーからの年3回の新製品の投入サイクルに疑問を呈す。

 「購入して3か月後に来店したお客様が、店頭で下がっている価格を見てどのように感じるか。われわれ販売店やメーカーにとっても決して喜ばしいことではない」と原田マネージャーは語る。

 この点については、あるPCメーカー幹部も「年3回の投入が必ずしも正しいとは思っていない。年1回か2回に見直してもいいのではないか」と同意する。

 ただし、競合メーカーとのビジネスの兼ね合いから、1社だけ年1回や2回に踏み切るのは難しいという課題もある。

 以前のような「PCは生鮮品」としての考えは、消費者の間で薄れつつあるようだ。内閣府の「主要耐久消費財等の買替え状況」によると、PCの平均使用年数は2002年3月の4.1年から、16年3月は6年まで伸びている。買い替え理由も「故障」が56.7%と半数を超える。

 年間の製品投入サイクルも、見直しをかけるタイミングに差し掛かっているのかもしれない。高性能で高品質のPCを、提案の切り口を変えながらじっくりと時間をかけて販売していく考えも必要だろう。

 もっとも、Windowsならではの貴重な資産があることを忘れてはいけない。スマートフォンのiPhone人気とは違って、家庭内では多くのユーザーがWindows PCを使っているという巨大なインフラだ。

 少なくともWindows 10の登場により、これまでのようなOSのバージョンの切り替わりをきっかけにした買い替え促進はできなくなった。

 これまでに築き上げたWindowsの貴重なインフラ資産を、再び買い替えに突き動かすような新しいアイデアやサービスの創出が、PCメーカーに試されている。(BCN・細田 立圭志)