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<Key Person>ケーズHD遠藤社長 コスト高騰で抑制も、市場に応じた店舗を出店

インタビュー

2016/07/22 18:00

 2016年3月期の家電量販店各社の決算では、売上高総利益率(粗利益率)が大幅に改善した。ケーズホールディングス(ケーズHD)も26.3%と前年度より1ポイントアップ。遠藤裕之社長兼CEO兼COOは「競争環境が変わった」と指摘する。粗利益率を追求する家電量販店は安売りをしなくなったのか。経営戦略や出店計画、今年3月19日に逝去した創業者・加藤馨名誉会長の教えなどを聞いた。

取材・文/細田 立圭志
写真/大星 直樹

・前半<独自の経営戦略>はこちら

――17年3月期の出店計画は34店(前期は31店)で、1店舗当たりの売り場面積も3714平方メートル(同3702平方メートル)といずれも増えています。
 

「出店コストが高騰しているが年間30数店を出店する」と語るケーズホールディングスの遠藤裕之社長兼CEO兼COO

遠藤 計画ではもう少し多く出店する予定でしたが、建築費の高騰などで難しくなってきました。1店舗当たりの収益の回収期間が長くなる傾向にあるためです。出店時の(コストなどの)精査を高めて、出店ありきにはせず、年間30数店舗の出店にとどめる計画です。

 1店舗当たりの面積が増加している点については、みなさん誤解しています。昨年の新店を見ていただければ、1600平方メートルの小規模の店を出店していることがわかりますよ。大型化、大型化というけど、売り場面積は市場規模と競合環境で決めるものです。

 もちろん3300平方メートルの競合店がある市場に、1600平方メートルの店を出店して勝てるとは思えません。3600~4300平方メートルの店を出店します。しかし、競合店が1600平方メートルの市場なら、2000平方メートルの店でもいいのです。競合よりも大きな売り場と豊富な品揃えを確保できているかが重要ですから。

 また、本当の意味での閉店は何年かに1店というほど少ない状況にあります。撤退する店舗はありません。閉店した店と同じ場所に大きな店をつくっているからです。
 

「店舗の大型化は誤解で、商圏に応じて小さな店舗も出店しています」

――1600平方メートルの店を今から出店するということは、それだけ小さなマーケットも狙うということでしょうか。

遠藤 そうです。郊外型店舗にもいろいろなフォーマットがあります。出店する店舗はパターン化しているから、市場規模と競合の環境から、どれくらいの売上高になりそうだという計画が決まれば、その後、私はオープンまでタッチしません。

 営業の人たちなどが売り場のレイアウトをパターン通りにつくっていくからです。パターンのバリエーション、そして品揃えやレイアウトも常に更新しています。出店時は、最新バージョンのパターンを適用するので、古い店もそれにならって改装していきます。

――売り場は常に更新しているのですね。

遠藤 毎週、「ビジュアルマーチャンダイジング」という手法を取り入れて更新をかけています。どの商品を通路側に展示するか、コーナーエンドに何を置いて、通路に何を展示するのかを、店舗でパッと変えられる仕組みです。

 お客様に気づかれないと、買っていただけないですからね。家電量販店に買い物に来るお客様は、テレビを売っていることはわかっていても、フライパンを売っているとは思わないですから。テレビは前面に出さなくてもいいけど、無水鍋やノンフライヤーは目立つ場所に展示しないと気づいてもらえないのです。

・後半<加藤馨名誉会長の教え>に続く