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アクションカメラが拡大 変わるビデオカメラのニーズと用途

時事ネタ

2016/09/26 12:54

 妊婦さん向けの情報誌やウェブサイトでは、デジタルビデオカメラやデジタル一眼カメラの広告が目につく。子どもの成長を記録したいというニーズは、今も昔も変わらず、少子化やSNSの普及の影響で、むしろ高まっている印象だ。しかし、家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、デジタルビデオカメラの年間販売台数は2012年をピークに減り続け、2015年は4割減、2007年以下の水準まで落ち込んだ。


 

規格争いの結果、従来型は上位3社の寡占に 未婚化・少子化も響

 「カムコーダ」とも呼ばれるデジタルビデオカメラは、この10年、大きく進化した。その過程で、DVテープ、HDD、DVDやBDなど、さまざまな記録媒体・規格が登場。最終的に、メモリカードや内蔵メモリに記録するタイプが主流になり、小型・軽量化が進んだ。画質は、通常画質(SD)からHD・フルHD、さらに4Kへと向上してきた。とはいえ、4K映像は容量が大きく、編集する際、ハードに高い処理性能が要求されるため、フルHD対応モデルも残るだろう。

 規格争いに敗れたメーカーは撤退した。同時に、運動会やマタニティフォト、寝相アートといったキーワードとともに、”ファミリー向け”の側面が強調されていく。
 

製品ページには、子どもや親子の写真が並び、完全にターゲットはファミリー向けの印象だ
(左から、ソニー、パナソニックのWebサイト)

 キヤノンは、今年1月から、個人向けモデル「iVIS」の店頭販売を取りやめ、自社オンラインショップだけの販売に切り替えた。価格競争の激しい家電量販店では、アクションカメラを除く従来型のデジタルビデオカメラの約8割を占める、ソニー、パナソニックの2社の寡占に対抗できないと判断したようだ。

 その結果、従来型デジタルビデオカメラのメーカーは、事実上、国内3社だけとなり、上位メーカーの寡占による下位メーカーの撤退、市場規模縮小と、典型的な負のスパイラルから抜け出せない状態にある。スマートフォン、デジタルカメラの動画撮影性能が向上し、専用機をわざわざ買うメリットが薄れたことも響いた。
 

 平成27年(2015年)国勢調査(速報)によると、18歳未満の子どものいる世帯の割合は、学生・社会人や高齢者などのひとり暮らしの世帯(32.5%)より少ない22.1%。また、平均初婚年齢を超えた35~39歳の未婚率は、男性34.5%、女性23.3%に達し、「生涯未婚率」と呼ばれる50歳の未婚割合も過去最高を更新した。若年層の一部には「結婚や子どもは贅沢品」という考えが広まり、少子化・未婚化の流れは止まる気配はない。今後、ますます子どもの数、子どものいる世帯の数は減少する。ターゲットを見直さない限り、小さな市場を3社で競い合うことになりそうだ。
 

ビデオカメラはウェアラブルへ スマホでは得られない”体験”を提案

 一方、「Go Pro」に代表されるアクションカメラは伸びている。デジタルビデオカメラ全体に占める販売台数構成比は、2013年以降、急拡大し、2015年には15.0%を占めた。月単位で見ると、昨年12月からさらに上昇し、直近の7月は32.2%、8月は33.7%に達した。現時点の参入メーカーは20社以上。10月には、「KeyMissionシリーズ」を引っさげ、カメラメーカーのニコンも参入する。アウトドア向けデジカメもまとめて陳列され、売り場は賑やかだ。
 

 手に持って被写体を追う従来のビデオカメラと、自分自身や移動する物体に装着して撮影するウェアラブルなアクションカメラでは、撮り方がまったく違う。アクションカメラの強みは、スマートフォンでは得られない防水・防じん、耐衝撃といった堅牢性や、動きのフレキシブルさだ。さらに、Go Proは、モノそのものではなく、「使うことで得られる体験」を売るというスタンスを取る。アクションカメラの拡大は、動画撮影に対するニーズと用途の変化とも受け取れるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベース(パソコンの場合)で、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。